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【98話完結版】隣に越してきたクールさんの世話を焼いたら、実は甘えたがりな彼女との甘々な半同棲生活が始まった  作者: バランスやじろべー
第一章後編 近づく距離と特別な関係

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第41話 四人でお出かけ

「桜彩ちゃん。桜彩ちゃんは今日用事がないって言ってたわよね?」


 怜が朝食の片付けをしているとリビングからそんな声が聞こえてくる。

 ちなみに桜彩としては朝食作りを手伝えなかった分、片付けくらいはと思ったのだがそれも美玖に止められた。

 まあ怜としてもむしろ葉月が来ている今日に関してはその方が良いだろうと思い美玖の言葉に頷いた。


「はい。特にありませんんが」


「それじゃあ少ししたら出かけましょうか。いきなり尋ねて迷惑掛けちゃったお詫びにお昼を食べに行きましょう」


「とういか、元々その予定だったのよね」


 美玖の提案に葉月もにっこりと頷いている。


「桜彩、問題ないわよね?」


「うん」


 美玖の言った通り特に予定もないので桜彩が頷く。


「あ、怜さんもご一緒するのですよね?」


 今この場の会話に入っていない怜のことを一応確認する桜彩。

 桜彩としてもこの二人が怜を残してそのような事をするとは思えないのだが。


「そりゃあもちろんよ。四人で出掛けましょう」


「うんっ」


 葉月の答えに桜彩が喜んで首を縦に振る。


「よしっ。それじゃあ決まりね」


 桜彩の返事を聞いた美玖が嬉しそうに手を叩く。

 これで本日の予定は決定したということになるのだが――


「……ちなみに姉さん。俺の予定は聞かないの?」


 全くと言っていいほど蚊帳の外に置かれている怜が洗った皿を水切りラックへと片付けながらキッチンから声を上げる。

 少なくとも自分は美玖に今日の予定を聞かれた覚えは一切ない。


「ああ、気にするの忘れてたわ」


 怜の抗議に美玖は全く悪びれずに答える。

 この姉は弟を何だと思っているのか。

 そんな抗議を込めて美玖を軽く睨むが逆に美玖は


「冗談よ。なにか予定でも入ってるの?」


「いや、別に入ってないけどさ」


「なら良いじゃない。それじゃあ十一時くらいになったら出ましょうか」


「…………」


 もちろん怜としてもそれはそれで構わないのだがなにか釈然としないものを感じてしまうまま片付けを終える。

 何はともあれそんな感じで今日の予定が決まってしまった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 昼食は本当に美味しかった。


『季節の変わり目で体調を崩すといけないから体力をつけるわよ』


 という美玖の主張により、タクシーで向かったのはうなぎ屋だ。

 それも某ファーストフードチェーン店などではなくこの辺りでは老舗と呼ばれる名店。

 学生が気軽に入るには敷居が高いのだが、美玖にしろ葉月にしろ立ち居振る舞いは年齢以上の物をしているし、そもそもこの店は光瀬家にとって行きつけの為に何の遠慮もなしに入っていった。

 当然高校生がそう簡単に一食に出せる金額とは桁が違ったわけだが美玖と葉月は何の躊躇もなしに怜と桜彩の分の支払いをしてくれた。


「うーん。本当に美味しかったわね。怜のご飯も美味しいんだけど、やっぱりこっちに戻って来たらあそこのうなぎを食べなきゃね」


「本当にね。ここ何か月かご無沙汰だったから、久しぶりに味わったよ。ありがと、姉さん」


 自分の分を支払ってくれた美玖へと素直に頭を下げる怜。

 なんだかんだいってこういった所は確かに弟思いなのが美玖だ。

 怜も美玖もこのような贅沢をする際は基本的に生活費ではなく自分の財布から出すようにしている。

 生活に困らないだけのお金は両親から振り込まれているのだが、それでも基本的に無駄遣いはしないように心掛けている。

 それに自分で作る食事も美味しいのであまり外食もしない。


「確かに美玖が勧めるだけあって美味しかったわね」


「うん。とても美味しかったです」


「それなら良かった。桜彩ちゃんが美味しく食べてくれて嬉しいわ」


 桜彩の言葉に美玖が満足そうに笑みを浮かべる。


「それでこれからはどうするの?」


「もちろんこのまま帰るなんてことしないわよ。次は買い物!」


 美玖のその一言でショッピングモールへと向かうことにした。

 とくに目当ての物は無いとのことだがさすがに女性が三人ということもありウィンドウショッピングで盛り上がる。

 その三人共目を引く容姿をしている為、一人だけ男性の怜としては周囲の視線に多少の居心地の悪さを感じる。

 とはいえ怜自身も容姿が良い為に変なやっかみを受けることもなかったが。

 そのまま少しして、美玖が


「あ、怜。ちょっとあたしのプライベートの買い物に付き合ってほしいんだけど。守仁にちょっとね」


 という一言により、光瀬姉弟と渡良瀬姉妹で少しの間別行動することになった。

 怜としても守仁の為とあらば協力するのに何の文句もない。


「で、いったい守ちゃんに何を買うの?」


 渡良瀬姉妹と離れたところで怜が美玖へと問いかける。

 そもそも守仁に何かを買うのであれば、桜彩と葉月を外す理由もないだろう。

 不思議そうに問いかけるその怜の質問に美玖は答えず、逆に怜を真っ直ぐに見つめる。


「ああ、それは嘘。あの二人を遠ざける口実よ」


「嘘? 口実?」


「ええ。具体的に言えば桜彩ちゃんをね」


 美玖の答えに怜が疑念の目を美玖へと向ける。

 いったい何故そんなことをする必要があったのか。


「その前に怜、明日が何の日か知ってる?」


「は? 何か特別な事ってあったっけ?」


 記憶を掘り起こそうとしてみるが、特に何かの記念日などではなかったはずだ。

 怜の答えを聞いて美玖がやっぱりなと一人頷く。


「うん。予想通り知らなかったようね。明日は――――――――」


「えっ!?」


 美玖の答えに怜が驚いて、しかし少し考えてなるほどと頷く。


「だから買い物をするのは私じゃなくあなたよ、怜」


「了解。教えてくれてありがと、姉さん」


 確かにそういう事であれば桜彩のいる前で買うことは出来ない。

 なんだかんだ言ってそういう細かい気遣いが出来るのがこの姉だ。


「てか何で姉さんがそれ知ってるの?」


 そもそも怜ですら知らなかったそれを美玖が知っているのはおかしい。

 むしろ桜彩が自分に教えずに美玖に教えていたことに少しだけモヤっとしたものを覚えてしまう。

 そんな怜のリアクションに美玖は苦笑して首を横に振って


「葉月に教えて貰ったのよ。あなたと顔合わせしたら、明日一緒にってね」


「ああ、そういうこと」


「うんうん。いやあ、でも聞いていた以上に良い子だったじゃない、桜彩ちゃん。てなわけで今回の件はあたしも協力するわ。あなた一人じゃ買えない物にもなるかもしれないし」


「ありがと。そういう事ならお願い」


「もちろんよ。それで、何かアイデアでもあるの?」


「まあ実用的な物で一つ――――」


「――――なるほど。それは良いわね。それじゃあ早速行きましょうか」


 そして怜は明日の為に美玖と共に目当ての売り場へと向かって行った。

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