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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第19話 要塞陥落

ちょっと予定が入ったんで、予定より早い時間の更新になりました。すいません!

「お、お前たちはいったい何者なんだ……?」


 解放されて、ようやくひと心地がついたナリアルが聞いてきた。


「しかもあの森から要塞までの距離は相当なものじゃないか……。それをわざわざ……。もう、わからないことが多すぎる! すべてが夢のようだ!」


「俺たちは、正義の使者……かな? いや、自分が正義って名のったら気持ち悪いな。力をいいほうに使おうとしてる連中?」


 モンスターに接すれば接するほど、根本のところで人間と違いなんてないし、もうちょっといい関係は築けそうな気がする。


「俺たちがいきなり魔王のところに行くのはやりすぎな気がして、ちょうどやってきたあんたをメッセンジャーにでもしようかって思ったんだけど、こんなことになったのは俺の見当違いだ。悪かった」


 ちなみになんで直接魔王のところに行くのが嫌かというと、それって傲慢すぎると思うからだ。


 俺は力があるから従えって言うのは、魔王軍の論理とまったく同じだ。

 武力で服従を迫るだけじゃ、俺がいなくなったら、また戦争になる。


 けど、これは理想論的すぎたのかもしれん。


「また、あんたが魔王のところに報告に行って、明らかに処刑されそうな流れになりそうかな? だったら今のうちに言っておいてくれ。俺たちのほうでやんわりと勧告する方式に切り替える。あんたの居場所がないようなら、こちらで匿う」


 こっちもナリアルを利用してしまった手前、最低限生存権ぐらいは保証したかった。


「それにはおよばない。魔王様は実に聡明なお方だ。必ず、私の真剣な言葉には耳を傾けてくれる」


 そのナリアルの声にはある種の確信が含まれていた。


 王と将軍の間に信頼関係が築かれてるとしたら、そんなに悪い状態ではないな。ドルディアナ王国も苦戦するはずだ。


 シュリが手や足に残っている鎖をすべてとりはらって、自由にしていた。

 今になって思えば最初に俺のそばにいてくれたのがシュリでよかった。ヴィナーヤカだったら、徹底的に翻弄されていたと思う……。


「だったら、あんたにすべてお任せする。繰り返すけど、俺は王国サイドの人間じゃない。王国と魔王軍側のもう少しいい関係を模索してる者だ」


 平和になれば、俺たちに難癖つける奴も現れないだろうからな。


「わかった。どのみち、お前たちの正体や目的が何であろうと、その存在を度外視することはできん。必ず魔王様には報告することにする」


 この女剣士は理知的ではあるから、ちゃんとわかってくれればあとは早い。


「それから……これは剣士の義務として伝えておかねばならないと思うのだが……」


 なぜか急にナリアルの態度がそわそわしたものになった。

 いったい、何だ……?


「今回、命を助けていただいたことに……感謝の意を表する……」


 ナリアルは俺の手をとると、


 そこに小さくくちづけした。


「へ、へえ……こういう文化なんだな……」


「ゴーウェン、あなた、顔が赤いわよ」


 シュリが冷たい顔で言った。

 そりゃ、赤くもなるだろ。日本は家族でキスをするような習慣とかないし。


「なんか、男って力があると、無自覚でも女をはべらすのよね。ハーレムを作ろうって習性があるみたい」


「習性って俺はトドじゃないぞ……。しかも、愛されてる?のはヴィナーヤカだけだろ……。あれだっておちょくられてるだけみたいなもんだし……」


「そうね、そういうことにしとくわ」


 なんで、こいつは俺のことが好きでもないのに、ほかの女と近づくとイライラするのだろうか。


 ああ、でも、自分の男友達が目の前で女とイチャイチャしてたらイラっとするな。

 自分の女友達(ほぼ皆無だが仮定として)が男とイチャイチャしてても、やっぱり楽しくないだろう。


 だとしたら、シュリの反応は普通だ。


「おい、何か勘違いしているようだが、私が恥ずかしかったのは、くちづけではなく、お前に礼を言う部分だぞ……? くちづけに関しては付随する行為でしかない……」


 デスヨネー。


 そんなにフランクにキスする文化で、そこに重要な意味をつけてるわけはないもんな。


「と、とにかくだ! 礼は言ったからな! それでこの貸し借りは消滅した! 今のお前は敵でも味方でもな……むしろ、基本的には私の侵攻作戦に大きな修正を迫った敵だ!」


 デスヨネーその2。


「ということをよく理解しておけ! 本当だからな!」


「うん、肝に銘じておく」


 なにやら、上(ここは地下二層だ)から騒ぎ声が聞こえてくる。

 この場合200パーセント、ヴィナーヤカによる功績だと思うので、犯人は明白なのだが、問題は行為のほうだ。

 要塞の守備兵を全員虐殺したとか、そういう血生臭いのはやめてほしいんだけど、大丈夫かな……。


 あと、ここに守備兵が入ってきても面倒だなと思ったが、幸い、そういうことはなかった。


 むしろ、その前にヴィナーヤカが、車酔いしたような顔のドレイクのバディアを連れて、戻ってきた。


「お待たせいたしましたわ」


「ちなみに何をした?」


「外に出ればすぐにわかりますわ。きっと、みんなパニックでわたくしたちを気にかけるどころじゃありませんし、出てみましょう」


 すごくいい笑顔でヴィナーヤカは言った。

 本当に自由奔放な神格だ……。


 壁が倒れていた。

 別にベルリンの壁が崩壊して冷戦が終結したとか、そういう意味ではない。


 要塞を覆っていた分厚い城壁がすべて外側に向けて倒れていたのだ。


 ドミノを作ってる最中に地震が来ちゃったよーとでもいうようなノリで。


 要塞にしても城にしても外側の城壁というのは、カニの殻みたいなもので、城における最重要部分である。


 それがすべて倒れているのだからパニックにもなるだろう。


 穴が一箇所空いたとかではない。

 全部倒れている。

 壁としての機能を失っているのだ。


 つまり、要塞としての意味もほぼ失った。


「ほら、今はやりの壁ドンというのをやってみましたわ」


「はやりなのか……? ちょっと時期ズレてるような気もするし、壁のほうを倒すことに主眼置いた行為じゃないと思う……」


「ステータスを見せても信用しないから、壁を倒して、その壁を実際に触ってもらおうと思いましたの」


 その結果が燃え尽きたようになっているバディアというわけか。


「難攻不落とうたわれた要塞が……」


 見事に理解を超えるものを見せてしまったということらしい。

 もう、バディアは抵抗の意思も何も示してない。


「一応聞いておくけど、もう戦わないよな?」

「仮にここでお前たちを殺しても、要塞が崩壊したのだ……。責任をとらされて処刑される……」

 ああ、今の責任者はこいつだったのか。まあ、ドレイクなんだし空飛んで、どこへとでも逃げてくれ。


「じゃあ、ナリアルさんだっけ、混乱してるうちに魔王のところに行ったほうがいいわよ」


 いつでも冷静なシュリがナリアルに提案した。


「それもそうだな。必ず、このことを魔王様にお伝えする」


 厩舎から、いかにも気性が荒そうだがその分体力のありそうな馬を選ぶと、ナリアルは北へと駆けていった。


 ミッションはクリアしたな。

 俺たちもホームに戻ろう。

 要塞は北だから、寒い……。

次回、女騎士ナリアル編の後日談です。

その次から新章の魔王マルファ編に入ります。

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