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ヒューマンカインド/Brightness of life  作者: 猫山英風
第2部 友情 ―第1章 最初の一歩―
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第21話 チーム?(4)

自動投稿ができていませんでした。申し訳ありません。


「ここで俺が能力を使用すれば、間違いなくこのフィールドのオド残量は減ってしまう。」


和田は自分の肩に乗っている猫を下ろしながら言う。


「君たちの能力は刀を生成する『複合創造』、体表面を鋼のように固くする『硬質化』、遠方の音を聞き分ける『獣耳:識別能力』、そして特秘能力『精神に関わる能力』と『召喚能力』だ。

 大原さんの能力は分からないが、山田さんの能力以外はそこまでオドの消費量は多くない。だからここで俺が力を使えば影響がでるのは味方(こっち)だけ。それはよくない。」


彼は猫を全員優しく下ろすと、自分の前で膝をつく人物を見据えた。


「君達の中で戦闘が出来るのは吉岡と高木のふたり。大原さんと足立さんの二人は……様子を見る限り今回の試合では何もしないつもりなんだろう。大原さんはともかく、足立さんは井上と()()()()ができたら大分厄介だったが、それはなさそうだ。」

「……」

「そうなると試合開始と同時に、吉岡達はこちらの戦闘型ダイバーズである工藤先輩と咲の元に向かうはずだ。だから、能力が使えなくなった俺の元に来るのは……

山田さん、君だ。」


 山田は汗をぬぐい、笑った。それは自分より格上の相手を前にして高揚したのではない。


(――完全に考えを読まれていた。)


自分だけで(・・・・・)できる最善手を選んだ結果、それがほとんど通用していなかったことに、愕然とした自嘲であった。


「やっぱりあたしの能力じゃ、戦えない、か……」


 現状は山田にとって、召喚能力は戦えない能力だと、明確に突き付けられたようなものだった。和田が能力を使用しないと分かった今、彼を戦闘不能にするにはタイマン勝負で事足りる。故に山田は持てる武術を駆使して彼に挑んだ。


(相手も同じ召喚能力者。であるならば、能力が使えない戦闘なら同じ手段をとるしかない――)


そう彼女は考えた。


 だが、和田は武術など使わなかった。


「忘れたのかい?()()()()()()()()。」


 彼はあるものを背に隠し持っていた。それを彼女が間合いに入ってきた瞬間、ためらいなくわき腹めがけて叩きつけた。

 山田は彼の手に握られているものを見て、唇を噛んだ。彼の手にあったのは、美しい桜色の『盾』だった。


そう。彼の能力(召喚能力)ではない、()()()()によってできたものだった。





 一瞬であった。

山田が召喚体を創りだすその刹那の間に、勝輝は工藤との間合いを詰めた。


(『俊足』と『硬質化』の同時攻撃をされると防備に徹するしかない。だからその前に――)


「倒す!!」


長刀の繰り出した神速の薙ぎが、工藤の胴に炸裂する。

だが――


「これは――」


刀は、その薙ぎによって粉砕した。しかも、当たったのは胴ではない。桜色に輝く円形の盾が、工藤の前にできていた。


「――障壁盾(スクートゥム)!!」

「忘れたのか?これはチーム戦だぞ?」


工藤はそういうとその盾を持って勝輝に突進する。


「ぐっ!」


 間一髪。『俊足』を使用したその突進に、新たに創った刀で衝撃を緩和し、彼は宙へと飛び上がる。


「今のでライフポイントを5は削ったな。」


 勝輝が着地するのを見届けてから、工藤は盾を背負って言い放つ。


「一人で突進してくるたぁいい度胸だが、全くもって戦術がなってねぇぞ?」

「……別に、構いません。あなたを倒すことが最優先だ。」


 その言葉を聞いて、工藤の顔から笑みが消えた。代わりに浮き出てきたのは、失望したと言わんばかりのあきれ顔。彼女は自分の思い描いていた、望んでいた試合ができないと悟ると大きくため息をつき、そして小さく舌打った。


「つまんねーな。」


 工藤はぶっきらぼうに勝輝に背を向ける。


「旗をとるのはやめて戦闘で勝敗をつけようと思っていたが、こりゃ旗取っちまったほうがいいんじゃねぇか?」

「戦闘中に、後ろを、見せるのか!!」


 勝輝はその無防備な背中に向かって走った。刃を振り上げ、彼女の防具に向かって振り下ろす。だが――


「はいはーい、吉岡君、そこまでー!」

「!?」


その刃は、またしてもけばけばしいピンクの盾によって弾かれた。


「私も戦闘タイプ――まぁ、防御全振りだけど――なんだから、忘れてもらっては困るなぁ~」

「……オドの凝縮能力、『障壁盾』を創るダイバーズ、ですか。」


目の前に現れた小平を、勝輝は睨み付ける。


「わわ!怖いなぁ、もう。私、一応女の子だよ!?」

「……どいていただけませんか?小平先輩。」

「いやぁ、それはちょっとできないかなぁ。だって()()()()()()()()()()()()()()()だから。」

「それはつまり――」

「ああ。オレが相手すんのはお前じゃねぇ」


 工藤は振り向かなかった。己の前に立つ男をじっと見つめて、彼女は笑みを浮かべる。


「最初に宣言しただろ?今回勝負するのは、()()だよ。」

「それは……光栄ですね。」


 高木は黒く染まった両腕を顔の前に出し、構えを取った。


「では、いざ尋常に――」

「勝負!!」



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