4.
「私は、無力でした……」
「だから、私にか。君は有能な女性だと知る者は少なくはないのだが……」
結果として、王弟ドルドをはじめとする疑いのある貴族に首謀者はいないと確定しただけ。それなら、重要な仕事であるメバチス領の事業を委ねるのは王弟ドルドしかいない。メバチス領で無償の治療院の設立には金がかかるため下手な貴族には委ねられない。その適任となるのは王族か公爵位の者だけ。現時点では王弟ドルドということになるのだ。
「他に、適任になれる方は……いませんから」
「それもそうか。ダグバがあれではな……」
ベミウがダグバに近づいたのは良からぬ目的があってのことだと思わずにはいられなかった。だからこそ、ダグバに次ぐ王位継承権を持つドルドや上級貴族を疑うことは自然なことだったが、どれほど調べても黒幕はいなかった。他の貴族も考えられたが結果は同じだった。
バツーバ伯爵家の密偵は非常に優秀だが、彼らを差し向けても首謀者らしい者は見つけられない。バラバのあずかり知らぬところで何が起きている? いったい誰が?
結局、バラバが密偵を使っても首謀者は見つけられなかった。いや、いなかったのかもしれない。その答えを見つけられなかったバラバは、茶番の後のことを考えるしかなかった。
自分の結末のことだけを。
「バラバ様……!」
バラバの考えを察したザザルは悲しそうな顔でスカートを握りしめている。その姿にバラバは申し訳なさそうに感じた。
「ザザル、ごめんなさいね。ダグバ殿下の心を変えてしまった首謀者が分からないし、その目的も分からない。ダグバ殿下の心がベミウ・ジャーザ男爵令嬢に純粋に惹かれただけなのかもしれないけど……」
首謀者がいない。それはバラバにとって一番受け入れられない可能性だったが、ありえなくもない。首謀者がいたとすればバラバの敗北は確定しただけだ。ただ、負けただけでは終われない。
「でも、メバチス領の治療院設立はたくさんの民が待ち望んでいることなの。土地の開発と資源の獲得のためにも必須なんですもの。それが私の失墜で白紙にしてしまうことだけはあってはならないわ……。私はザザルを信頼しているわ。それだけは分かって」
「バラバ様が……失墜だなんて悲しいを仰らないでください!」
ザザルは泣いて叫ぶが、失墜という表現の仕方は大げさではない。たとえ茶番だとしても王族が断罪するならば、貴族としてのバラバの立場は非常に危うくなるのだ。いや、終わるだろう。




