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00_プロローグ
少女が生まれてからの8年間は、家の中と本の世界で完結していた。
そのことに不満を抱いたことはない。
名門伯爵家に生まれた己の義務と責任を、幼いながらに理解していたからだ。
完璧な淑女となるよう教養と魔法のレッスンを重ねる日々。
知りたいことと知らないことは全て教師と本が教えてくれる。
学びとは、世界とは、そういうものだと思っていた。
8歳になり、領主である母に連れられ馬車で領地を巡ることもあったが、それは学んだ知識の「答え合わせ」に過ぎなかった。
そんな確認作業を繰り返す日々に一石を投じたのは、珍しく父と出かけた折の、父の気まぐれな一言だった。
「せっかくだから、今日は森に行ってみよう」
初めて踏み入れた森で、少女が出会ったのはフワフワした野兎でも、恐ろしい狼でもなかった。
木陰や落ち葉の隙間に、ひっそりと、けれど確かに息づく——奇妙で、美しく愛らしい、きのこたちだった。
そしてそのきのこたちが、少女が人生をかけて探求する運命の相手になると、この時の彼女は知る由もなかった。




