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【98話完結版】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
エピローグ

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最終話 エピローグ④ ~『おかえり』と『ただいま』~

 満天の星空、そこに浮かぶ怜座と桜彩座の下で、二人並んで抱きしめ合う。

 高台の上で、ぴたりとくっついて。


「……ほんとに、言っちゃったね」


 桜彩が小さく呟いた。


「ああ。本当は少し前からこの気持ちはあったんだと思う。そして、今、それを自覚したんだ。」


 怜も目に涙を溜めたまま、同じく涙の溜まったままの桜彩の目を見て答える。


「私も……。気付かないだけで、怜のことが好きだった。でも、ようやく自覚したよ」


「桜彩……」


「怜……」


 手で涙を拭いながら桜彩がにこりと頷く。


「でも、もう我慢しないで良いんだよね……? 私、怜に好きだって想いをぶつけていいんだよね?」


「ああ。俺ももう我慢なんてしない。何度だって言うよ。桜彩、好きだ」


「うん。私も好き。怜のことが好き」


 再び、いや、三度抱き合ってキスを交わす。


(桜彩……。俺、桜彩と恋人同士になれたんだよな……)


 かつて友人に裏切られ、そして新たにできた友人に嫌われることを覚悟でこちらのトラウマと向き合ってくれた桜彩。

 大切な、最愛の人のぬくもりを胸の中に感じる。

 これは決して夢なんかじゃない。

 胸の中の存在がそう思わせてくれる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(怜……。私、怜の彼女になったんだよね……?)


 困っていた自分をいつも助けてくれた、再び人を信じることができるのだと教えてくれた、そして大切にしていた絵を描くことを取り戻してくれた怜。

 大切な、最愛の人のぬくもりを胸の中に感じる。

 これは決して夢なんかじゃない。

 胸の中の存在がそう思わせてくれる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「そろそろ帰ろうか」


「……うん」


 いつまでもこうしていたいのだが、さすがにそういうわけにもいかない。

 怜の言葉を聞いた桜彩の目は、どこか名残惜しそうで、けれど、ちゃんと温かな色をしていた。

 名残惜しさを感じながらも腕を解き、そして右手を差し出す。

 桜彩は静かに頷いて、まだ躊躇いがちに怜の手を握った。

 今だに信じられないような気持ちでいっぱいだが、桜彩が隣にいてこうして手を繋いでくれている。

 それだけで、心が満ちていく。

 星のまたたく空の下、二人の影が並んでアパートへ向けて歩き出す。

 草履と下駄の跡が砂浜へと刻まれていく

 もっと二人でいたい、その思いから無意識の内に歩みが遅くなる。

 無理に言葉を探さなくても沈黙は苦にならない。

 むしろ静かな夜の音の中に自分達の鼓動が溶け込んでいくようで、それが心地良い。

 少し歩いたところで、桜彩がぽつりと呟く。

 怜も歩みを止めて桜彩の方を向く。


「その……、さっきはいっぱいいっぱいで、うまく言えなかったかもしれないけど、ちゃんと……ちゃんと、好きだなって……」


「うん、ちゃんと伝わってるよ。俺も、桜彩のことが好き。この気持ちを、想いをずっと持ってた」


 言葉の後に沈黙が訪れる。

 耳に届くのは風の音のみ。

 しかし二人の間の空気は気まずさではなく甘さで満ちていた。


「あははっ」


「ふふっ」


 歩きながらも、言葉を交わすたびにどこかくすぐったくて。

 でも、それが嬉しくてたまらない。

 もっと話したい、もっと名前を呼びたい。

 だけど恥ずかしくて声が出せない。

 そんなもどかしさを抱えながら、二人でゆっくりと並んで進んでいく。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後は一緒にスーパーで夕食の材料を買い込んで二人の住むアパートへと戻る。

 部屋の前へと辿り着くと、お揃いのキーホルダーが付いた鍵を取り出して微笑み合う。


「それじゃあね、怜。着替えたらすぐに行くね」


「ああ、玄関の鍵は開けておくからな。それと急がなくても良いぞ」


「うんっ!」


 一度別れて自室へと入り、怜は先ほど購入した食材を冷蔵庫に入れていく。

 するとすぐにインターホンが鳴って桜彩が来たことを伝えてくる。

 急がなくても良いと言ったのだが、すぐに着替えて来てくれたようだ。


『怜、入るね』


「ああ」


 受話器越しにそう答えると、すぐに玄関の開く音が聞こえてきた。

 数秒後、リビングのドアが開いて桜彩が入ってくる。


「いらっしゃい」


「お邪魔しまーす。…………うーん」


 最初は笑顔だった桜彩だが、ふと何か腑に落ちないのか考えるような仕草をする。

 変なことを言ったつもりはないのだが。


「桜彩? どうかしたのか?」


「あ、うん。その、ね……。なんか今の『いらっしゃい』とか『お邪魔します』っての他人行儀だなって」


「他人行儀?」


 怜の言葉に桜彩はうんうんと頷く。


「うん。その、私と怜、恋人同士になったでしょ? でも、前に言ったことだって本当だよね? 私と家族みたいな関係になりたいって」


「ああ、もちろん。……それに、その……今はまだ無理でも、いずれは……」


 いずれは、本当の家族として――

 桜彩の顔が真っ赤に染まり、そして満面の笑みが広がる。


「うんっ! 私も!」


『言葉では定義出来ない自分達だけの特別な関係』


 恋人という関係が加わった物の、それ自体がなくなったわけではない。


(そうか、家族か。なら……)


 家族としての挨拶を考えた場合、『いらっしゃい』や『お邪魔します』ではおかしい。

 つまり桜彩が言いたいのは――そういう事だろう。

 桜彩の言葉に怜が表情を崩すと、桜彩もにっこりと笑いかけてくる。

 そして二人共少し照れながら、それでいて声に甘さを乗せて挨拶をやり直す。


「おかえり、桜彩」


「ただいま、怜」

これにて完結となります

ここまで読んで下さってありがとうございました

もし興味が湧きましたら、本編の方も読んでいただけたら嬉しいです


本編に関しましては

・姉二人の登場シーンがこちらとはかなり違っており、二人共傍若無人となっています……

・第二章で恋人にならず、そこから恋心に気付くまで、そして恋人になるまでの両片想いが長く続きます


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