久しぶりの再会
探索を終えて、夕食を挟んでから夜にログインする。夜の探索の時間はあまりないので、空のマッピングだけを鳥型血液兵に任せてから、ザフキエルからの報告書を受け取って確認する。
「了解。取り敢えず、大きな問題がないなら良かった。この調子でお願いね」
「ええ、任せて頂戴」
ザフキエルがギルドエリアに戻った後、ルシファーが私の前に降りて来た。
「ハク。問題だ」
「何があったの?」
「西から手練れが来ている。ソロモンが防衛の準備を進めているが、その前にアーサー達円卓が前線を固めている。そういう状況だ」
「アーサーさん達が全員? そんなに人数がいるの?」
ガウェインさん、パーシヴァルさんを除いた円卓の騎士である皆が全員で待機するとなれば、それだけの脅威がいると考えられる。アーサーさん一人でも百人とかくらいなら余裕で倒せるはずだから、そのくらいの数がいるのかなと考えた。
「いや、一人だ。だからこそ問題って事だな。あれはハクとは異なる強さを持っているな」
「私とは違う強さ?」
「お前は様々なものが掛け合わさった力だが、あれは純粋に練り上げられた力だ。技術的な強さというところか。それと座天使の力も持っているな。そっちは大して脅威ではないだろう」
「だから、アーサーさん達も全員で出てるって事ね。分かった。私も行く」
【熾天使翼】を広げて、ソロモンさんが守っている開拓領域の西側へと飛ぶ。ルシファーも私の後に付いてきた。
話を聞く限り、相手はプレイヤーだ。だって、そもそもこの星に生き残っている人はいないだろうから。
一人でルシファーにも警戒されるような強さとなると、相当な強さだ。心当たりとして一人だけルシファーの言っている条件を満たすようなプレイヤーを知っているけど、本当にその人かは分からないので、ちゃんと確認しに向かう事にした。
ただのプレイヤーだったら、アーサーさん達に任せておけば大丈夫と思えてしまうけどね。
しばらく飛んでいると、城塞都市の先にアーサーさん達が立っているのが見えた。フル装備で並んでおり、エクスカリバーを地面に突き立てて、ジッと前を見ているアーサーさんからは、離れた場所にいる私でも分かる程の圧を感じる。
敵意というよりも、本当にただの威圧って感じだ。相手もそれを理解しているからなのか、距離を開けて立っている。その姿に見覚えがあった。
私は、アーサーさんの隣に着地する。
「アーサーさん、私の知り合いです」
「そうだったのか。それは失礼をしてしまったな」
「いえ、私の知り合いが来るとは誰も思いませんから。私も思いませんでしたし。ひとまず、警戒は解いて大丈夫です。ルシファーもだよ」
「ふむ。そうか。では、そう知らせて来よう」
ルシファーはそう言って飛んで行く。どうやら他の皆も警戒態勢になっていたらしい。悪魔や天使の皆かな。天使の皆と揉めないと良いけど。
「さてと、私は話して来ますね」
そう言って、私はこちらに来ていたソルさんの元に向かう。
「ソルさん」
「ハクちゃん。久しぶりだね。何か凄い威圧をされていたみたいだけど、ハクちゃんのギルドの人?」
「あぁ……えっと……そうと言えばそうなんですけど……プレイヤーではないですね」
「ん? 確かに……あれってNPC……え? あの人の実力って、ミカゲさんよりも上?」
「え? あぁ……どうなんでしょう。分からないですね。少なくとも私がまともに戦っても勝てないと思います。完全に力を解放したアーサー王ですので」
「ん? アーサー王?」
「はい。アーサー王です」
ソルさんは、かなり困惑していた。まぁ、唐突にアーサー王がいると言われても困惑するのは当然だ。他に説明のしようがないから、アーサー王と言うしかない。
そんな中でアーサーさんが、私達のところにやって来て兜を脱ぐ。アーサーさんの綺麗な顔が出て来て、ソルさんは更に困惑しているようだった。アーサー王を男性と考えていたのだと思う。
「アーサーだ。先程はすまない。敵と仮定して威圧してしまった」
「いえ、お気になさらず。知らない相手が来たとなれば、警戒するのも当たり前でしょう」
ソルさんはそう言って微笑む。私がいる事と私がアーサーさんの後ろから飛んできた事から、この先にあるのが私の開拓領域で、そこを守っているのだと気が付いたみたい。
「あれ? 皆はどうしたんですか?」
「ああ。ランスロットに指揮を託して、領域の見回りに戻らせた。ここに人が来たという事は他の方角からも来る可能性があるからな」
「なるほど」
こういうところの判断の早さは、王様としての経験が活きているって事なのかな。
「んん? もしかして、円卓の騎士が揃っているの?」
「一応、そうですね。あれ? そうですよね?」
「円卓に入っていた騎士全員という訳では無いが、席に着いていた者は揃っているな」
「だそうです。色々と事情があって、皆はエインヘリャルとして喚び出した形って言っても分からないですよね」
「ヴァルハラ?」
「おぉ……そうですね。ヴァルハラのエインヘリャルです」
まさかエインヘリャルでヴァルハラまで繋がるとは思わなかった。ソルさんの知識はかなり広範囲みたいだ。
「取り敢えず、私の領域内にどうぞ。ここまで来るのにお疲れでしょうし、歓迎しますよ」
「城塞都市か?」
「いえ、中央の私の屋敷まで招待しようと思います。その方が皆も分かりやすいでしょうから」
ソルさんが客人だと分かりやすく知らせるために、私の屋敷まで招待する。開拓領域の中枢にまで連れていくという事で私のソルさんへの信頼度を皆に知らせる事ができる。
「良いのか?」
アーサーさんは再度確認する。その理由は想像に難くない。私が信用しているという事が、そのままアーサーさんが信用するという事には繋がらない。ある程度は信用していても、中心部に招く程まではという感じだ。
「はい。ソルさんは私だけでなく、フレ姉の知り合いでもありますし、そのくらい信用はしていますから」
「なるほどな。では、そこまで送ろう」
「ありがとうございます。エレク」
エレクを呼ぶと、すぐに私の元にやって来た。エレクを撫でてあげてから、アーサーさん、ソルさんと共に乗る。アーサーさん、その後ろに私、その後ろにソルさんという順番で乗った。
エレクを操作するのは、アーサーさんだ。まぁ、私が指示を出したら私の指示通りに動くのだけど。
そうして、中央にある私の屋敷に向かって移動を始めた。




