特典17「俺と一緒に死ぬ覚悟はあるか?」
-----
今日は朝の朝礼以降、3時間目まではやることがない。
グレイも同じようなので教室に2人っきりだ。
窓際で読書をする王太子殿下とは絵になるものだ。
「なんだいシスコン。視線が気持ち悪いぞ。」
「グレイ、この際だから1つ言っておく。
俺にシスコンは褒め言葉だ。」
「はあ・・・で、なんの用だい?」
「そういやグレイと2人だけってのは初めてだなと思ってな。」
「たしかに。
それじゃあこの際だし、普段聞けないことでも聞こうかな。
君の論文を読んだのだが、一体いくつまで魔法を同時に発動できるんだい?」
あら鋭い。
あの『魔法考察』の発表以降、腕と同じ2つまでしか出来ないというイメージを植え付けていたというのに。
授業や『魔法学会』の質疑応答でも、イグリード先生にもこの質問はされていない。
うまくごまかせていたと思っていたのだが。
「まあぶっちゃけ魔力で魔法陣を描くだけだしな。
魔力と脳が追いつく限りは魔法陣なんていくらでも描けるぞ。」
『二重思考』や『思考速度上昇』によって上限が増やせるということまでは言わないでおこう。
あとは想像に任せる、というやつだ。
「つまり補助魔法の複数がけはもちろん、攻撃魔法や混成魔法もお手の物というわけか。
相変わらず規格外なやつだ。」
「まあでも、そこまで聞いておいてステータスを見せろとは言ってこないんだな。」
「見たい気持ちはあるけどね。
この世界のステータスは最大の個人情報だ。
友人以上の関係になって初めて見れると思っておいたほうがいいぞ。
以前見せた僕のステータスも、一部は隠蔽していたくらいだ。」
ステータス隠蔽スキル持ってるのかよ。
いや、持っている内部の人に隠してもらった可能性もあるか。
そういえばリンリンのも弟子入りの適性確認ということで見せてもらったな。
あれは弟子は友人以上ということでセーフなのだろうか。
「まあ僕らみたいに同性ならともかく、異性相手にステータスを見せてもらうというのはなかなかね。
相手の秘密を教えてくださいと言っているようなものだ。
これがどういうことかは言わなくても分かるよな。」
ゴンッー
思わず机に頭をぶつけてしまった。
リンリンが俺を意識している理由はそれか。
知らなかったし適性確認だったとはいえ、悪いことをしたな。
「それで、見せてくれる気になったということかい?」
「俺と一緒に死ぬ覚悟があるのなら見せるぞ?」
「逆に気になるわ。だけどまあ立場上、生きねばならないので遠慮しておくよ。」
だろうな。
最近ようやくグレイという人物が分かってきた気がする。
良い意味でも悪い意味でも、他人と一線を引く奴なんだ。
将来のことを考えたら分からなくもないけどな。
ようやくできた友人としては少し寂しいものがある。
「さて、まだ1時間以上時間もあることだし、昨日のアスレチックに挑んでもいいかい。」
そして負けず嫌いで、努力家な奴だ。
-----
授業も終わり、お昼。
いつもの4人で集まり他愛のない話しで盛り上がっていたのだが、来客があった。
『魔法考察』の授業後に魔力で魔法陣をかく練習をしていた先輩だ。
午後はオフなので時間があればまたお願いしたいとのこと。
たしかに授業はないんだが・・・。
リンリンに視線を送ると、少し寂しそうな顔をしながらお弁当に視線を落としていた。
「申し訳ありません、先輩。
毎週火曜日の午後は大事な先約があるので。
火曜日と木曜日の1〜2時間目でしたら空いているので、その時間でよろしければ。」
「そうか、分かった!
無理言ってすまなかったな。また木曜日の朝に出直すとするぜ。」
そういい手を挙げながら去ってゆく先輩にお辞儀をして見送り。
リンリンに視線を送ると顔を真っ赤にして俯いていた。
この子もサクヤ並みにわかりやすいなあ。
「あれ、タクミ。今日のお弁当は昨日よりもなんだかヘルシーに見えますね。」
座って愛妹弁当のふたを持ち上げたとき、リズが覗き込んできた。
続いてリンリンも覗き込んできた。
まあ昨日の今日で牛牛牛牛弁当にされても胃がもたないからな。
野菜多めで頼むと昨晩のうちに伝えておいたのだ。
「ロールキャベツ・・・ピーマンの肉詰め・・・回鍋肉。」
「今日はビタミンB1の日か、妹よ。」
豚豚豚ァ!と言いたいところだが、育ち盛りだからな。
野菜が入っていれば良いというわけではないのだが、俺は妹の愛を全て受け入れる寛容な兄なのだ。
正直タコさんウインナーで充分なんだが、作ってもらっておいて文句は言うまい。
「毎日バランスよく摂るものであって、短日短日で大量に摂取すればいいというものでもないんですけどね・・・。」
「諦めろリズベット。このシスコンの脳内では愛情が1番の栄養だ。」
よく分かってきたじゃないかグレイ。
無言でサムズアップを向けたらため息をつかれた。
なんでだ。
だがまあロールキャベツがコンソメ味でめちゃくちゃあっさりしていたので、昨日ほど胃がやられなかったのは嬉しい誤算だ。
妹もなかなかに腕をあげてくれてお兄ちゃん嬉しいぞ。
-----
昼食を終えて教室へ。
午後の授業もないので、約束通りでかけるとしよう。
カバンを持ちリンリンのもとへ。
「よし、行くか。」
「あら、今日は2人でどこかへおでかけですか?」
「うん・・・魔法の勉強。」
「まあ、楽しんできてくださいね。わたくしは授業があるので、これで。」
リズを見送り学院を出て、街へと移動。
なかなか買い物以外でこっちには来たことないんだよな。
これを機に開拓してみるか。
「正直あんまり街の方に来ないんだ。
だから色んなところを回ってみたいんだが、いいか?」
「うん・・・タクミと一緒なら・・・どこでも行く。」
「そういえば呼び方、いつの間にかタクミになってるな。」
ふと気になったから言ってみただけなのだが、リンリンは顔を真っ赤にして俺の腕をポカポカ叩いてきた。
なにこの可愛い生き物。
全然痛みはないんだけどびっくりしたわ。
ひとまず最初に目についた魔導書店に入ることに。
魔法学会で出てきそうな論文や、単純に魔法の詠唱と効果が記載されているものなど。
魔導書と言っても色んなものがある。
ラノベや漫画、専門誌みたいなイメージだ。
ふとリンリンを見ると、何かの本を開いて読んでいた。
「何読んでるんだ?」
「魔法の形状変化について・・・。
特訓の足しになればと思った・・・。」
形状変化か。
これに関しては水球を作る時をイメージしてほしい。
小さい球と大きい球を作る際、どちらの形状のほうが魔力が多く必要か。
そして、完成までにどちらのほうが魔力を込め続ける時間が長いか。
とまあ簡単に言えば魔力の込める量と時間が肝となるのだが、今リンリンが特訓しているのは『形状を作ること』であって変化させることではない。
イメージ通りの形を作り出す力さえつけば、この子の潜在能力なら一気に化けるだろう。
これは自分が気づかなければ成長につながらないから言うつもりはないけどな。
まあでも手助けくらいはしてやるか。
なにか良さそうな本は・・・お、あった。
中身は・・・よし、問題ないな。
「こっちのほうが今のリンリンには必要だと思うぞ。」
「論文苦手・・・でも、読んでみる。」
『魔法をイメージすることの大切さ』という本をリンリンに見せ、受け取ろうとした手を無視して会計へ。
これくらいは買ってやらんで何が師匠か。
「それくらい・・・いいのに。」
「まあ弟子入門祝いってことで。」
「ん・・・そういうことなら受け取る・・・ありがとう。」
本を受け取りながらの、嬉しそうな笑顔にドキッとさせられた。
いつもはあまり表情を面に出す方ではないのに、こういう時改めて女の子なんだなと思い知らされるな。
そのあとはゆっくりお互いのことを知ろうということで、飲み物だけ購入してそのへんのベンチに座った。
リンリンは三女なのだそうで、魔法使いとして就職するかどこかに嫁に行くかくらいしか選択肢がないようだ。
その選択肢の狭さは俺も7人兄弟の5番目だったからよくわかる。
元は田舎の貴族で没落して平民に落ちて王都へやってきたことで今に至ると説明したところ、長男かと思っていたとのこと。
まあ実家のことなんて滅多に話さないしな。
リンクス家は冒険者ギルドの他にも商業者ギルドも管轄しているようで、姉2人は商業者ギルドで働いているらしい。
家のことは弟が生まれたことにより家督などはそちらが受け継ぐということで、働きながらも好きに生きているそうだ。
とはいえ家族の中で父親と自分だけが『魔法神の加護』を持ってしまっているようで、なかなかに苦労が絶えない。
相談できる相手は毎日とても忙しそうな父親だけなので、こうして気軽に相談や特訓に付き合ってくれる俺が本当にありがたいと思っている。
とまあ得た情報はこれくらいだな。
「今度はタクミの番・・・ステータス・・・見せてほしい。」
今朝のグレイとの会話もあり、かなり面食らってしまった。
俺が驚いた顔をしているのに気づいたリンリンは徐々に顔を赤くしていった。
「そういう・・・意味じゃない・・・じゃなくもないけど。
弟子として、師匠の・・・中身が気になる・・・気持ちのほうが強い・・・たぶん。」
「グレイにも同じことを言ったんだが・・・。
俺のステータスを見るということは、全てを知るということだ。
俺と一緒に死ぬ覚悟はあるか?」
「・・・・・・・・・ある・・・。あります!」
「『気配遮断結界』。
『ステータス隠蔽』解除。
ステータス・オープン。」
ーーーーー
タクミ・イスタル 14歳 レベル142
職業:学生、魔法学会議員、Bランク冒険者
称号:女神の寵愛を受けし者、五柱の使徒、魔法神の寵愛を受けし者、魔法神の弟子、超シスコン、魔法学者、帝級魔術師、魔法講師
HP 98291 MP 7645812
スキル:
女神の寵愛 10
魔法神の寵愛 10
魔法神の加護 10
武神の加護 7
創造神の加護 7
商業神の加護 5
技能神の加護 5
武術 7
体術 7
剣術 5
槍術 2
弓術 2
魔法耐性 10
火属性魔法 10
水属性魔法 10
風属性魔法 10
地属性魔法 10
スキル創造 7
ーーーーー
そこから下はゆうに300を超えるスキルの羅列だ。
スクロールしてもしても一番下までなかなかたどり着かないからな。
今なんのスキルを所持しているか忘れるときもあるくらいだ。
「・・・世界最強・・・だね。
なんか・・・色々納得。
死の覚悟を問われた意味が・・・よく分かる。」
俺のスキルを次々とタッチして確認しながら頷くリンリン。
本人は無意識というか俺のステータスに夢中で気づいてないのだろうが、俺の膝の上にちょこんと座って操作するのはやめてほしいものだ。
サクヤよりちんまいから重さは感じないのだが、恥ずかしさは感じるんだぞ。
「まあこんな感じだ。
分かってると思うが他言無用だぞ。」
「うん・・・当然。
こんなの・・・知ってるだけでも・・・やばいのに。
でも・・・これで同罪。」
フフといたずらっ子のように笑顔を向けてくる。
そのまま自分の身体を預けるように寄りかかられた。
「いっぱい魔法・・・教えてね・・・ついていくから。」
「おう、任せろ。」
頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。
1番弟子は妹と同じくらい甘やかされるのが好きらしい。
普段の無表情だったり、残念系妄想乙女とはまた違った一面が見れた1日だった。
ブックマーク登録ありがとうございます!
更新してない時間帯にも最近では読んでくださる方が増えてきたように思います。
本当にありがたいことですね。
皆様に楽しんでいただけるよう精進してまいります。
少しでも楽しんでいただけたらブックマーク登録や★評価などしていただけたら嬉しいです。
応援よろしくお願い致します!




