第三巻 第四章 (優れた善い商人は名将に成れる)(人を扱える知恵が重要)
第三巻 第四章 (優れた善い商人は名将に成れる)(人を扱える知恵が重要)
別の、ある時、ソクラテスは、(公職の)選挙から戻る途中のニコマキデスを見て、次のように、ニコマキデスに尋ねた。
「誰が将軍に選ばれたのですか? ニコマキデスよ」
すると、次のようにニコマキデスは話した。
「いかにも彼ららしい! いかにも都市国家アテナイ市民らしいではないか!」
「私ニコマキデスが『いかにも彼ららしい!』と言っているのは、選挙に行っても、この私ニコマキデスを選ばない事なのです!」
「(私ニコマキデスの)名前が兵員名簿に最初に載ってからずっと、今でも一指揮官として、私ニコマキデスは、文字通り、兵役で疲れ果てて(しまうほどアテナイ人のために尽くして)きました」
「私ニコマキデスが受けてきた、これらの傷は全て、敵からの物なのです! 見てください!」
(言葉と同時に、言葉に合った行動をして、ニコマキデスは腕をむき出して、古傷の傷跡を見せた。)
(次のようにニコマキデスは話を続けた。)
「彼ら、アテナイ人は、この私ニコマキデスを選ばず、驚いた事に、アンティステネスを選んだのです!」
「アンティステネスは、生涯で重装歩兵として貢献した事が一度も無いし、騎兵として異彩を放つ手腕を発揮した事が一度も無いし、私ニコマキデスは、『アンティステネスは騎兵として異彩を放つ手腕を発揮した事が有る』とアンティステネスについて話されているのを聞いた事が一度も無い」
「無いのです!」
「『実際、アンティステネスは、富を蓄える以外は、全く知識が無い』と私ニコマキデスは思っています」
(次のようにソクラテスは言い返した。)
「しかし、やはり、確かに、それ(、富を蓄える知恵が有るの)は、アンティステネスに有利な点の一つです」
「アンティステネスは、軍隊に補給物資を供給する事ができるはずである」
次のようにニコマキデスは話した。
「ええ、そういう事に関しては、商人は富を蓄えるのが上手いです」
「しかし、その結果、『商人は軍隊を指揮できる』という事には成らないのです」
(次のようにソクラテスは言い返した。)
「アンティステネスは、勝利を求める、大いなる不屈の忍耐力が有る人で、これ(、勝利を求める忍耐力)は、将軍に、とても必要な資質である」
「『アンティステネスは、合唱隊の指導者に成ると毎回、次々と合唱隊を成功させてきた』のをあなたニコマキデスは、どう思いますか?」
次のようにニコマキデスは話した。
「神よ!」
「ええ」
「しかし、歌手達や踊り子達の集団の指導者として立つ事と、兵士達の軍隊の指導者として立つ事には、大きな違いが有るのです」
次のようにソクラテスは話した。
「それでも、歌や合唱の教育の実務経験による全ての技術無しに、どういうわけか、アンティステネスには、最高の熟練者を選び出す事ができる技術が有りました」
次のようにニコマキデスは話した。
「ええ、では、『同様の理由によって、軍事行動中に、アンティステネスは、熟練者を見出す事ができて、ある熟練者達はアンティステネスのために軍隊を配置でき、他の、ある熟練者達はアンティステネスの戦争を戦う事ができる』と推測できるでしょうか?」
次のようにソクラテスは話した。
「まさに、そう推測できます」
「合唱隊の事において示したように、軍事的な事においてアンティステネスが同様に最高の手腕を持つ人達を選び出す事ができる技術を示すだけで、アンティステネスが、ここ(、軍事)でも勝利を勝ち取るのは、大いに有り得るでしょう」
「また、『アンティステネスは、唯一の一族と共に、合唱の勝利を勝ち取るために、とても多額の金銭を使ったので、アンティステネスを(将軍として)支持してくれた国家全体と共に、戦争での勝利を確実にするために、より多額の金銭を使う用意が有るだろう』と推測できます」
次のようにニコマキデスは話した。
「『同一の人の唯一の機能が、有能な合唱隊と、指揮官、将軍としての働きをもたらす』と本当に言うつもりですか? ソクラテスよ」
次のようにソクラテスは話した。
「『供給する必要が有るものを知っている人に、そうするための技術が有れば、家、都市国家、軍隊といった、どんな分野でも、同様に、その人は優れた指導者である、と分かる』と私ソクラテスは言いたいのです」
すると、次のようにニコマキデスは話した。
「(神に)誓って、ソクラテスよ、あなたソクラテスが『家政に優れた者や、優れた財産管理人は、優れた名将に成れる』と言うのを、私ニコマキデスが聞く事に成るとは決して予想できませんでした」
(「神に誓って、ソクラテスよ、あなたソクラテスが『優れた経済学者や、優れた財産管理人は、優れた名将に成れる』と言うのを、私ニコマキデスが聞く事に成るとは決して予想できませんでした」※別の版)
次のようにソクラテスは話した。
「では、私ソクラテスと、あなたニコマキデスで、(商人と、将軍の、)それぞれの務めを調べて、それらが同様であるか違うかを明らかにしてもよいですが」
次のようにニコマキデスは話した。
「そうしましょう」
次のようにソクラテスは話した。
「ええ、では、命令に対する部下からの忠誠をすぐに手に入れる事は、(商人と、将軍の、)両方に共通する務めではありませんか?」
次のようにニコマキデスは話した。
「確かに」
次のようにソクラテスは話した。
「では、特有の務めを成し遂げるための能力が有る最高の人達に担当させる事も、(商人と、将軍の、)両方に共通する務めではありませんか?」
(次のようにニコマキデスは答えた。)
「それも、同様に、両方に共通する物ですね」
次のようにソクラテスは話した。
「さらに、『悪い人を罰して懲らしめ、優れている善い人に報いる事は、同様に、(商人と、将軍の、)両方に共通する物である』と私ソクラテスには思われますが?」
次のようにニコマキデスは話した。
「確かに」
次のようにソクラテスは話した。
「では、部下からの思いやりの気持ちを勝ち取る事は、確実に、(商人と、将軍の、)両方に共通する気高い野心であるはずですね?」
(次のようにニコマキデスは答えた。)
「それも、そうですね」
次のようにソクラテスは話した。
「では、『味方からの支持を勝ち取るのは、同様に、(商人と、将軍の、)両方の利益と成る』と考えますか?」
次のようにニコマキデスは話した。
「疑い無く」
次のようにソクラテスは話した。
「では、(富や部下や農場などと、兵士、部下という、)それぞれの世話をする対象にとっての善良な守護者であるべき事は、(商人と、将軍の、)両方に密接に関係していますか?」
次のようにニコマキデスは話した。
「とても大いに、そうです」
次のようにソクラテスは話した。
「では、行うべきである全ての事で労を惜しまず労苦するべきである事は、(商人と、将軍の、)両方に等しく関係しますね?」
次のようにニコマキデスは話した。
「ええ、これらの全ての務めは、同様に、(商人と、将軍の、)両方に共通する物です」
「しかし、実際の現実の戦いに至ると、(商人と、将軍の、)類似は終わりを迎えます」
次のようにソクラテスは話した。
「しかし、(商人と、将軍の、)両方共、敵対者達と戦う事は確実ですよね?」
次のようにニコマキデスは話した。
「敵対者達と戦う事は、疑い無く、(商人と、将軍に、)存在しますね」
次のようにソクラテスは話した。
「では、敵対者達を圧倒する事は、(商人と、将軍の、)両方に共通する利益ではありませんか?」
次のようにニコマキデスは話した。
「確かに」
「しかし、実際の現実の戦いに至った時に、軍隊の組織と、経営の技術が何をもたらすかを、あなたソクラテスは故意に教えていませんよね」
次のようにソクラテスは話した。
「何だって」
「まさに、その(戦いの)時に、多分、最も役に立ちます」
「なぜなら、優れた経済学者は、『戦いでの勝利と同じくらい有益な物は無いし、逆に、敗戦と同じくらい悲惨で大損な物は無い』と知っているからである」
「優れた経済学者は、勝利の助けと成る全てのものを熱心に探求して供給してくれるだろう」
「優れた経済学者は、敗戦に役立ってしまう全てのものを、労を惜しまず発見して予防してくれるだろう」
「そして、満足に全てのものを用意して勝利への用意を整えた時に、優れた経済学者は、精力的に戦うだろう」
「そして、それと等しく重要なのは、(戦いに勝利するための)用意が終わりに達する時まで、優れた経済学者は、戦わないように用心する事である」
「経済の天才である人を見下すなかれ、ニコマキデスよ」
「私事に必要な献身と、国事に必要な献身には、規模という唯一の違いしか無いのです」
「私事に必要な献身と、国事に必要な献身は、規模以外は、類似は密接であるし、『両方共、人の手段に関係している』という、この点において類似は顕著である」
「さらに、公事、国事への献身について言ってみても、私有財産の管理について言ってみても、人々の型や性質は唯一なのである(、と言える)」
「(私事と、国事の、)どちらの場合でも、人を扱うための秘訣を知っている人達は、上手くやっていく事ができる」
「逆に、(私事と、国事の、)どちらの場合でも、同様に確実に、人を扱うための知識の不足は、不和の致命的な要素を必ず伴ってしまう」




