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ゴブリンは敵に入りますか?③

樹々を抜ける風に揺れ樹々がざわめく

まだ昼前だろうか。太陽は真上から若干東に傾いている。

この世界でも太陽は東から西に動くんだな


「えーと、聞こえてますよね?高雄さん?」


ぶんぶんと振りまわす

やめて!聞こえてるから!


「よかった、では改めて自己紹介をしますね。」

「私はシャルル=ヴァージニア。訳あってこの世界に召喚された者です。日本での名前は鷲宮 沙良」


おいおいおいおい

鷲宮 沙良っていえばTVで名前を見た気がするぞ?そういえば西洋風の服のせいで気づかなかったがドラマとかで見た気がする。


「あの、確かドラマとかによく出る有名人の方でしたっけ?」

「あはは!そっちに突っ込むんですね!普通は召喚の方に突っ込むと思いますけど。」


それもそうだ。目の付け所がシャープでしょ


「一応役者の卵です、高雄さんはどうしてここに?」

「俺は普通の会社員、あっちで死んでこの剣として生まれ変わったんです」

「それは大変でしたね…私は舞台の準備中に助けを求める声が聞こえて、それで助けなきゃって思った瞬間この世界に来てたんですよ。」


なんつーか

なんつーか

格が違いすぎるっす


片や役者の卵、何者かもわからん声に躊躇なく助けの手を差し伸べる天使

片や脇役体質のサラリーマン、間抜けな死に方な上生まれ変わった先でも魔剣、サポートアイテム


「高雄さんの方が年上ですよね?私の事はシャルルと呼び捨てて下さい。落ち着かないですから」


そんな脇役体質のサラリーマンを全く見下す様子もなく、屈託のない笑顔で呼び捨てろと言ってくる。

器が違いすぎた

シャルルは役者の卵らしいがきっとダチョウの卵並の器だろう。敬語は苦手なので遠慮なく呼び捨てさせてもらう。


「わかったシャルル。ところで召喚されたというのは何か用があって、誰かに呼ばれたという事だね。その辺りの詳しい話が聞きたいな」


向こうの世界では勝ってる要素が年齢位しかないのでやや強引に異世界側に話をシフトする。

汚くはない、年の功だよ。年の


「そうでした!その話をしたくて頑張って二人きりになったのに忘れるところでした。」


てへへ、と舌を出してはにかむシャルル

あ、あざとい!流石役者の卵!


「実は私を召喚した本物のシャルルさんと入れ替わっているんですよ」


シャルル(本物)さんとやらは随分と臆病な性格らしく、神官騎士にはなったものの戦いが大嫌いで兄のゴリラもそれを気に病んでいたらしい。

最初の内は何とかごまかしてきたがついに誤魔化しきれなくなりついに戦闘任務が下ってしまう

困ったシャルル(本物)は自分と同じ容姿の、自分の願いを引き受けてくれそうな少女を召喚し、助けを求めることにしたのだそうだ。


なんともハードルの高い要求だ。そりゃ他の世界位まで裾野を広げないとそんな高級物件は見つかりそうもない。


シャルル(本物)さんは神官騎士より召喚師の方が大いに才能があったのだろう、かくして鷲宮 沙良は彼女に力を貸すことにしたのであった。


「シャルルさん、最初の戦闘任務だけやってくれって言ったんです。もし無事に終われたらこの世界で私の欲しいものを用意するって。私もこんな経験滅多にないし、演技の練習にもなるから是非やらせてくださいって引き受けたんですよ!」


ポジティブだ…これが若さか…いやまだ二十代ですけど。ギリギリ。

ん?演技?てことは


「昨日俺をガンガン石にぶつけてたのは?」

「演技です。どこで誰が見ているかわからないので」

「嬉しそうに任務を受けてたのも?」

「そういう依頼でしたので!」

「昨日の着替えは?」

「あ、あれは途中で気づいてやめたじゃないですか!」


真っ赤になった頬を両手で覆い隠し答えるシャルル(偽物)


だからあざとすぎんよ!こういう娘が役者になるんだろうな。学生の頃、このくらい可愛い子はそこそこいたが流石にこんな少女マンガみたいな仕草をする子はいなかった


「そうそう、演技といえば!」


バツが悪かったのか今度はシャルルが話を変えてくる


「高雄さんの剣の演技、凄かったです!まるで本物の剣の様な…」


いや、本物の剣なんですがね。

ついにプロにまで脇役の才能を認められてしまった…つらい…


「武器を買いに行った時、箱の中から一瞬だけ人の気配がしたんです。手にとった時は普通に剣だったけど…いきなり喋り出すし!高雄って名乗った時、あぁ同じ日本人なんだ、っておもいました!」

「今度、その演技のやり方教えてくださいね!」

「こればっかりは生まれ持ったものだからね…」

「私、頑張ります!」


頑張らなくていいよ、君は脇役じゃなく主役になるべきだ

一々ポジティブなシャルルとたわいもない話を一時間程続けただろうか

途中で弁当を食べ(どうやら俺は全く腹が減らないらしい、便利な身体だがシャルルは自分の作った弁当を食べてもらえず残念そうだった。俺もだよちくしょう!)

美味しそうに弁当を平らげたシャルルは今まで登っていた樹から降りる。


「それじゃそろそろ二人も諦めて帰った頃でしょうし、ゴブリン退治に行きましょうか!」


そういえばそんな話だっけ

完全に忘れてたよ


おーっ、とシャルルか右手を上げ歩き始めると、金色の細い髪がはらり、と地面に落ちる


次の瞬間


強烈な打撃音と共に戦斧が前方の樹に突き刺さりバキバキと樹が倒れる。

後ろから気配を感じ振り返ると、樹の影に赤い肉塊が蠢く

それには爪があり、毛があり、そしてゆっくりと躰を起こしてゆき…


体長4メートル

一つ目の上に無数のツノが生え、大きく裂けた口には並びの悪い犬歯がずらり

苔の生えた腰みのには何本もの戦斧がぶら下げられている。


ずしん…と一歩寄ると樹々が揺れ、葉がばらばらと舞う

シャルルの三倍以上はあるだろうか

その怪物はジロリとこちらを見て獲物に舌舐めずりをし、嗤った



   ゴブリン が あらわれた!

 

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