2話 世界の常識と赤ん坊
俺がアルバートとサラティアに拾われて早くも1ヶ月が経った。感覚的に1ヶ月が凄く長く、マジでオムツの時は羞恥心で死にそうだったのを覚えている。
1ヶ月の間サラティア達の話に耳を傾けていると、アルバートは今俺達が住んでいる国、『オーゼン』のハルスト侯爵のようで1年前エルフのサラティアと結婚したようだ。ハルスト家の屋敷にはアルバートとサラティア、俺に執事のオルドに長髪の茶髪メイドのホルンだけだ。
貴族からしたら一人しか嫁にせず、使用人の数も二人しかいないのはとても珍しいようだ。ハルスト侯爵家がどのような家系かというと、代々才能ある魔法使いを生み、育て、功績を積み上げてきたらしい。
そうだ、魔法と言えば魔力の特訓をするとしよう。アレスの話によれば先ずは、魔力を感じることだったな。
………ん~、わからん。俺は暫く目を閉じて、身体に意識を向けるが何も感じなかった。
ただ感じようとするのが間違っているのか?もっと明確に、小説では血液をイメージしたり魔力回路とかがあったな。試してみよう。血液が流れているイメージ………ダメだ、何も感じない。
よし、今度は魔力回路に魔力が流れているイメージ。おっ、暖かい何かが俺の身体全体に流れているのがわかる。それを意識して、徐々に動かしていく。
………難しいな、元々地球では魔力が無かったからな。動かそうと意識するが、難しく俺はもっと集中する。身体全体と流れている魔力をイメージ、そして魔力を意識する。
暫く魔力制御の練習をしていると、身体の魔力を徐々に動かせている感覚はあるが慢心せずに動いてきた魔力を右手に集中させる。右手に集中させて、今度は左手に集中させる。右足、左足と次々と身体の一部に魔力を集中させていく。
1時間程訓練していると魔力を身体の中で動かすのは、段々慣れてきた。今度は魔力を身体の外に放出する。俺の身体から透明な魔力が放出していく。
………くっ、身体の外に魔力を放出した瞬間、魔力が制御できずに散っていっていまう。
はぁ~、ダメだ。30分程練習したけど全然制御できる気配がない。もしかして無理矢理に制御しようとしたのが、いけなかったのか?魔力を感じたり動かす時のようにイメージしてみよう。魔力を放出して、散らさず纏うイメージ。
すると、魔力が散らずに透明な魔力が身体に纏っている感覚がある。纏っている魔力を次は右手に集中して、集めるイメージ。魔力が俺の右手の掌に集まり、密度が上がって鈍い透明色になる。
俺は続いて魔力を限界までに圧縮したり、周りに物凄く薄い魔力を張り巡らせたりと、魔力で遊んだりしていた。そして遊んでいる途中に何個か魔法を編み出し、魔力を制御するコツはイメージだとわかった。
5時間程魔力で遊んでいると、急に目眩がして俺は気絶してしまう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
あれ、何で俺は寝てたんだ?あっ、そうだ。魔力で遊んでいると、急に目眩がして気絶したんだった。でも、どうして急に気絶したんだ?俺は疑問に思いながら閉じていた目を開けて辺りを見回すとサラティアが俺の顔を覗き込んでいた。サラティアは俺が見ているのに気がついたのか声を掛けてくる。
「もお~、何人かの赤ちゃんは無意識に魔力を放出して魔力欠陥で気絶したりするって聞いたことがあるけど、本当に心配したんだから」
サラティアが心配したように俺に言う。
なるほど、魔力を限界まで消費すると気絶してしまうのか。アレスめ、そんなこと一言も言ってなかったぞ。でも、気絶するのはキツいけど魔力量を増やすためにやるしかないしな。
そして俺の修行が始まった。魔力を制御する訓練をして魔力を放出し続けて気絶する。そして起きたらオムツとご飯、サラティアが部屋から出ていったらまた魔力の訓練して魔力を消費して気絶と、それを何度も繰り返していく。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
俺がこの世界に転生して1年が早くも過ぎた。半年前、アルバートとサラティアの子供が遂に生まれた。名前はユリスと名付けられ、水色の髪に水色の瞳で将来物凄い美人になるだろう顔をしていた。ユリスはハーフエルフなので耳を観察すると、耳は少し尖ってはいるがサラティアみたいに耳は長くなかった。
最近歩くことができたから俺も自分の転生した容赦が気になったので、鏡で自分の顔を見てみた。短髪より少し長めの黒髪にストレートパーマで、銀色の瞳をした俺の前世の顔だった。前世の顔と違う点と言えば銀色の瞳くらいだ。
俺は2ヶ月程前から時々書斎に入り、この世界について調べている。
この世界には4つの大陸があり、俺達が住む南東部の大陸は人間とエルフ、ドワーフの国が存在する世界最大の大陸、『モートネス大陸』である。
北東には獣人が住む『レオガー大陸』、北西には魔人族と竜人族が住む『サイレスト大陸』が存在する。
そして南西付近の海底には、魚人族が住んでいると言われている。最後に、入った者は誰1人として帰ってこず、聖なる地と言われ、また魔の地とも言われた『聖魔大陸』がこの世界の中心にあるらしい。
魔法に関しての本を読むと、この世界の生命は、大気中にある魔素を身体に取り込み、魔力回路で魔素を魔力に変換して変換した魔力で魔法を行使するみたいだ。だが、動物はそもそもの魔力回路を持っておらず、その状態で魔素を取り込んでしまうと魔物化してしまうのだそうだ。
そして魔法には属性があり、火、水、風、土属性の、持ち主が多い元素魔法、光、闇属性の、持ち主が少ない希少魔法、無属性の持ち主が100万人に一人と、とても少ない『無色』と言われている。
何故無属性魔法が無色と言われているかというと、威力が小さくて威力を上げようとすると直ぐに魔力が切れる。つまり、無属性は威力が小さく魔力燃費が悪いし、回復魔法が無いからだ。
属性には必ず、回復魔法が存在する。だが無魔法には人を回復させる回復魔法が無く、無属性を持つ者は他の属性を持つことはない。だから、何者にもなれない『無色』、『無能』と蔑まれ、周りは無属性に差別的であるらしい。
更に魔法には上位属性が存在していて、火は炎、水は氷、風は雷、土は地、光は白、闇は黒となっているのだが、無属性は上位属性が存在しないらしい。
属性魔法か、俺は何属性なんだろうか?3歳になると教会で属性を調べるみたいだが、火とか闇は男として憧れるな。だが魔力の訓練にイメージのことが全く載っていなかったのは、どういうことなのだろうか?
俺の魔力量は1年の成果で、1日魔力を放出し続けても大丈夫なくらいあるが、これからも魔力量を鍛えていこう。
「おぎゃあ~おぎゃあ~!!」
おっと、ユリスが起きてしまった。俺は今、ユリスの御世話をしている。
「サラティアさま、おじょうさまがおきました!」
御世話と言っても、ユリスを笑わせたり、泣いたらサラティアに報告するくらいだ。サラティアは俺の呼び掛けで部屋に入ってきた。
「あらあら、ご飯かしら」
サラティアは服をまくりユリスに母乳をあげる。俺は見るのが何か恥ずかしいので後ろを向く。
「ありがとう、ユウト」
「いえ、とうぜんのことですので」
「そろそろ私達も夕食だからいらっしゃい」
「かしこまりました」
俺はサラティアに御辞儀をしてサラティアの後ろを着いていく。階段を降りて廊下を歩き、ダイニングに入る。サラティアはそのまま席に座り、俺は後ろに控える。
「ユウトも座りなさい」
アルバートが俺に座るように言う。
「かしこまりました」
俺はアルバートに言われたように席に座る。
「では頂こう、神に心からの感謝を」
「「神に心からの感謝を」」
アルバートが音頭をとり、俺とサラティアも続く。食事を始め、皆丁寧に食べていく。はぁ~、やっぱり日本のご飯が食べたい。日本人なら米だよな。
「美味しくないですか?」
ご飯を作ったホルンが仏頂面で食べる俺に心配そうに声を掛ける。
「あっいえ、美味しいですよ」
俺は笑顔でホルンに言う。ホルンは俺の返事にホッとしたように胸を撫で下ろす。
ん?微かにユリスの泣き声か聞こえた。
「サラティアさま、ユリスさまのなきごえがきこえました。おそらくオムツではないでしょうか」
「あら、そうなの?私には聞こえなかったけど」
サラティアがダイニングを出て、ユリスの部屋に向かっていく。
5分程してサラティアがダイニングに帰ってきた。
「本当にオムツだったわ、よく気づいたわね」
「いえ」
俺達は夕食を終えて部屋に戻る。俺は部屋に戻り、日課の魔力操作の訓練をする。今では他人の魔力も操作できるようになった。操作といっても少し動かす程度だが、練習して相手の魔力を完全に操作できるようになるつもりだ。魔力に関しては魔素を意識して自らに吸収して3秒で魔力を全快できるから心配はいらない。
訓練が終わり、俺はベッドに横になり寝ついていく。




