第33話 「新生活」
ヒロトはこの三週間ほど、言葉通りの意味において、寝る間も惜しんで魔術の開発と、「シュバイツ大森林亭」のプロデュースに勤しんでいた。
朝4時:起床
朝5時:郊外にて新魔術の実践とソランの教育
朝7時:朝食(シュレイ手作り弁当)
朝8時:一旦帰宅し、『シュバイツ大森林亭』の施工とメニューなどの打ち合わせ
昼12時:昼食(シュレイ手作り弁当の場合あり)
昼12時半:ハイデンを交えて、『腕輪の魔術師』による各国の迷宮の傾向と対策
昼15時:魔術の研究と新魔術の構想
夜18時半:夕食
夜19時:新魔術の構想と魔法陣の開発
夜24時:就寝
睡眠時間は4時間。また、暇さえあれば、体内魔力の消費と『魔力吸収』を繰り返している。
ヒロトが開発を急いでいる新魔術は、いわゆる『空間魔術』。
中でも、特に『転移』であった。
『転移魔術』の開発には、召喚魔法陣の解析が必須であることが判明した。転移魔術とは、送信と受信の違いこそあれ、基本的には『召喚魔術』のことであったからだ。
エンゾがカミュ・ギルバートとの対決において、地竜の召喚魔法陣を見ていたことが、解析の手がかりとなった。
エンゾが記憶から再現した魔法陣を見たヒロトは思わず呟いた。
「くふふふ。これでどんなに遠くに行っても、毎日シュレイさんに会えるぞ……」
「まだ再現出来たわけでもないのに、ちと早計じゃないかの。わしとて、じっくり観察したわけじゃないぞ。術式も曖昧じゃ。間違いはあるだろうし、補完も必要じゃろう。現に、この魔法陣には意味不明の式もあって、このままでは展開できん」
「いや、元々構想は二通りありまして、どうやら、その内の一つと方向性は同じようです。『転移』タイプ か『錬成』タイプかで迷っていたのですが、『転移』で問題ないようです。これだけ分かれば、何とかなる気がします。私が知りたかったのは、術式の内容ではなく、方向性ですから」
「どう違うんじゃ?」
「『転移』タイプは『空間魔術』と言い換えても良いかも知れません。ようは、A地点とB地点の空間を繋げることです。『錬成』タイプは、情報を『通信』などで送った後、分解と再構成を行ないます。つまり、まず、A地点から私の情報――ようは私の設計図ですね――それをB地点に送ります。そして、私の身体を分解して、B地点において先に送った情報を元に再構成するのです。『召喚錬成』との複合魔術になります。でも、どうやら、前者の転移が正しいようです。さすがに自分を分解して、別の場所で錬成するのは時間が掛かるでしょうし、第一、怖いですからね。正直、安心しました」
「理屈は分かったような、分からんような。それで、実際のところ、展開できるのか?」
「やってみなければ分かりませんが、多分出来ると思います。師匠は地竜側の魔法陣を見ていないからイメージが湧かないのでしょう」
「お主だって、見てないじゃろ?」
「ええ、残念ながら。その場にいたのですが、地竜の周囲に魔法陣は出なかったと思います。ただ、この魔法陣を見れば、理屈は分かります。簡単に言うと、同じ空間に同じものは二つ存在出来ない、という法則を利用しているんですよ。空間をトンネルで繋げるイメージというよりは、別々の地点の座標を重ね合わせるイメージですね。魔法陣だって、同じ空間には一つしか存在出来ませんから、その魔法陣の上の生物だって、一つしか存在出来ません」
「言っとることは分からんではないが……。再現出来るかどうかはともかく、この魔法陣から、そこまで推考出来るとは思わんかったわい」
「何度か動物実験をして確認してみたいと思います。肉体の安全が確認出来たら、適当に盗賊でも捕まえて、実験しましょう。精神の安全も確認出来たら、実用化ということで」
「うむ。暇な時にでもわしが盗賊にマーカーをつけておこう。二~三人、いつでも利用できるようにしておく」
「ありがとうございます」
当初、2~3日もあれば再現出来ると考えていたヒロトであったが、いざ試してみると、座標の指定が難しく、なかなか別々の地点の魔法陣を重ねることが出来ない。A地点とB地点、少なくとも一方は動いているからだ。そうしなければ、地竜を放し飼いには出来ない。放し飼いにしていた以上、固定座標ではないのだ。
しかし、10日ほど経った時、エンゾが再現した魔法陣の問題点を発見することに成功した。それは、記載されている座標指定の部分の「解釈」が間違っていたのだ。
ヒロトは二つの魔法陣は、お互いがお互いの座標を示していると考えていた。そして、魔法陣同士を同期させるのだと。しかし、実際は、基準点が存在したのだ。気付いてみれば当たり前の話だが、その事実に気付くのに10日もかかってしまった。
ヒロトの頭には、テンプレ小説における、遺跡の転移盤のイメージがあった為だ。いわゆるポータル。固定座標同士の転移である。
しかし、大バロウ帝国で魔物の召喚魔法陣を完成させた者たちは、迷宮の召喚魔法陣の解析を経て、再現に成功した経緯がある。迷宮に潜ったことのないヒロトには、イメージが湧かなかったのだ。
今となっては、カミュがどこに基準点を設けていたかは不明だが、カミュの魔法陣には、三点の座標が必要だったわけだ。A地点とB地点、そしてゼロ地点である。
「おお、成功じゃ、ヒロト! ウサギはちゃんと転移しておる! 凄いぞ、これは!」
ゼロ地点は拠点のエンゾ邸に設定している。ゼロ地点は、当然、ポータルとしても使える。
「さすがです、ヒロトさま」
ヒロトならウサギを10m移動させることくらい、出来て当然といった様子のソラン。正常運転と言ったところか。
ひとまず、A地点とB地点、わずか10mほどしか離れていないが、動物の転移実験には成功した。
高低差をつけたり、石室に入れた状態から転移させてみたり。
その後、盗賊を使った人体実験にも成功。被験者を面談した結果、特に精神上の問題もないことが確認された。実験に使った盗賊は、その場で首を刎ねて、燃やして埋められた。警備隊に突き出すのが面倒だったからだ。
さらに翌日、ヒロトは自身を使った実験にも成功し、安心して旅に出られることになった。
「な、何を言っておるんじゃ、ヒロト。わずか三週間程度で新魔術を開発したんじゃぞ。それも、『転移魔術』じゃ。凄いどころじゃない、魔術史に燦然と輝く偉業じゃ。世界が知ることになれば、この魔術一つで、お主は大魔術師と呼ばれるじゃろう! わしは感動で震えておるわ!」
ヒロトがぼそっと呟いた、「開発に時間を食いすぎた」という一言に対して、エンゾが猛烈に反応したのだ。
もちろん、ヒロト自身、大魔術を開発したと自覚している。しかし、今のヒロトには魔道の極みを目指すことと同じくらい、重要なことがあった。
決して、無自覚俺TUEEEではない。本当に重要なことがあるのだ。
「しかし、この三週間ほどは、シュレイさんとの貴重な時間を、随分と削りましたからね。店舗の細かな補修や修正など、いろいろと工作して、何とか時間を引き延ばしていますが、これ以上は無理そうですし」
ヒロトが急ピッチで転移魔術の開発に取り組んだのは、ひとえに、シュレイと会う時間を増やしたいが為である。それならせめてと、新店舗の建設を口実に二人の時間を作ってきたが、そもそも、ヒロトが本気で作業を進めれば、すぐにでも店は完成する。設計図も店内調度のプランもとっくに出来上がっているのだ。引き伸ばし工作もそろそろ限界であった。
ただし、そう感じているのはヒロトだけで、シュレイはシュレイでヒロトとの時間を大いに楽しんでいるのだが。
「しかし、元の魔法陣とは随分と違うようじゃな」
「ええ、自分で展開して、自分が転移するわけですからね。動物や他人を転移させるようには行きません。それに、カミュの魔法陣は、召喚する対象が無制限ではありません。その為、あちこちいじりましたから」
大バロウ帝国においても、自分自身を転移させる魔術は開発されていない。なぜなら、大バロウ帝国においては、『転移』ではなく、あくまでも『召喚』という認識が先に立っているからだ。
しかも、召喚出来る生物は、魔物に限られる。魔物には魔核がある為、召喚する個体を指定しやすかったのだろう。現在、大バロウ帝国は魔物ではない生物の召喚魔法陣の開発を進めているが、完成は何十年も先だろう。
そもそも、魔物の召喚魔法陣ですら、数十年単位の時間が掛かったのだ。人の召喚、あるいは転移となれば、これから先、どれだけの時間が掛かるか分からない。
「(確かにヒロトの言う通りじゃ。他人を転移させれば良い魔法陣と、自分自身も転移させる魔法陣とじゃ、自ずと術式も変わってくる。転移対象の無制限化も同様か。それにしても、ヒロトの分析はいつも正確で論理的じゃ。ヒロトの他の魔術にも言えることじゃが、汎用性が半端ではない。そこに使われるアイデアは柔軟で、目からウロコが落ちるような発想ばかり)」
ヒロトの転移魔法陣は、正真正銘、オリジナルの新魔術である。
生物非生物無関係で、無制限。もちろん、送信するものが多くなれば、それだけ魔力の消費も激しくなるし、魔法陣もそれだけ大きくなるが。
いずれにしても、指定した個体以外は召喚出来ないカミュの魔法陣とは桁違いの汎用性である。ポータルとしても使えるし、対象を強制的に自陣に『転移』させることも出来る。その為、元の魔法陣とは似ても似つかないものとなっていた。
実際のところ、ヒロトがカミュの魔法陣を参考にした点と言えば、以下の二点くらいだろう。
(1)受信(=召喚)が可能なら、逆の送信(=転移)も可能
(2)基準点(ゼロ地点)の存在
参考とも言えないような情報だが、実はこの二つが重要であった。少なくともヒロトにとっては。ヒロトにとって、可能だという確信があれば、イメージはしやすく、あとは、魔力という不思議物質の実現力でどうにかなると発想するのだ。
厳密な意味においては、『召喚』と『転移』は対義の概念ではないのだろうが、ヒロトは対義語だと考えている。
「いずれ乗合馬車や物資の輸送など、移動や輸送に関する職業が無くなるかも知れませんね。大バロウ帝国なんて大国が開発を進めているのなら、10年後、20年後には、世界中を自由に、簡単に移動出来るようになるでしょう」
かと言って、輸送で大儲けしよう、といった発想はない。大儲けすることは、ヒロトにとって重要ではないからだ。時間は有限なのだから、重要でないことで時間を使うのは、無駄だと考えている。
一度死んだ影響だろうか。
「さぁの(どこまでも無自覚か。徹底的に感覚がズレとる。いくら優秀な魔術師が大勢集まったところで、ヒロトが開発する魔法陣に使われておるアイデアを発想出来る者など、どこを探したっておらんわい。それに、使われる魔力も膨大。魔術の歴史は数千年。その間、魔術師たちが『転移』を夢見んかったとでも思っとるのかのぅ……)」
実は、ヒロトは無自覚を装った、俺TUEEEのつもりである。
それは、ヒロト一人の力が、大国の魔術を10年~20年リードしている、という部分。しかし、エンゾに言わせれば、20年程度とは無自覚に過ぎる、というわけだ。
日進月歩する科学が当たり前の地球から来たヒロトの感覚では、最先端科学の分野で10年リードしているのなら、それはほとんど永久に追いつけない差の意味である。後発が追いついた頃には、先発はさらに先に進んでいるのだから。
ちなみに、ヒロトがチートと考えるテンプレ能力は以下。
(1)『無限魔力』
(2)『転移』
(3)『無限収納』
(4)『不死』
他にも某サイボーグ戦士の加速装置や、スキルドレイン、時間停止、能力コピー、一方向に通行する能力等など、チート能力と呼ばれるものはテンプレ作品の数だけあるが、ヒロトの場合、別に世界最強になりたいわけでも、アラトの平和を守るヒーローになりたいわけでもない。ヒロトは魔術を使って、自身の可能性を全て使いたいと考えているだけである。
世界はヒロトに立ちはだかる壁でもなければ、敵でもない。ただの舞台である。ゆえに、「どの能力が最強か」的な発想は希薄であった。
対外魔力を使用出来るヒロトは(1)無限魔力は既にクリアしている。今回(2)転移魔術をクリアしたことになる。
ヒロト自身、この二つの能力を習得したことで、ほぼ実現出来ないことはないと考えているようだ。
(3)無限収納も(2)転移魔術のクリアで、どちらも空間を扱うという共通点から、近いうちにクリアできる予感がしているからだろう。
確かに、大軍を殲滅することや、最強になることを第一目標と考えなければ、もっともな考えかも知れない。
ヒロトは『転移』の際、平面の紙に書いた二点(A地点、B地点)をゼロ地点を中心に折り曲げて、重ねあわせるイメージを使っている。その時、当然ながら、ゼロ地点からの距離は等距離ではない。そのまま折り曲げても、等距離でない以上、重ならないのだ。だから、ヒロトは二点を重ね合わせる為に、イメージ上で空間を延ばしたり、縮めたりして、無理矢理等距離にしている。
もし、この空間を延ばすイメージを収納に組み込むことが出来れば、無限収納の完成である。
「(いや、それじゃ駄目か。鞄の中の空間だけを引き延ばしても、俺のイメージでは重さを無視できないだろうな。いくら入れることが出来ても、重くて持ち運べないんじゃ意味が無い。やっぱ、異次元空間に繋げるイメージか、あるいは重力操作か……)」
だが、ヒロトには異次元のイメージがどうしても湧かない。マギバッグの中の空間が、一体どこの空間なのか分からないのだ。某猫型ロボットのアニメは見たことがあったが、四次元ポケットの中身がどうなっていたのか、ヒロトはその場面を見たことがなかった。
しかし、その時、天啓がおりる。
「(あっ! 俺はもうこの身体で体験してんじゃん! アラトに来る前、あの真っ暗な空間だよ! 意識はあったのに、時間は止まっていたように思う。過去も未来もない、あの空間のイメージを鞄の中に投影できれば……?)」
ただの古びた雑嚢のようなマギバッグの外装をなでながら、ヒロトは無意識に笑っていた。
「ヒロトさま、あの女のことをかんがえているのですか?」
ソランが不機嫌そうにヒロトに尋ねる。
「ん? いや、そういうわけじゃないけど」
「では、わたしの魔じゅつの稽古をおねがいします」
「ヒロト、わしはこれから王都に戻って、ハイデンの縄張り分割の交渉を手伝いに行く。残念ながら、『転移』の完成祝賀会は今日は無理かも知れん」
「祝賀会なんてしませんよっ!」
「いやっ、しかし……」
「しませんって」
「王族や貴族どもを招いて盛大な祝賀会をしても、罰は当たらんほどの大魔術なんじゃが……」
エンゾはぶつぶつ言いながら、二頭立ての馬車から馬を一頭外すと、252歳とは思えない颯爽とした身のこなしで跨り、王都へと続く街道の方向に去って行った。
ここは王都へと続く街道から2kmほど離れた荒野である。
ヒロトは朝起床すると、ほとんど毎日、ソランを連れてここに来る。前日に構想した魔術の研究と実践の為だ。ソランの教育や薬草の採集、ポーション作成なども並行してやっている。
ヒロトはマギバッグから朝食のサンドイッチを二人分取り出し、一方をソランに与える。
朝食はシュレイが毎朝早起きして作っている。基本的に白パンのサンドイッチだが、中身の具はシュレイがいろいろ工夫しているようだ。
ヒロトは土魔術で椅子と一体型の肘掛テーブルを作って腰掛ける。
「やはり旨いな。こんな旨い朝食を毎日食べられる俺は、きっと、世界一の幸せ者だろう。ソランも味わって食べなさい」
「……」
元は腰の丈ほどもある雑草が茂っていた原野であったが、ソランの風魔術の稽古で、今では見渡す限り綺麗に刈られ、馬たちが草を食みやすい丈で揃えられている。馬たちも高く茂った固い草よりも、刈った後から生えてくる、柔らかい新芽の草の方が好みのようだ。
ちなみに、馬車の操縦はソランが行なっている。日々のブラシがけなどの世話もソランが行なっている為、馬たちもエンゾやヒロトよりは、ソランの方を主人だと思っているフシがある。
「では、今日は火系魔術だな。お前の火系魔術はまだ属性変換させただけだ。それでは話にならん。先日教えたように、魔力の圧縮と酸素の供給を意識してやってみろ」
「はい!」
ヒロトは簡単に言っているし、ソランも普通に返事をしているが、ヒロトがソランにやらせようとしている魔術は、厳密には火魔術ではない。風魔術との混合魔術だ。それも、飛ばした『炎弾』を風魔術で飛ばしたりする単純なものではなく、空気の組成自体を操作するものだ。しかも、空間に魔力を固定し、圧縮する無属性魔術も加えれば、三種類の魔術を混合させている。
通常の火魔術の訓練の場合、あえてレベル分けするなら、以下。
レベル1:『火球』
レベル2:『火弾』
レベル3:『炎球』※火球の拡大版
レベル4:『炎弾』※火弾の拡大版
レベル5:『炎槍』※炎弾の変形版
つまり、威力と火魔術の錬度が比例するような学習方法が普通である。
だが、ヒロトは最初から『火球』の「質」を上げる稽古をしている。
例え手の平サイズの火魔術であっても、最高品質の火を扱えれば、サイズや変形は後からいくらでも可能だという発想だ。
ヒロトにとっては、直径10cmの火球も、直径10mの大炎球も、単に消費される魔力が上がるだけで、同じだというわけだ。
ソランもヒロトがやらせるのだから、出来ると思っている。現に、ヒロトは出来るからだ。もし、自分に出来ないのなら、自分の魔力が足りないか、未熟だからだと。決して、不可能だとは考えない。
「属性変換させる前に、酸素と魔力を結びつかせて、『魔酸素』ごと圧縮させるんだよ。その圧縮させた火の元を開放し、高速で属性変換させるんだ。そうすりゃ、激しく燃焼してくれるぞ」
ヒロトは酸素の説明はしている。その際、木の枝を燃やし、酸素を供給させながら激しく燃焼させる実験を見せた。だから、理屈はソランも理解している。
ゆえに――、ソランの前方1mほどの距離、一瞬にして発生した火球がボワッと燃え上がる。供給された酸素が燃焼した為だ。
「ひ、ヒロトさまっ! 出来ました!」
「惜しい。圧縮が足りない。圧縮が十分な火球はこうなる」
ヒロトの前方1mほどの距離。一瞬で発生した直径1cmほどの火球が直後にポンッと爆発した。圧縮された魔力と酸素が結合した後、高速で燃焼した為だ。
空気中から酸素だけを集めるイメージは、残念ながら、ヒロトには湧かなかった。そこで、魔力の粒である魔素に酸素を結びつかせ、魔力ごと酸素を集めるイメージを採用している。
「だが、その火も時と場合によっては使えるから完全な失敗ではない。火傷に注意して、もう少し身体から離して練習しろ」
身体から離れた場所に魔術を展開することも、通常であれば、それだけで一つの魔術として成立するほどである。ヒロトもソランも、全く気にした様子はないが。
「はい!」
もはや、火球とは別の魔術である。
ソランも一度で成功するとは思っていなかったので、まさかと思って興奮しただけである。修正点を指摘されても、特に落胆した様子は無い。
ヒロトは視界の隅に火魔術を稽古するソランを置き、自らは椅子に深く掛けたまま、『物理結界』の重層展開を試みる。これは結界自体の練習ではなく、体内魔力を使うことが目的だ。
もちろん、『鑑定』のレベルを上げる為である。
ヒロトはどうして『鑑定』のレベルを上げる為に魔力容量を増やさないといけないのか、全く意味が分からないまま、訓練を続けている。
現在のヒロトの魔量容量はMp1300ほど。ここ2週間で、倍近くに増えている。ソランの訓練を見てやりながらの時間潰しには丁度良いルーチンワークとなっている。
ヒロトの肉体年齢は18歳ほど。肉体的な成長期はおそらく終えている。
確かに一般的な成長期における容量の上昇率に比べ、その速度は遅い。だが、体内魔力を魔力欠乏寸前まで使っては、即座に体外魔力を吸収し、回復させるのだ。それも、普通なら回復に下手すれば丸一日掛かるところを即座に回復させている。
つまり、日に何十回何百回と繰り返すことが可能なのだ。その為、一回あたりの上昇率は微々たるものであっても、時間効率的には、通常ではあり得ないほどに成長速度が速い。効果はてき面で、ヒロトの『鑑定』はレベル2にUpしている。
『鑑定』スキルのレベルアップ条件は魔力容量の上昇で正しかったわけである。
「(師匠の魔力容量が20000オーバーだったな。なら、100000くらいを目指しておくか)」
ヒロトは『鑑定』のレベルを最大の10まで上げる予定である。『鑑定』スキルについて、チートとまでは考えていないが、それに準ずるスキルだと認識しているからだ。もちろん、「(生物)」、「(非生物)」両方取得するつもりである。
実地で『鑑定』の経験を積みながら、魔力容量を上げていくことが、『鑑定』のスキルレベルを上げる条件である。
『鑑定(非生物)』は適当にその辺のものを鑑定していれば良いが、問題は『鑑定(生物)』である。基本は人ごみの中で通行人を『鑑定』しまくり、今いるようなだだっ広い場所では、草花や、足元の土をすくって、小さな虫や微生物などを『鑑定』することにしている。
もっとも、『鑑定』は三種類あり、『鑑定(無印)』と『鑑定(生物)』、『鑑定(非生物)』がある。ヒロトは一般にあまり知られていない『鑑定(無印)』を持っている。これは体外魔力を使うことが取得条件になっているからだ。ヒロトは自身の『鑑定』が、ただの『鑑定』、つまり『鑑定(無印)』であることを知らない。
ポンッ
ソランが一人で訓練を始めて二時間ほどが過ぎた頃、ヒロトの視界の端で可愛い音がした。ヒロトがソランの方を見ると、ソランもヒロトの方を見て、心なしか胸を張っている様子。
「出来たようだな。もう一度やって見せろ」
「はいっ!」
ポンッ
「上出来だ。明日からは『物理結界』の訓練だ。『物理結界』が使えると、今日使えるようになった火魔術を、遠くに飛ばす練習が出来るようになるぞ。火魔術を放った後、瓦礫や小石が飛んできて怪我するのはアホらしいからな」
「ありがとうございました。今日使えるようになったのは、ヒロトさまが洞くつを埋めるときに使っていたものでしょうか?」
「そうだ。あれの小さい版だな。『爆轟』と言う。小さいサイズの『爆轟』を自在に制御出来るようになったら、サイズを大きくしていけば良い。今はまだ大きな爆発はお前には危ない」
「はい」
『物理結界』が使えるようになれば、結界を維持したままで、ヒロト言うところの火魔術『爆轟』(=混合魔術)を訓練させようという話だ。いわゆるダブルである。
ヒロトは正しい認識と魔力があれば年齢に関わらず使えると思っているし、ソランもヒロトが出来ると言うのなら出来ると思っている。
当然だが、わずか5歳のソランがダブル、それも『結界』と火系高位魔術『爆轟』を同時展開することは異常なことである。火球と石弾を同時展開するのとはわけが違う。
もちろん、これから訓練する予定、という話ではあるが、わずか半日にも満たずに、小さいながらも『爆轟』を習得したことを考えると、近いうちに可能となりそうな雰囲気である。
ヒロトは忘れているようだが、ソランもまた、すでに『魔力吸収』が使える。つまり、ほぼ『無限魔力』というチート持ちなのだ。しかもソランは5歳。成長期はまだまだ先ときている。将来的にどれほどの魔力容量を有するに至るのか、エンゾはおろか、ヒロトすら気にしていない。
「今日はこれからカチヤーク村に行くぞ。今日は弁当を持って来てないから、昼食は『シュバイツ大森林亭』で頂く。だから、その前にカチヤーク村の用事を済ませないといけない」
「はい」
時間は8時前。カチヤーク村で氷室の管理と地竜の肉の定期輸送の件を話し合う為だ。
ヒロトはカチヤーク村に到着すると、氷室の状態をチェックする。
当初、地竜の肉は買い手が見つかり次第、出荷する予定だったので、氷室の内部を巨大な氷で囲んだだけのものであった。しかし、肉は市場や商人に卸すのではなく、『シュバイツ大森林亭』で消費することに変更になった。もちろん、ヒロトの強い希望で。その為、魔石を使った冷凍庫に仕様変更していた。
「一定の低温を維持するのが難しいと思ったが、特に問題はないようだな。溶けていないし、大丈夫そうだ」
ヒロトが初めて作った魔道具は成功のようだ。
最初は低温熟成の予定だったが、店で出すだけでは、到底数十トンの肉は使いきれない。最適の熟成期間を過ぎれば、味は落ちるし、下手をすれば腐らせてしまうだろう。その為、仕方なく1割ほどを残し、冷凍させることにしたのだ。
村長が直々に対応に出向いてきた。ヒロトとソランに気付いた村人が知らせたのだろう。
「ヒロト様、新しい氷室の調子はどうですか? ソランちゃんもこんにちは」
「こんにちは」
「こんにちは村長さん。氷室は問題ないようです。今日はお願いがあって寄らせてもらいました」
「ほう、では、ここでは何ですので、『村の離れ』へ行きましょうか。立ち話ではお茶も出せません」
「ソラン、お前は水場で馬の手入れでもしてろ。俺は村長さんと商売の話をしてくる。すぐに終わるから」
「はい」
村の離れとは、来客者が泊まれる公民館のような建物である。村長宅では来村した者などが恐縮したり、お互い気を使うこともあるので、離れは便利な場所となっていた。
「まずは、氷室がイタズラされたり、開けられたりしていなかったことを感謝します」
「これはまた何をおっしゃいますか、ヒロト殿。恩人に恩を仇で返すようなことが出来るわけがありませんよ」
「いえ、そこまで感謝されると恐縮してしまいます。今日は商売――といより、仕事ですね。仕事の話で来ました」
「とにかく、話を聞きましょう」
「実は、王都に『シュバイツ大森林亭』という店を構えましてね。そこで、地竜の肉を使うことになりました。つきましては、肉の定期運送をお願いしたいのです」
「それはお安い御用ですよ。王都への通行証を持った者が何人かおります。その者たちに依頼しましょう」
「ありがとうございます。費用は1ブロック25kgで300セラでどうでしょうか」
「最大でどれくらいの量になりますか?」
「最低1ブロックで、最大でも4ブロックと言ったところでしょう。平均すると、2ブロックくらいだと思います。ただし、次の配送日は、配送した日にこちらが指定させてもらいます。あと、配送者には、ランチ定食一食分のクーポンも付けましょう」
村長は素早く計算する。
1ブロック300セラ(約3000円)はアラトの常識的には、安くはないが、高くもない。送料と考えれば、日本の感覚では高すぎるが。王都に他に用事があるのなら、美味しい料金。それ単独なら、微妙となる。4ブロックなら1200セラとなり、嬉しい現金収入となるだろう。
王都への年間通行証を持っている者はカチヤーク村に2人いる。通行証は個人の物なので、使い回しは出来ない。2人が確実に配送できるなら王都への入場料は節約出来る。
「(往復で約4時間と考えると、適正価格だな。ゆえに、即決は出来ん。いや、いっそ、村出身の王都在住者に頼むか……)」
村長イゴル・ブラドは腕を組んで、難しい表情である。
「月に何回くらいの配送の予定でしょうか?」
「地竜の肉を低価格で出そうと思っています。手前勝手な予想を言わせて頂きますと、すぐに人気店になるかと。月に最低でも10日は配送してもらうことになると思います」
ヒロトは現在、『転移』が可能だ。ほんの数時間前、開発に成功したからだ。よって、カチヤーク村にポータルを設置すれば、好きなだけ運ぶことが出来るし、金も掛からない。
わざわざ25kg/3000円で運送を依頼するのには理由があった。
ヒロトはいずれ空になるであろうカチヤーク村の冷蔵庫の次の使い道を考えているのだ。
カチヤーク村から野菜の仕入れを予定している。
冷蔵庫があれば、葉野菜は長持ちするし、根野菜なら長期の保存が可能となる。下処理をすれば冷凍保存が可能な野菜もある。季節外れの野菜をを定期的に仕入れれば、店で出すメニューの特色となるだろう。いずれ訪れる野菜の取引の為のサービス期間というわけだ。冷蔵庫の何割かを使わせてやれば、喜んで取引に応じるだろう。定期便のようになれば、単価を下げる交渉も可能である。
あと、単純に、ヒロトが迷宮を巡っている時の対策でもある。ヒロトはオーナーではあるが、基本的には『シュバイツ大森林亭』の経営にはなるべく手を出さない方が良いだろうと考えている。
もっと、大まかな枠組み。
ヒロトは『シュバイツ大森林亭』を取り巻く周辺の環境整備の方に気を使いたいと思っている。場所柄、旧い住宅地である為、周辺の環境整備が必須なのだ。商店街は高望みとしても、パン屋、八百屋、肉屋、酒屋、雑貨屋、荒物屋などは必要と考えている。
いわゆる、再開発。
「すみません。ちょっと私では即決出来ません。通行証を持った者を連れてきて、彼らの話を聞きたいと思います。すみませんが、ちょっと待っていてもらえますか?」
「ええ、構いませんよ」
15分ほど待ったところで、ヒロトが見たことのある男が入って来た。解体した地竜を氷室まで運ぶ際、馬車を牽いていた男である。
「おお、あんちゃん、この前は臨時収入と地竜の肉ありがとうな。名前がまだだったかも知れん。俺はビルドだ。王都の通行証は俺とガードナーが持ってる」
「ええ、覚えています。今日はビルドさんとガードナーさんにお願いがあって来ました」
「村長から簡単な話は聞いた。引き受けるぜ」
「「え?」」
呆気にとられる村長とヒロトだったが、ビルドはさらに言葉を被せてきた。
「それより、定食一食分のクーポンの件は本当だろうな」
「ええ、本当です」
「ちなみに、地竜定食は一食、いくらの予定だい?」
「ランチは100セラと150セラの二種類出そうと思っていますが、クーポンは150セラ以下のメニューなら何でも大丈夫ですよ」
「つまり、25kgで300セラの配送料プラス、一回につき150セラのクーポンだろ。クーポンは並んでる連中に売っても良いんだし、全く問題ない。むしろ、大歓迎な仕事だ」
「お前、ガードナーに話を通さなくて良いのか?」
「何言ってんだ、村長。こんな美味しい仕事、ガードナーのやつにくれてやってたまるか。ガードナーに頼むのは、俺がどうしても行けない時くらいだな。全く、今日村にいたのは、運が良かったぜ」
「おいおいビルド。ガードナーと喧嘩になっては困るぞ。それに、一回300セラは結構ギリギリじゃないか?」
村からエルモ街道の合流地点まで約5km。そこから王都まで12~13kmといったところ。合わせて片道17~18km。荷馬車なら2時間掛からないくらいだろうか。現金収入の少ない村人にとって、副業は希望とするところだが、往復で約4時間と考えると、微妙なところ。他に荷があれば美味しい仕事ではあるが、毎回は無理だろう。そうなると、村長イゴル・プラドの疑問ももっともである。
荷物は村の氷室にある為、荷受けが不要な点はプラスか。純粋に、氷室と店の往復になる。
「一回25kgで済むかよ。あんちゃんの言う地竜の肉を使ったランチが100~150セラってのが本当なら、毎日50kgは消費するね。こう言っちゃ何だが、俺なら店の地下にでも巨大冷蔵箱を作って、一度に全部持っていくよ。あんちゃんは魔道具も作れるんだし」
50kgという量は、250gのステーキ200枚分である。200人も客が押し寄せたら、店はパンクである。
ビルドの言葉を聞いて、地竜の肉を甘く見ていたヒロトは考えを改める。すぐにでも、スタッフの補充と教育が必要だと。
「(このままじゃ、シュレイさんを大変な目に合わすことになる。時間はないけど、早急に手を打たんとマズいぞ、これは)」
一方で、ヒロトは内政テンプレもの的な展開に、気分が高揚する感覚も味わっていた。日本では商売の経験はない。学生時代にやったコンビニのアルバイトが精々である。大学でサークルの模擬店やフリーマーケットの経験もない。取引のいろはも知らないし、全ては、どこかで触れた創作物の見よう見真似である。
ゆえに、楽しい。
「大型冷凍庫は設置の予定です。今後も狩った魔物や獣を店で使う用に保存しておきたいですからね。ただ、現状、なかなか時間がなくて、手が回らないのですよ。それに、ここの冷凍庫はいずれ別の用途に使う予定です。その時は改めて依頼に来ますよ」
「そりゃ、こっちとしてはありがたい話だ。とにかく仕事は請けるぜ。第一回目の荷はいつ届けようかね」
ビルドもそう長く続けられる仕事だとは思っていない。
ビルドはヒロトの魔術師としての腕を知っている。トロッコによる輸送は、それほどビルドにとって衝撃だったのだ。ヒロトなら時間さえあれば冷凍庫程度、簡単に作るだろうと。現に、村の氷室は冷凍庫に改造済みだ。ならば、運送の仕事は最長でも、夏頃までだろうと判断した。秋には収穫後の仕事でスケジュールは埋まるはずだ。それまでの短期の副業と考えれば、ビルドにとってはメリットしかない。
「それなら決まっています。4月20日の朝8時から10時の間ににお願いします。店のオープンを4月21日に予定していますので」
「一週間後か。良いぜ、引き受けた」
「それでは、運送方法と、氷室の管理について説明しますので、外へ出ましょうか」
ヒロトは前回、氷室を改造した時に、氷室の入り口の扉に認証用魔法陣を設置している。
認証用魔法陣と言っても、そんな大層なものではなく、登録した者にしか扉を開けられないようにしているだけだ。
「この石板に右手をつけて下さい」
「お、おぅ」
青い魔法陣が浮かび、氷室の扉が開く。
「こいつは、凄い仕掛けだ……な」
特に凄い仕掛けではない。セキュリティもガバガバである。第一、土魔術を使える者なら、入り口から入らなくとも、どこからでも侵入できるし、農機具の一つでもあれば、氷室の壁に穴を開ければ済む話だ。
「登録できる人数は三人。私とビルドさん、あとはビルドさんがどうしても無理な時の為に、村長さん、お願いします」
村長は緊張した様子で、「わかった」と一言言って、魔法陣に登録した。
ヒロトはマギバッグから木箱を4箱取り出す。1箱につき、ちょうど25kgのブロックが一つ入る程度の大きさだ。中には肉を包む布が入っている。
「ビルドさんは、朝、氷室の扉を開け、このライトをつけます。そして、中から指定の個数のブロックを取り出し、氷室内でこの布で1ブロックずつ包んでもらいます。こんな感じで。布で包んだら、この木箱に入れて運んでください。余った箱は氷室内で冷やしておけば良いでしょう。外に出たら、もう一度石板に手を触れてください。扉が閉まります」
「了解だ。この箱にも何か仕掛けがあるのかい?」
「別にありません。箱の内部はほら、こんな感じで薄い石で覆っていますが、それほど保冷効果は期待していません。片道二時間程度ですので、大丈夫でしょう。一応、直射日光は避けてください」
「わかった」
「ちなみに、扉を開けっ放しにして、肉を腐らせたり、盗んだり、横流ししたりしたら、村を焼き尽くす予定ですので気をつけてください」
「「!!」」
「冗談――ではありません。本気で村を焼き尽くします。ブロックには見えない魔法陣でナンバーを打ってあります。紛失したら分かりますので、よろしくお願いします」
もちろん、口から出任せである。
出任せではあるが、村長とビルドの二人は、ヒロトが一日でコトリバチの巣の討伐とハチミツの採取、さらには地竜12頭の討伐を完遂したことを知っている。
そのヒロトが「本気」だと言うのなら、本気として受け止める以外に選択肢はない。
「わ、わかった。端っからそんな気はねぇさ。俺は商売に関しちゃ律儀なだけが取柄の男だ」
ビルドの声がいくらか震えているのは、氷室内の冷気のせいだけではないだろう。ヒロトが魔力をまとって、プレッシャーを掛けているのだ。ただの村人であるビルドにしたら、たまったものではない。
そもそも、ヒロトは村の土地に勝手に氷室を作った上に、仕事を依頼する立場である。にも関わらず、氷室に何かあれば、「村を焼き尽くす」と脅しているのだ。
一見、不遜すぎる態度のような気がするが、何故かそれが通ってしまう。村長やビルドも、ヒロトのことを「怒らせると怖そうだが、非道ではない」という認識だ。つまり、この程度であれば「強者ゆえの当然の態度」と許容される社会なのだ。
ヒロトも徐々にアラトの常識を身につけつつあるというところか。
いずれにしても、両者の契約はつつがなく成立した。
ソランも馬の手入れが終わったようだ。
「私たちはこれで失礼します。運賃と次回用の空の木箱は店でお渡します。第一回は50kg、2ブロックでお願いします。では」
「じゃぁな、一週間後に」
ソランの操縦する馬車が王都へ向けて走り出した。
太陽はもうすぐ南中。
エルモ街道に出るまでは道が悪い。急げば馬を酷使することになるし、怪我をさせかねない。一頭立てではやはり、二時間近くはかかるだろう。
ヒロトが忙しい毎日の楽しみとしているシュレイとの昼食は、少々遅れそうである。




