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ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第二章 ツッコミはある日突然に2
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第14話 春に友達できないとけっこう厳しいよね

 昨日の夜からなんでか仲の良くなった悠とルーナ、楽しそうに会話をしている。そんな2人の後ろを僕は奏音ちゃんと歩いている。なかなか珍しい登校風景だ。悠に会う前までは毎日1人で登校していたというのに、今は4人で登校。これが『普通』になることがたまらなく嬉しい。

「昨日さ、リアルな夢を見たんだよ」

 僕が隣で歩いている奏音ちゃんに話しかけると奏音ちゃんはケータイに目を向けたまま返す。

「リア充になった夢を見たんですか?」

「いや、違う。ちょっとそこらへん曖昧だからそれは言わないで!」

「彼女いて、女の子に囲まれてる生活送って。先輩がリア充じゃなかったら、この世のリア充はみんなリア充じゃないと思うぞ?」

「た、たしかにどこのギャルゲーだよって自覚はある」

「あ、あるんだ。なら爆発したら?」

「母みたいなことを言わないでよ!? そんなことより夢の話したいんですけど」

「まぁ、だいたい想像つきます、えっちな夢をみたんだな! 彼女の妹、しかも高校の後輩にそんな話をするつもりか?」

「違うからね!? そもそもそんな夢を見たら誰にも話さないで自分の中に大切にしまっておくから!」

「あ、今日の運勢はねーさんが一番だ」

 華麗にスルーする奏音ちゃん

「えーと、僕の話は?」

 おそらくケータイで今日の運勢でも確認していたのだろう。ようやくケータイから目を離してくれた。

「夢でしたっけ? どんな夢を持ったんだ先輩、夢は起きてみるものだぞ?」

 いるだけで部屋の温度が5度程上がりそうなテニスプレーヤーみたいなことを言いだす奏音ちゃん

「うん、そっちじゃないかな、ところで悠の誕生日っていつ?」

 考えたら悠の誕生日知らないや、彼氏として誕生日はしっかり祝わないといけない。

「ちなみに私の誕生日は5月6日だ、楽しみにしちゃっていいかな!」

「あぁ、美佳の3日後だっけ? って違う違う、僕が訊いてるのは悠の誕生日!」

「本人いわくキュートの日、だそうですよ?」

「キュート? たしかに可愛いけど。あぁ、9月10日? 僕の8日後だ」

「さりげなく自分の誕生日をワタシに伝えるあたり、先輩さすがだな!」

「はっきり伝えた奏音ちゃんには言われたくないかな!」

 それで、と奏音ちゃんは続ける

「夢の話でしたっけ? まったく、先輩と話しているとわけのわからない方向に話しが脱線するからなかなか進まなくて困る……」

「まるで僕が脱線させてるみたいな言い方だけど、ほとんどは奏音ちゃんだからね? とまぁ、ホントに本題に戻すけど。昨日の夜起きた夢を見たんだ、そしたらルーナが窓際に立ってて」

「『夜に起きた夢』ってなかなか面白い言葉ですね。起きてるのに夢だなんて」

「そう、だね。夢の中で起きたら現実なはずだよね?」

「なんか難しい話しになりそうだ」

「って、ほら。また脱線した。ルーナがね夢でまるでどこかに行くかのようなことを言ってたんだ、でも起きたら普通に隣で寝てるし」

 奏音ちゃんは人差し指を頬に当て『考えてるよ!』のポーズをとる。

「ふぅむ。それは本当に夢なのか?」

「と、言うと?」

 奏音ちゃんは腕を組み、『考えてるよ!』のポーズから『めっちゃ考えてます!』のポーズに移行する。

「そのルーナ先輩の話し方がもし普通の先輩だったとしたら、直す方法が分かるかもしれないんだけど……」

「マジで!? いつものルーナの口調だった、なんて言うか、僕から一歩引いたような、そんな話し方」

「分かりました、多分そのうち何とかなるかも。時間に任せましょう」

「結局時間任せなんだ……」

 自宅の最寄駅から電車を2本乗りついで学校の最寄り駅へと着いた。

 駅から学校までは一本道で、今の時間は多くのの生徒が登校している。新入生としては高校生活2日目、ここからが本番というような感じなのだろう。ここで失敗すると最悪、便所飯という過酷な未来が待ち受けている。歩いている生徒の表情で大体1年生かどうかは見分けがつく。不安7割希望3割みたいな顔をした生徒がそれだ。でもまぁ2、3年もクラス替えで新たな友達ができるかどうかで結構な不安はあるとは思う、僕も悠たちが同じクラスで本当によかったと、地獄の底から思っている。

「地獄の底から? 心の底からより深いってことを表現したいのかな?」

「うん、一応声には出してないことになってるから、僕の心の声を解説してくれてありがとう」

 心の声に解説を入れてくれた悠にお礼を言ったあと、綺麗な黒い髪を風になびかせ、自転車を押している生徒を見つける。彼女はきょろきょろして、誰かを探している様子? 声をかけてみる。

「おはよう真奈ちゃん」

「!? あ、東の雲が空に輝くと書いて、東雲空輝先輩じゃないですか。おはようございます! それに皆さんも」

「僕の名前をかっこよく紹介してくれてありがとう、ホント」

「おう、真奈ちゃん! おはよう!」

『みなさん』でまとめられたなかの1人、奏音ちゃんがそう返すと、それに続き悠もルーナも「おはよう」と返す。ルーナは真奈ちゃんのことは覚えてるんだ?

「誰か探していたみたいだけど?」

 僕が真奈ちゃんに訊くと

「あぁ、いえ。やっぱり高校生になったので、ちゃんと友達ができるかどうかが心配で、キョドってました!」

 元気いっぱいにこたえる真奈ちゃん。

「自分でキョドってるって言うんだね、うん。大丈夫だと思う、君なら僕と違ってすぐに友達できるよ」

「失礼しました、先輩に略語はよくなかったですね、挙動不審ってました! それと共におポリスさんに声を掛けられないかが不安で、挙動不審度が加速してしまっていました! 11キョド毎秒くらいですかね?」

 これまた元気いっぱいに言う真奈ちゃん。おポリスさんって、お巡りさんみたいなものかな? 彼女の場合お巡りさんに声をかけられる理由は職務質問ではなく、心配だから、とかになりそうだ。ていうか、自分でキョドってるってわかるなら何とかしろよって、思わなくもない。

「絶対君ならすぐに友達できるよ」

「はい? そうでしょうか、そうだといいなぁ。と、ところで先輩はまるで自分にはできなかったみたいな言い方でしたが、できなかったんですか?」

「ふふふ、真奈ちゃん。僕は1年の時便所にすら居場所がなかったから、昼食は学校を抜け出して公園で食べていたんだ! かき鳴らせロックンロール!」

 ちなみにこれは僕の声ではない。さすがにそれはないし、学校を抜け出すほどの勇気はない。それをするなら便所で飯を食べたほうが……、なんとも言えませんごめんなさい。

「ちょっと奏音ちゃん!? なんてことを言うのかな! ていうか、1年生の頃の僕を知らないでしょ!?」

「空君はそれはもう、周りに気を配って。箸を忘れた子には、割り箸をそっと差し出して、ボタンが取れた子には自分が縫ってあげるって言って裁縫道具をポケットから取り出し、おなか減ったなぁの声を聞けば瞬時にお菓子を差し出す。ホントに凄かったんだよ?」

 ……なんで知っているのか。確かに1年のころは凄かった。お前のポケットは四次元か? とまで言われたことがある、が昔のことだ、また始めようかなぁ。

「なんで悠はそのことを知ってるの!?」

「ほら、前に言ったでしょ? 軽いストー……、うん」

 たしかに初めて―いや、正確には2度目なのだが―会った時に悠は「ごめんなさい、軽いストーカー行為を行っていました!」とか謝っていた。まさかそのころからとは……。色々あってかなり昔のことのように思うが、実際のところあれからまだ2カ月くらいしか経ってないんだよなぁ、おっと思い出に浸ってしまっていた。

「へぇ、東雲先輩は気配りさんだったんですね!」

「うん、あのことはただひたすら他の人の役に立とうと思っていたからね。2年になってからは……」

「なんだかとっても遠いところをみている東雲先輩は置いておかせて頂いて、奏音ちゃんは友達、すぐできる人ですよね」

「うん? 真奈ちゃんがいるぞ?」

「はい! では今日からが本番ですね! 一緒に頑張ってお友達作りましょう!」

「うん、まぁそうなんだけど。友達って頑張って作るものじゃなくて、できるのもだと思うんだ」

「友達がいないボッチみたいなことを言い始めました!?」という、真奈ちゃんをスルーして、奏音ちゃんは続ける。

「友達は大切だけどさ、話しが合うとか、趣味が合うとかで仲のいい人も友達ではあるけど。それりもっと大切なほら、自分が困ってるときに手を差し伸べてくれるような、そんな友達が欲しいかなワタシは。あ、ごめん。別に作るのが悪いとか、そういうことを言ったつもりじゃないんだ! 趣味とか話せる友達も大切です」

「いえいえ、奏音ちゃんの言うことも正しいと思います。自分が自覚なしで悪い事をしているときに、それを本気で止めてくれるような友達ってことですよね?」

「そうそう、そんな感じ」

 そして奏音ちゃんは、だから、と笑顔で続ける

「真奈ちゃんはそんな友達だよ」

「ひゃうん!?」と顔を赤くする真奈ちゃん。

「か、奏音ちゃん。私は、その。そっちの趣味、つまり女の子同士、みたいな趣味はないんですけど。その、今一瞬かなり奏音ちゃんをかっこいいなって、思っちゃいました!」

 僕も今のはかっこいいと思った、僕もそんなことを言えるようになりたいなぁ……。

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