表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔導師凛々花は愛されすぎている!  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/33

33 魔王救出。



 シャンテには、魔力感知能力がある。

 来たことは、わかったのだろう。

 魔王城の大きな扉が、開かれた。重く開かれた扉のその先を見ても、魔物が現れる気配はない。

 操られた魔物の十匹や二十匹は出てくることを覚悟していたが、来なかった。

 夜なら、少ないと予想はしていたが、いないとは驚きだ。

 私とジェフは顔を合わせると、頷き合う。

 そして、魔王の城の中を進んだ。城の中の壁も、トゲに覆われている。

 触れても問題ないが、触れないように注意しながら、廊下を歩いていく。

 私は魔法結界を出す魔法道具を発動させるように、指示を出した。

 パキン。パキン。パキン。

 小瓶が割れれば、魔法が咲き誇る。花火のように。

 真っ赤な魔法陣が広がって、魔法の壁を作り上げる。

 ラメのような粉が舞い降りては、消えていく。

 これで駆け付けた魔物がいても、入ってこない。

 私達は、進み続けた。

 そうして、前魔王戦で戦いをした謁見の間に到着。

 扉が開いたかと思えば、トゲが蠢き出した。

 襲い掛かってきたが、私達は気にせず、謁見の間に足を踏み入れる。


「ジェフ、頼んだ」

「気を付けて、リリカ」


 ジェフの率いる精鋭に任せよう。


「魔王シャンテ!」


 玉座に歩みながら、私は声を上げて呼んだ。

 黒い長髪、青黒い羊のような角を生やし、青黒い鱗のような鎧を纏う。

 長身の身体は、玉座に深く座り、顔は俯いていた。

 反応がない。

 しかし、謁見の間にも黒いトゲがあり、それが茨のように絡みつこうとしてきた。

 グリーゴリくんが、両断してくれたので、構わず進んだ。


「それとも、魔人と呼ぶべき?」

「――立ち去レッ!!!」


 ダンッとひじ掛けに拳が叩きつけられる。

 魔王シャンテの声だったが、それはノイズが混じったような、拡張された声が響く。

 そして、鞭のようにしなって、黒いトゲが飛ぶ。

 それは私に届く前に、電撃の魔法と衝突して、消え去った。

 振り返らなくても、スクリタの魔法だろう。昔から雷属性の魔法は得意だ。

 シャンテの弱点は、今も雷属性らしい。


「私よ! シャンテ! 聞こえてる?」

「誰だろウと、立ち去レ! 壊しテ、ヤル!」

「凜々花よ! 顔を上げて、私を見なさい!!」


 顔を上げるように言えば、その青白い顔が上がった。

 青の中に赤がある瞳だったのに、黒い目をしている。

 深淵のような、真っ黒な瞳。


「り、りか……さま?」

「シャンテ?」


 クリアな声に聞こえた。


「リ、リカ……魔導師リリカ……」


 また、ノイズが混じったような声が響く。


「欲シイ……。モウイナイ。欲シイ。イナイ」


 意識は、混濁しているようだ。

 シャンテの意識と、魔人の意識が、一つの身体にあるせいだろう。

 どうやら、シャンテの意識は完全には支配が出来ていない。


「欲シイ。イナイ」

「ここにいる! 天才魔導師凜々花はここよ!」

「アアァ! リリカ! リリカぁアア!!」

「……シャンテは私を凜々花様と呼ぶ。アンタはお呼びじゃない、魔人! その身体から出なさい!」

「オマエッ、壊ス!! ――――殺ス!!!」


 魔人が支配しつつあるようだ。早く魔人を引き剥がそう。

 殺意を向けて来た魔王シャンテに乗り移った魔人が声を上げれば、私の前に弟子達が立ちはだかった。


「私の友を返してもらおうか!?」


 私が杖を真っすぐに差せば、アルテが先手を打つ。

 転移魔法で玉座の上に移動して、雷を付与した短剣を振り下ろした。

 空になった玉座に、短剣は突き刺さる。

 魔人は、エグジとスクリタの前に、黒い煙を撒き散らして現れた。


「リリカぁアア!!」

「「”――トォノド・ショック――”!」」


 エグジとスクリタの雷属性の衝撃波を間近で受ける。

 しかし、ダメージを浴びた様子はなく、私に向かって手を伸ばす。

 エランが私を乗せて、謁見の間を飛ぶ。

 そして、玉座の前に下ろしてくれた。


「始め!」


 私は合図を出して、杖の矛先を魔人に定める。

 そして捩じって、魔力を吸い始めた。

 アルテも階段を飛び降りて、構える。

 魔人はシャンテを乗っ取っているからなのか、以前よりも頭が回るようだ。

 私を振り返り、手を伸ばす。

 そして、七年前に不覚にも受けてしまった黒い刃が四方八方から放たれた。

 私と弟子達の一枚目の魔法壁を破壊。そして砕けた。

 続けざまに無数の黒いトゲも飛び出す。ロケットのようだ。

 だが、強度が上がった二枚目の壁は壊せない。

 こちらも受けてばかりではなかった。

 シャンテには、雷属性が効く。トゲも、だ。

 弟子三人に囲まれた魔人は、もう袋のネズミ。

 放たれるトゲを避けつつも、エグジ達は雷属性と光属性の魔法攻撃を与え続ける。

 どんどん私の杖に魔力が吸われていく魔人は、痛みが効いてきたようで、昔のように雄叫びを上げる。

 シャンテの声も混じるそれを聞きながら、堪えろと心の中で言い聞かせた。


「ウオオオォオ!!!」


 半分まで吸い取れただろうか。

 杖に亀裂が入り始めた。杖の中に埋め込んだ賢者の石が、黒く濁る。

 杖から魔力を奪い返しているようだ。

 抵抗している。

 禍々しい魔力が、爆発した。

 謁見の間を揺さぶる。天井が崩れて、トゲに襲われ、エグジ達の攻撃が止んでしまう。

 それから、魔人は私の前に飛んできた。

 エランが阻もうとしたが、殴り飛ばされる。

 魔人の狙いは、杖の中に奪った魔力かと思ったが、私を掴もうとした。

 しかし、敵意があるなら、魔法壁は発動する。

 私は杖を庇うように背にしたあと、手を翳す。


「”――トォノド・ショック――”」


 バチンッと感電したが、魔人は魔力を込めて二枚目の壁を殴り壊した。


「師匠!!」


 駆け付けようとしたアルテ達だったが、魔人は壁を立てて阻む。

 そうして、目の前で、トゲを放ってきた。

 ドリルのように回るトゲが、三枚目の壁をこじ開けようとする。


「”――トォノド・ショック――”」


 私はもう一度、雷属性の衝撃波をぶつけた。

 ほぼ同時に、私の三枚目の魔法壁が壊れる。

 魔人は、にやりと笑った。

 ようやく、私に触れられると思ったのだろう。

 首目掛けてきた手は――――壁にぶち当たる。


「魔法壁は五枚張るのが定石でしょう」


 私はべーっと舌を出して笑ってやった。

 昔とは違う。この身体で、何かを食らっては、一たまりもない。

 だから、念のため、五重の魔法壁を用意しておいた。

 ぐらっとシャンテの身体が揺れたが、また雄叫びのような声を上げる。

 私はターンとして、手を翳して唱えた。


「昔を思い出すわね、シャンテ。”――トォノド・ショック――”!」


 また衝撃波を受けた魔人は、後ろへよろける。


「リリカ、さ、まっ……」

「シャンテ?」


 一瞬だったが、黒い瞳から青い瞳に変わった。

 でも一瞬だ。

 立てられた壁は、雷鳴が響き渡るとともに破壊された。


「無事ですか!? 師匠!」

「まだなのかっ? おい!」

「急かさないの!」


 弟子三人が駆けつける。エランも起き上がって、エグジのそばに立つ。


「もう少しよ」


 私はスクリタの問いに答えてから、杖を確認した。

 持つかしら……。

 いや、持たせる。


「オオオオォオ!!!」


 また城を揺さぶる勢いの叫びが放たれた。


「コロシッ、欲シイ!! ホシイホシイホシイ!!! アア!! アの女がっ!!!」


 シャンテが、いや魔人が自分の頭を抱えて、声を荒げる。


「何が言いてぇんだコイツ」


 スクリタが怪訝な顔つきで睨みつけた。


「殺セ! ころ、シテ、くれ!! 殺セ!! 殺シテ、クレ!!!」


 シャンテの声が、クリアになったり、ノイズが混じったり、交互に声が変わる。

 きっとだいぶ魔力を吸ったからだろう。

 シャンテの意識が主導権を奪おうとしている。

 そう思ったが、違う。

 シャンテは、殺してほしいと頼んできた。

 自分を殺せ、と。


「リリカ様ッ! アア、リリカ様ッ! ホシイホシイ!! 殺してクレ!!」

「シャンテ! しっかりしなさい!!」


 私がそう声を上げると、シャンテがぴたりと動きを止めた。


「アハハははッ!!! アノ女は、死んダ!!!」


 そう笑い出したのは、絶対に魔人の方だ。


「私の友を――――返せって言ってるんだよッ!!!」


 頭にきた私は、右手でシャンテの手を掴んだ。

 押し退けた弟子達が制止の声を上げたが、私が呪文を唱える方が早かった。


「”――ショックザノド――”!!!」


 十年前もシャンテに食らわせた魔法。

 ありったけの魔力を込めたから、威力はどうかな。杖を介してない。

 倍増だといいけれど。

 でも、効いたらしい。

 シャンテの身体はバチバチと発光しながらも感電し、そして震えた。

 それでも、魔人は私の右手を掴む。捻り上げようとするその手に、アルテが短剣を突き刺した。


「師匠に触るな!! 魔人め!!」


 そう怒鳴って。


「”――ショックザノド――”!」


 エグジがもう一度、感電の魔法をかける。


「急げ! 師匠!!」


 スクリタが蹴りを決めて、壁に追い込んだ。

 私は残りの魔力を吸い込もうと、杖を突きつけた。


「ヤめろぉオオオオ!!!」


 ぴきぴきっと亀裂が酷くなる。

 白かった柄は、もう黒ずんでしまった。


「シャンテ!!! 追い出しなさい!!!」


 私が叫ぶと、杖にはめた賢者の石が弾ける。

 だめだ! 杖が、持たない!

 私は急いで、用意した封印魔法を発動させる。


 ゴーン。


 鐘の音が響く。

 無数の魔法陣が、浮かび上がる。


 ゴーン。


 また鐘の音が響けば、魔法陣の数が増える。


 ゴーン。


 鐘の音が響き、杖を手放す。

 瞬きをするような一瞬の間に、魔法陣は杖に吸い込まれた。

 いや、魔法陣の方が、杖に張り付いたのだ。

 妬き付くように魔法陣が刻み込まれた杖は――――朽ち果てた。

 同時に、どさっとシャンテの身体が倒れる。

 そこらじゅうの壁に生えたトゲも、黒い灰になっていく。


「シャンテ!」


 私は魔法をといてあげて、シャンテを起こして、顔を掴み、覗き込んだ。

 瞳は開いていて、赤色を囲った青い瞳に戻っていた。

 すぅーっと、その瞳から涙が流れていく。


「……リ、リカ、さ、ま……」


 声は枯れているが、シャンテのものだ。間違いない。


「あなた、なのですね……?」

「そうよ。シャンテ。あなたよね?」


 私かどうかを確認するから、答えたあとに、私も確認してやった。

 笑いかけると、ますます苦しそうな顔をするシャンテ。


「はい……私です。……申し訳、ありません。あなたを、生き返らせようと」

「魔人の力を利用しようとして、乗っ取られた? 全く」


 魔人の力で蘇生魔法をするつもりだったのか。

 やっぱり、私のせいだ。


「どうしても、蘇らせて、言いたいことがあったのです」

「言いたいこと?」

「ずっと、言わなかったことを……」


 シャンテは私の頭の後ろに手を回してきたかと思えば、引き寄せてきた。


「愛しております」


 シャンテも顔を寄せてきて、唇を重ねてきたのだ。


「リリカ様……心から、愛しております」


 何度も、何度も、唇で唇に触れてくる。

 愛を告げながら――――。


 ひょいっ。


 急に、私の身体は浮き上がった。

 身体には腕が巻き付いていたから見てみるとジェフ。


「魔王シャンテ! こんな事態を引き起こしておきながらっ貴様!」

「ふざけんな!! またしやがって!!」

「息の根を止めてやろうか!? 今! ここで!!」


 エグジとスクリタとアルテが、カンカンに怒っている。

 ジェフも例外ではないようで、憎たらしそうにシャンテを睨み下ろす。

 けれど、私に目を向けては、二度見した。


「リリカ? リリカ、なんで……そんな顔をするの?」


 ジェフの戸惑い一杯の声で、自分の顔に触れる。

 熱い。

 きっと、真っ赤になってしまっているに違いない。

 いや、だって。ときめかずにはいられないだろう。

 今まで尽くしてきてくれたのは、愛していたからだ。

 恩人だからだけではなく、愛していたから――。

 そして、情熱的な口付け。今までされたことなんてなかった。

 いや、私が求めさえすればきっと、誰かがしてくれだろうけれど。

 そんな時間を作るつもりも暇もなかった私には、効果てきめん。

 私はジェフに抱えられながらも、真っ赤な顔を両手で覆い隠してのけぞった。

「うー」と呻くのが精一杯。

 すると、殺気立った弟子三人とジェフが、同時に「殺していい?」と訊ねてきた。

 シャンテのことだ。


「今救ったところなのに!?」


 弟子三人が騒ぎ出すが、聞き取れない。

 怒っているのは、確かだ。


「どちらにせよ、彼は重大な過ちを犯した。大罪人だよ。リリカ。拘束する」

「……わかっているわ」


 魔人を封印から解いた。

 世界を危機にさらした以上、罰せずにはいられない。


「でも、ちゃんと話をさせて。あの日、私を看取った皆に話したい。何故私が死んだのか」

「……朝にしよう。その間、魔王シャンテは拘束して牢屋に入れておく」

「シャンテ」

「……従います、リリカ様」


 そう答えるシャンテは、起き上がらない。起き上がれないのだろう。

 あれだけ苦手な雷属性の魔法を浴びたのだ。

 魔人が抜けて、ダメージがどっと出ているのだろう。

 私も疲れがどっと出てきたし、眠気にも襲われている。


「魔人の封印は成功したんだよね? リリカ」

「誰に言ってるんですか? 天才魔導師リリカ師匠の魔法は完璧でしたよ。おれ達の師匠を返してください」

「でも杖は壊れたように見えたよ? このまま寝かせてあげよう」

「封印したあとに灰になった。封印は全て灰の中。封印をもしも解きたいなら、灰を集めて杖の形に戻してから、複雑な魔法陣を正確な位置に正さないと解けない。まぁ、不可能だけれど。おれが抱えるから、返してください」


 ジェフとエグジが私の取り合いをしつつ、玉座の階段を降り始めた。

 私はうとうとしつつ、ジェフの肩に顔を埋める。

 魔人の封印と魔王を救出に成功。



 朝。目覚めると、また弟子達が私のベッドで眠っていた。

 右にはエグジ、左にはアルテ。足元にはスクリタ。

 のっそりと起き上がる。肩から、するりと黄金色の髪が滑り落ちた。

 弟子達を起こさないようにベッドから降りようとしたが、そんなこと無理だ。

 手をついたらベッドが揺れて、三人は目を覚ました。


「師匠! どこ行くんですか!?」

「師匠!?」

「あ!? どこ行く!」


 三人とも、飛び起きては、心配する。

 過保護だなぁ……と苦笑を零しつつ、愛されていると実感した。




『天才魔導士凛々花は愛されすぎている!』



今年の目標は、『長編連載一つを完結する』ですので……。

去年書きかけたものを、原稿の合間に頑張りました。2022年ぶりでした……!


天才魔導師の凛々花ちゃん、愛されすぎているお話でした。


お付き合いいただきありがとうございました!

よかったら評価、いいね、よろしくお願いいたしますね!

2025/02/21

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ