↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/39

39


 それはそれとして。ルナのアトリエで薬品の霧をたっぷり吸い込んでいるリアは身体が昂って仕方がなかった。エルフは基本的に性欲は薄い種族である。偏に寿命が長い為、繁殖行動を頻繁に行う必要が無いからだ。


 そのリアが発情する。まともに吸ったルナの記憶が一部飛ぶのは仕方がない事だ。つまりエルフにとって激毒であった。


(非常にまずい、めっちゃムラムラする)


 珈琲を飲み、気持ちを落ち着かせるものの。子宮の辺りがキュンキュンと甘美に疼く。男の時ならば性欲の解消など、やろうと思えば1〜5分で処理できるが。女はそうはいかない。


 目は濡れ、息が荒くなる。頬は朱に染まり酩酊感に似た波が打っては引いていく。今のリアの表情を見れば、恐らく殆どの男が『発情』していると感じ取れるであろうほどに官能的で妖艶だ。


 風呂場に子供達が向かってよかった。今のうちに何とかしなければならない。


 いつもの冷静で落ち着いた雰囲気に戻るにはどうすれば。


 ここは頼るしかない。リアはスマホを取り出すと、アデルに電話をかけた。アデルは今日は暇な日だったのか直ぐに出てくれた。


『はいっすー!! どうしました?』


「ちょっと聞きたいんだけど、簡単な睡眠の魔法とか知らない?」


『知ってるっすけど、何に使うんすか?』


「あー、ちょっと風邪気味でな。眠れないんだ」


『……風邪っすか。魔法に精通している先輩なら簡単なのがありますよ。闇属性の魔法で詠唱は《ニクス・ヒプノス》」


「ありがとうアデル、助かった」


『それはいいんすけど……あの、先輩。呼吸の荒さがエロいんですけど、もしかして発情してます?』


「ししししてないぞ!! じゃあな、また今度お礼するよ!!」


『ちょ、まって下さい録音させr』


 通話オフ。


 一方的に切った。そんなに声色に出ていたのか。もうクロエやアルエにも隠し通せる気がしない。ふらつく身体を起こし、姦しい風呂場の扉前をゆっくり通り過ぎて階段を登る。寝室のベッドにダイブすると天井を見つめながら唱えた。


「《ニクス・ヒプノス》……うっ」


 性欲を強烈な眠気が上書きしていく。通常なら簡単にレジストしてしまうだろうが、余程弱っているようだ。そのままリアの意識は眠りに落ちていった。


……………………


 ルナ、クロエ、アルエはベッドの上でスヤスヤと寝息を立てるリアの顔を覗き込む。頬がほんのり紅く、吐息が色っぽい。そうなるとやることなどひとつ。


 添い寝である。


 真っ先に動いたのはルナであった。彼女は起こさないように、しかし最大限素早くリアの横に転がると抱きしめた。太ももでがっちりと片足をホールドし、豊満な胸に顔を埋めて匂いを嗅いでは恍惚の表情を浮かべる。


 クロエとアルエは激怒にかられて文句を言いそうになるが、寸前で寝ているリアを起こす可能性を考えて口を閉ざす。


 そして静かに拳を構えると、2人同時に突き出した。クロエがパーでアルエがグーだ。グッとアルエが悔しげに喉を鳴らす。


 クロエは勝者の特権とばかりにルナとは反対の隣に寝転がると、抱きしめる。


 アルエはこの女さえ居なければとルナを睨むも、ルナは子供の放つ圧程度では何も思わない。


 というより、ルナからすればいつも一緒に寝てるのだから、少しくらい良いではないかと言いたいくらいだ。


 しかし子供達的には、リアが昼寝をするのはとても珍しい。だから、少しでもチャンスを、自分の匂いを擦り付けたかった。どいつもこいつもマーキングしたいのである。


 アルエは必死になって考える。ベッドに自分の居場所がない。だが、敗北者になるつもりはない。


 そもそも、昼寝なのだから起こしてしまっても問題ないのでは?


 閃いたアルエはゆっくりベッドに上がり、リアの身体の上で寝転ぶと抱きつき胸に顔を埋めた。まさかの大胆な行動にルナとクロエは悔しく思うも、クロエならまだしもルナが上に乗ると流石に重い。


 というより、既にリアは少し苦しげに「うんっ……」と唸っている。


 3人がビクッとして顔を覗き込む。起きていないようで安心すると同時に、3人は目線で『妥協』を伝え合うと、争いは終わりを告げる。


 そうして麗らかな昼下がり。4人は同じベッドで眠りに入るのだった。


……………


「う、うー寝苦しい……」


 時計の針が16時に指した頃。漸く発情も治り、リアは目を覚ます。あとついでに妙な重さと寝苦しさから身体を起こそうとして、がっちり左右から……上からもホールドされている事に気がついた。


「……」


 リアは考えるのをやめて、もう一度布団に身体を沈めた。今日の晩御飯は昨日のおかずの残りでいいだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。