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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
東方の守護者の吸血少女

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神々の女王

 二人に連れられて移動していくと、大きな神殿の前に着いた。二人がそのまま中に入っていくので、一応入口の前で軽く頭を下げてから後を追っていく。二人に追いついたら、アテナさんに頭を撫でられた。私を見ずに頭を撫でているので、撫でる上級者なのかもしれない。

 神殿の中は、思ったよりも複雑になっていた。何となく簡素な造りなのかなと思っていたから、ちょっと意外だ。二人は迷わずに神殿の中を進んでいく。そうして着いたのは、一つの部屋の前だった。


「ヘラ様。アテナです。ヘスティアともう一人紹介したい子を連れてきました」

「入りなさい」


 中から声が聞こえたところで、アテナさんが扉を開ける。ヘスティアさんが先に中に入って、アテナさんが続くように促すので、ヘスティアさんの後に中に入った。すると、中にはアテナさんに負けないくらい美人な女性がいた。彼女がヘラさんらしい。ヘラさんは、テーブルでお茶を飲んでいた。その傍には、これまた綺麗な女性が立っている。メイド服を着ているところを見るに、ヘラさんの給仕をしている感じかな。


「あなた……なるほどね。アテナとヘスティアが紹介したいというのは、神に成り立ての例の子という事ね」

「正解! ほら、ハクさんも挨拶して」

「初めまして。ハクと申します」

「主神ゼウスの妻ヘラよ。せっかくだから、席に着きなさい」

「あ、はい。失礼します」


 ヘラさんが座るように促すと、傍にいた給仕係の神様が正面の椅子を引いて座るように促してくる。


「ありがとうございます」


 お礼を言ってから席の前に立つと、椅子を押してくれるので、ぴったりのところで座る。ヘスティアさんとアテナさんも同じように席に着いた。そんな私達に給仕係の神様は、お茶を入れてくれる。そうして目の前に置いてくれるので、頭を下げてお礼を言う。お茶は、紅茶のようなものだった。良い香りがする。

 皆にお茶が配られたところで、ヘラさんが口を開く。


「何というか変わった子ね。まさかとは思うけど、あの人の隠し子ではないわよね?」


 ヘラさんが私を睨んでくる。あの人というのは、ゼウスさんの事かな。会った事もないので、手を横に振りながら首も横に振る。


「いえ、私はどの神様の子でもありません。ただの人……いや、吸血鬼です」


 初期スキルが【吸血】だったので、最初から人ではなく吸血鬼だっただろうと思い、途中で言い換えた。


「まぁ、そうみたいね。色欲、暴食、嫉妬かしら。大罪持ちの神というのもどうかと思うけれど」

「あははは……」

「その色欲は誰に向けたものなのかしら?」


 また鋭い目線が私を襲う。滅茶苦茶何かを疑われている。多分、ゼウスさんの浮気かな。そういえば、ギリシャ神話でのゼウスさんは浮気不倫しまくりの神様だった気がする。さすがに、それを疑われるのはキツいので、これも否定する。


「恋人に向けたものですね。証人は、ヘスティアさんがいます」

「うん。ハクさんの言っている事は嘘じゃないよ。周囲から好かれやすいけど、本人は一人しか愛してないから。浮気とかもする気はないから、迫られてもぶん殴って追い返すんじゃないかな」

「そう」


 ヘラさんの目は変わらない。割と面倒くさいタイプの人かと思ったけど、同じ立場なら私もそうしてしまう可能性がないとも言い切れないと気付き、自分も面倒くさいのではと考えてしまった。


「ヘラ、よく考えてみて、色欲だけじゃなくて、嫉妬も持っているんだよ? つまり、この子もヘラと同じで嫉妬しちゃう子って事。似たもの同士仲良くね」


 ヘスティアさんが無理矢理な説得を試みていた。さすがに、それで納得はしないのではと思ったのだけど、ヘラさんは目付きが少し柔らかくなった。

 そんなタイミングで、私の前にだけケーキが置かれた。何故と思って給仕係の神様を見ると、ニコッと微笑んでヘラさんの傍に移動した。


「いただきます」


 さすがに出して貰ったものを食べないのは失礼になるかなと思い、ケーキを食べる。シンプルなショートケーキだったけど、物凄く美味しかった。これはハマってしまうかもしれない。


「美味しいです」


 素直に感想を言ったら、給仕係の神様は笑顔で応えてくれた。


「この子は、私の娘でヘベよ。あなたが気に入ったみたいね」


 そう言うヘラさんは、さっきまでとは変わって優しい雰囲気になっていた。娘さんであるヘベさんが私に気を許したからか、私にも気を許してくれたみたいだ。

 このままいけば、ヘラさんも物腰柔らかくなってくれると思っていると、急に部屋の扉が勢いよく開いた。入ってきたのは、筋骨隆々で髭を貯えた神様だった。


「むっ、アテナとヘスティアも居ったのか。ん? 其奴は誰だ?」

「あっ、初めまして。ハクと申します」


 取り敢えず、自己紹介しておく。私の名前を聞いてから、何かを考え始める。私の名前に覚えがあるか考えているってところかな。


「知らん名だ。我はゼウス。名前を聞けば分かるな? ふむ……」


 ゼウスさんは、ジロジロと私を見てくる。物凄く嫌な視線だ。だけど、それ以上に怖い事がある。正面に座っているヘラさんの視線だ。てか、ヘラさんが目の前にいるのに、何故こんなに堂々としていられるのか分からない。


「ふむ。我の神殿に来るが良い」

「あっ、お断りします」


 長い沈黙が流れた。まさか、即答で拒否されるとは思っていなかったみたい。ヘスティアさんとアテナさんも頷いていた。普通に神殿に誘われた可能性もあったけど、二人の様子からそうではないと分かる。神殿に行けば、ヘラさんの目から離れた場所になるからって事かな。


「逃げられると追いかけたくなるのが本能」

「そんな事言っているとヘラさんにも逃げられてしまうのでは?」


 再び長い沈黙が流れていった。何か心当たりでもあるのか、ゼウスさんも黙ってしまっている。ヘラさんに逃げられた経験があるって事だろう。まぁ、あれだけ嫉妬深い神様だから、愛想尽かす事も無くはないのかな。ヘラさんのストレスが心配だ。


「私に浮気をする気はありませんので」

「な、なら、そういう事なしにお茶をするというのはどうだろうか?」

「ヘラさんやアテナさんとかが一緒でしたら良いですよ」


 そう言うと、ゼウスさんは肩を落としていた。さすがに、堂々と浮気宣言するのはどうかと思う。まぁ、フレイヤさんも似たようなものだったけど、嫌悪感の違いは何なのだろう。人の事を品定めするような目で見てきた事かな。フレイヤさんの場合、最初は、私がどういう意図で行動しているのかを知ろうとしてくれていたし。


「そ、そうか……なら、ここに加わるとするか」


 ゼウスさんがそう言う前に、ヘベさんが椅子を用意していた。そうして、お茶会にゼウスさんが加わった。ヘベさんは、椅子をヘラさんの横に用意したので、私の両隣にはアテナさんとヘスティアさんがいる。これで一安心だ。

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