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ゴブリンは敵に入りますか?①

俺は剣崎 高雄

生まれつき無機物を演じる才能を持ち、子供の頃から演劇では木だの石だのの役をやらされてきた。異世界に転生した今でも剣という役をあてがわれたのである。


が、その人生は早くも終わりを迎えつつあった


カンッ!カンッ!

白い壁で覆われただだっ広い室内には所狭しと何に使うかもわからない奇怪な物体が積み重ねられている

共通しているのはそのすべてに十字架の印が刻まれているということだ

どうやら呪いのアイテムの浄化に使う道具らしい

その部屋の中央、剣を石に叩きつける少女がいた


「痛い!やめてくれっ!まじでっ!折れちゃうから!」

「そうでしょう。聖剣を研ぎあげるための神石、魔剣の貴方にはさぞかし答えるはずっ!」


いやその理屈はおかしい

だれだって身体を石にガンガンぶつけられれば痛いに決まっている


「ていうか俺は魔剣でもなんでもない!剣崎 高雄っていう普通の人間なんだ!気がついたらこの剣の姿になってたんだって!」

「なるほど、使い手を惑わす魔剣というのは本当のようです。早急に浄化を施さねば…!」


浄化(物理)

神聖な何かは全く感じないがはっきり言って痛い。仮に俺が魔剣じゃなく生身なら死んでるであろう。

中世では魔女と認定された人間を裁判という名の拷問にかけたらしいがまさにこれだ。


火あぶりにして死んだら人間なので無罪

水で溺れさせ死んだら人間なので無罪

死んだら意味ないじゃないですかーやだー


などと考えてる間にも容赦無く石に頭をぶつけられ続ける。

やはり神がどうとか言ってるような連中がイカれてるのはどこでも同じだな。

一心不乱に叩きつけるその目はどこか狂気を宿している

これはキチガイの目ですわ


あ、もう限界…折れる、折れちゃうよおおおお!


バキンッ


そこには真っ二つにへし割れた神石さんの姿が!呆然と砕けた神石を見つめる神官騎士。


「恐ろしい魔剣…」


あ、これもしかしてさらなる拷問フラグ?


「…でしたが神石が砕けたのでなんとか浄化できたようですね」


助かった死んだと思ったよ

まぁこれ以上拷問されるのは嫌だからしばらく黙っていよう。俺は無機物を演じるのは得意なんだよ。不本意だがな


「シャルル、シャルルはいるか」


広い室内でもよく響く太い声

入り口にはゴリラ然とした面持ちの全身鎧を装着したデカい男が立っている。腕まわりとかこの娘の腰くらいあるぞ。


「ゴリアテお兄様!」


ゴリアテ、ゴリラて(笑)

ぷっ

しかしまったく似てない兄妹だ

まぁ遺伝子は時にいたずらをするし、血が繋がってない可能性もある。ゴリラの妹がちっちゃいおにゃのこでも問題はない。


「おっ、いい剣だな」


おいやめろばか

俺を握ろうとするゴリラに必死で静止を呼びかける

カンカンされるのは嫌なので口には出さないが


俺は魔剣に転生してしまったわけだがこの子に使われるならまぁいいかと思っていた

だがゴリラ、てめーはだめだ

おにゃのこがえいえいって言いながら小さい手で一生懸命握りしめ、ほんのり暖かい体温を感じつつ振り回されるならいい

ゴリラがふんふん言いながらあせでべっとりのゴツゴツした手で握られ力任せにぶん回されるのは絶対許さない!


絶対にだ!!!!!


そんな事になるくらいならさっきの浄化で壊れてた方がましだぜ


「ふむ…」


ゴリラがそのごっつい右手で俺の柄を握る

うわ、めっちゃぞわっとしたコレ。きもい

シャルルがゴリラから少し離れ、俺を構える


「ふんっ」


静止した状態から全力でのなぎ払い。

剣としてまともに振るわれるのは初めてだが、感覚的には遊園地などでよくあるフリーフォールに近いだろうか。威力は何段も上だが。


「ふんふんっ」


上下左右様々な構えから繰り出される強力な連撃は対峙する敵に致命的なダメージを与える事であろう。

ちなみに俺も致命的なダメージを受けている。


「ふむ…」

「どうです?お兄様」

「素晴らしい剣だ、シャルル」

「でしょう?」

「軽いし女のお前には丁度いいかもな」


おおおおお!

神来た!神ゴリラ!そうだよ!お前に俺は似合わないよな!うんうん、お前にはドラゴンズレイヤー辺りがお似合いだよ


「そうだシャルル、お前に任務を持ってきたのだった!」

「!ついに私にも正式な任務が下ったのですね?!?」


ゴリラが腰にぶら下げた羊皮紙をワザとらしく広げ、シャルルの前にさらす


「神官騎士シャルル=ヴァージニアよ!貴殿にトロスト区域に巣食う邪悪なゴブリンの殲滅を命ずる!」

「はいっ!承りました!」


キラキラした目でゴリラからゴブリン討伐の任務を受けるシャルル


ゴブリン

RPGなどで序盤から出る人型の小鬼

初めての任務らしいので神官騎士のチュートリアルと言ったところか

RPGの類は僕も大好きで学生時代は狂ったようにプレイしていた

プレイはじめのチュートリアルは毎度ワクワクしたものだ。シャルルもその時の俺と同じような目をしている


なるほどね

気持ちはわかる

でもこの世界でゴブリンは生きてて殺されまいと必死で攻撃を仕掛けてくるんだよね


シャルル=ヴァージニア

年の頃は14、5歳だろうか。まだあどけなさの残る少女だ。ゲームの敵にワクワクしてた頃の俺と同じ年の頃の幼い少女


そんな君が殺気を持って襲ってくる相手と戦えるのか?


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