第4話:【女王の降臨。パンの耳とプライド】
陽葵の「ドーム宣言」がネットで少しずつ話題になり始めた頃、氷室社長が鼻息荒く新しいメンバーを連れてきた。
「陽葵ちゃん、大ニュースよ! 元・天才子役で、舞台界の若き女王と呼ばれた如月湊ちゃんよ!」
そこに立っていたのは、陽葵と同じセーラー服を完璧に着こなし、モデルのようなオーラを放つ美少女。しかし、その瞳は冷え切っていた。
「……ここが事務所? 冗談はやめて。保健所の収容施設の間違いじゃないかしら」
湊は大手劇団の看板女優だったが、ある事件をきっかけに舞台を降り、居場所を失っていた。氷室社長が「ドームの主役になれる」と吹き込んで強引に連れてきたのだ。
陽葵は緊張しながらも、おもてなしをしようと差し出す。 「あ、あの、湊さん! これ、近所のパン屋さんでもらった『パンの耳』なんですけど……食べます?」
「……。私を誰だと思っているの? そんな家畜の餌みたいなもの――」
――ギュルルルル……。
静まり返った室内を、湊の盛大な腹の虫が震わせた。彼女もまた、プライドのために空腹を隠し、限界まで追い詰められていたのだ。 結局、湊は陽葵の隣に座り、パンの耳を無言で、しかし恐ろしいスピードで完食した。
「……毒見よ。悪くないわね。でも、貴方のその『ドーム』なんて夢、今の私にはゴミクズ同然に聞こえるわ」
二人の最悪で、少しだけ切ない出会いだった。
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