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第956話 死神を受体する影の組織の殺し屋 転生者エグゼオス視点

 俺は裏から国家を守る、シールドナインという機関に属するエージェントだった。表立って国が出来ないような汚い仕事をこなす組織で、俺達のことは通称クリーナーと呼ばれていた。


 孤児だった俺は、物心ついたころから殺人の技術を叩きこまれ、潜入と偽装を得意とする機械として育てられた。繰り返し教えられたのは、俺達は使い捨ての兵器……消耗品だということ。


 名前? その時ごとに違っているので、本当の名を知らない。


 ジャック。ライコフ。ウーシェン。


 潜入する国によって、名が変わる。俺が死んでも、誰も泣かないし、死んだことすら誰もが知る事はないだろう。俺の仕事は、国家の不都合になる物を、ただひたすら消す事だ。それが、クリーナーとしての生き方だった。


 だが……ある日の任務が終わったとき……、何かが俺の中で崩れ去る。


 そのとき俺が潜入したのは、麻薬や武器売買のカルテル。大人しくしていればいいものを、組織は核弾頭を手に入れようとしたのだ。シールドナインはそれを察知し、数名のエージェントに阻止を命じた。俺はその中でもトップクラス、そんな仕事は赤子の手をひねるより簡単だった。


「よし」


 カルテルのアジトで、俺は速やかに撤収の準備をしていた。その施設にいた百人からの人間を一人残らず殺し、死体と血の匂いが充満する中で、全ての痕跡を消して逃げるところだった。そのとき……。


「ん? 何か声がする?」


 対象が殺し漏らせば、この情報が全て漏れてしまう。俺はこの施設を最後に爆破しなければならないが、爆弾を解除されてしまうかもしれない。俺は冷静に銃を手にして、声のする部屋へと静かに近づいて行った。


「ここか……」


 そっと、ドアを開けると、いた。


「あ、んんあ。うあー」


 ……赤ん坊だった。だが、こんなことはよくある事。俺はスッと銃を、赤ん坊の眉間に向ける。あとは、引鉄を引けば最後の生存者は死ぬ。


「あ、はははははは!」


 ピクリ……。


 その赤ん坊は……俺の目を見て、楽しそうに笑った。そしてこともあろうに、俺に手を伸ばして来る。


「殺すんだぞ?」


赤子に、俺の言葉など理解できるわけはない。だがその手が俺の銃に触れ、グイっとひっぱる。その時……生まれてこのかた感じた事のない熱が、俺の中に薄っすらと浮き上がる。


「殺すぞ!」


「あはははは」


 引鉄に指をかけて絞ろうとするが、どうしてもその先に行けない。訳が分からない感情に襲われて、気が付いた時には、俺はその赤ん坊を抱いて施設を出ていた。


 イカン……こんな事は……。


 そう思いながらも、爆弾の起爆装置を押す。屋敷が大爆発を起こしたのを確認して、俺は暗い森の中へと姿を消すのだった。



 それからだ……俺の歯車が狂い始めたのは。



 何故か、助けてしまった赤ん坊。本部に報告すれば、すぐさま始末されてしまうだろう。俺は、その子を本部に隠して育て始める。俺は、その子にジョディと名付けた。


 何故かとても素直な子供だった。俺の事を父親だと思っており、ただひたすら俺の真似をしては笑っている。栗毛色の髪の毛にそばかす、顔立ちが良くて愛嬌がある。


 俺は……その子に、この裏家業を知らせるつもりはなかった。組織から隠し、ベビーシッターを雇い、普通の学校に通わせることにした。すると天真爛漫なその子は、すくすくと成長していく。


 不思議な感覚。何だ……これは? 俺はその子を、自分の命より大切に思うようになってしまった。たぶん、それがケチの付きはじめだろう。俺は、何よりも任務で生き残る事を最優先に考え始めたのだ。


 だがある日、海外での長期滞在の任務が来る。いままでは、すぐさま飛び出して、その国に潜り込むはずだったが、俺はジョディの事を不憫に思ってしまったのだ。ジュニアスクールへ迎えに行った時、友達と楽しそうに笑うジョディを見た。天真爛漫な彼女は、友達ともとても仲が良かった。そして、俺の車を見つけて、喜んでかけつけてくる。


「パパ! 今日ね! また満点だったんだよ!」


 そう言って、テストを見せる。満点の答案用紙を自慢げに見せて、屈託のない笑みを浮かべた。


「凄いじゃないか! そうか……なら、ご褒美に、好きなものを食べて良いぞ」


「えー! じゃあ、バーガーがいい」


「よし」


 俺はジョディと共に、バーガー屋に向かう。そしてドライブスルーでバーガーを頼み、すぐに車を発進させた。そして、その車中で言う。


「あのな……」


 その声の雰囲気に、ジョディが少し怪訝な顔をする。


「どうしたの?」


「長期で海外に赴任しなくてはならなくなったんだ」


「えっ」


「だから、お前はしばらく、一人で生活する事になる」


「やだ!」


 素直なジョディが、初めて俺にNoを突き付けた。


「いや、友達もいるだろうし、学校があるだろ」


「そんなの、どうでもいい。私はパパと居る」


「しかしだな。情勢の不安定な地域なんだ」


「別にいいよ。どこだってやっていける。だから、私を置いていかないで」


「危ないんだぞ。怪我をするかもしれないぞ」


「大丈夫。パパが守ってくれるから」


「ジョディ……」


 涙をためて懇願するジョディに、俺はこれ以上なにも言えなかった。自分にこんな人間らしい感情があるなんて、昔の俺なら目を見開いて驚くだろう。


「……じゃあ、学校には俺から連絡しておく。明日、出発だ」


「うん!」


 そして俺達は、バーガーを食いながら準備をした。次の日はあっという間に来て、俺はジョディと一緒に飛行機に乗る。


「旅行みたいだね」


 無邪気に喜ぶジョディ。


「ああ……そうだな」


 血塗られた俺の仕事など知らないで、ただひたすら俺の事を信じている。そして、ジョディが言う。


「ちょっと、トイレに行って来るね」


 ジョディが席を立ち、トイレに行った。するとすぐに、ジョディの席に女が座る。


「これを」


 手に渡されたのはスマートフォン。未だかつて、誰かに接触された事など無かった。偽装のどこかに、ミスがあったか……。スマートフォンをつけると、メッセージが入っている。そのメッセージを開くと、こう記してあった。


(ミッションの妨げになる。単独行動厳守)


 バレた……。


 俺は、急いでトイレに走る。


ジョディ!


 だが、ジョディは何事も無かったように、トイレから出て来て俺を見る。


「どうしたの? パパもトイレ?」


「いや……いいんだ。なんでもない」


 結局、組織が直接手を下してくる事は無く、俺とジョディは無事に、南米の国へと降り立つ。だが……間違いなく、監視の目がついて来るのが分かった。


 今回の指令は……なんだ。


 組織からの指令は、現場に行ってから知らせられるのが普通だったが、俺は初めて焦りを感じている。そして予定していた家に到着し、俺達は荷物を下ろして一息つく。


「パパ! こんな綺麗なお家に住むの?」


「ああ。こっちでは、このくらいじゃないと危ないからな」


「わかった……」


 すると、渡された携帯が振動する。俺はそれを見て、愕然としてしまった。


「なん……だと」


 今回、暗殺対象者……、この国の大統領?


 だが情報を読んでいるうちに、大統領が武器を買い自国への攻撃を目論んでいる。武器商人に潜入し、大統領府との繋がりを突き止めて、確定次第殺害せよという内容だった。そして、武器商人のアジトが、そのスマホには表示されていた。


「すぐ……か……」


 俺は、ジョディに言う。


「ちょっと、仕事で出て来る。鍵をかけて絶対に出るな。誰かが来ても絶対に開けるな」


「そうか……うん。でも、パパ怖い顔してるよ」


「あ、ああ……スマン。大丈夫だ」


 そして俺は自分の家を抜け出て、この国で昔隠していた武器を取りに行く。あるバーに入って行くと、マスターが俺の目を見て頷いた。俺は騒がしい店内を抜けて、トイレに入り込み小さな窓から抜け出る。これは、追手をまくためだ。


 路地裏を抜けて、地下に続く石階段を降り、一つの部屋に入った。生活感のない殺風景な部屋のなか、俺は床の一角の板を外す。そこには、昔この国に来た時に隠した、身分証や装備の一式が隠してあった。それを取り出して指定された場所に行くと、数メートルはある高い門の屋敷へと辿り着く。


 それからは、いつも通りにスムーズだった。屋敷に忍び込み、片っ端から情報を探す。敵に悟られず、必要な情報を次々に暴いていく。そして肝心な、大統領府とのつながりを示唆する情報を見つけ出す。


 確定か……。


 俺は、大統領の行動日程を確認した。するとある日に、大統領演説が執り行われるのが決まっている。


 だが、まずは……。


 俺は、いつもの通りに、この屋敷にいる全ての人間を殺す。そして、あちこちに爆薬を仕掛けていく。すぐに屋敷から出ると、離れた場所で起爆装置を作動させた。


 ズン! 地面が鳴り、あたりは騒然となる。


 家に帰ると、ジョディがまだ起きていた。深夜だというのに、ずっと待っていてくれたのだ。


「お帰りパパ!」


「寝ていてよかったんだが」


「怖かったんだもん」


「そうか」


 ジョディは安心したように、ぐっすりと眠る。俺はそっと起き上がり、大統領に近づく算段を練る。


「比較的、早く終わるか……」


 大統領演説会は半月後。それまでは、何食わぬ顔でこの国で生きていけばいい。それで仕事は終わる。


 はずだった。


 だが、急に俺に指令が下る。


「予定……変更だと? 今日中?」


 無理な仕事だ。だが俺は苛立ちながらも、淡々と準備を始める。指令の変更は今までも多々あったが、これ程のものは今回が初めてだった。だが仕事を完遂させれば、ジョディと平和な国に帰る事が出来る。俺はすぐに支度をして、そっと屋敷を出ていく。


「まったく……何だってんだ」


 自分のスマートフォンには、ジョディを守るための監視用カメラの映像。すぐにタクシーを捕まえて、大統領府に向かって走った。タクシーを、大統領府に近い場所に止めさせる。


「ウグッ!」


 顔を見られているので、タングステンワイヤーで運転手の首を絞めて殺害したその時だった。


 ブブッ!


 俺の自前のスマートフォンが鳴り響く。それは俺の家への侵入者の警告を知らせる、通報の音だった。スマホを開いて画面を見ると……黒づくめの連中が、俺の家の外壁を飛び越えるところだった。


「なに!」


 俺は踵を返すように走り、信号で止まっているバイクの男を殴り飛ばして、すぐに家に向かって走る。バイクを乗り捨てて、急いで家に侵入した。状況を見ればわかる、間違いなく敵は、暴漢などでは無い。それが証拠に、監視カメラが全て撃ち抜かれていた。


 ジョディ……。


  すぐに、最初の敵が見えた。


 バスバス!


 サイレンサーの銃を撃ち込み、すぐ二人を倒した。慌てて中に入ると、殺気がしたのでそれを避ける。銃弾が後ろの壁に穴をあけた。一人を殺し、横から飛びかかられてガラスのテーブルを破壊して転げる。腰のナイフを取り出して、そいつの首を切った。


 気付けば、俺の太ももにナイフが刺さっていた。


「ちっ!」


 完全な手練れだった。やはり警察でもない。俺は、倒れた奴の目出し棒をとって、愕然としてしまう。


「クリーナー……」


 俺は、その男の顔を知っていた。そいつは、シールドナインの人間だった。俺がこの国の大統領と、武器商人の癒着を暴くデータを送ったのだが、なぜか俺に刺客をおくって来たのだった。


「どういうことだ……」


 俺は姿勢を低くしてソファーの影に隠れ、仕掛けておいたガスボンベに向かって、銃を撃った。


 バン! 


 それが破裂したのと同時に、一気に躍り出て三人を殺す。そしてそのまま、奥の部屋へと飛び込むと、数人がこちらに飛び込んで来る。


バスバスバス!


 だが……足を刺されて動きが鈍ったせいで、腕に一発喰らってしまった。奴らは防弾チョッキを避け、防御されてない所を狙って来る。階段に向かうと、上から銃弾が降って来る。俺はそのまま天井に向け、腰から抜いた徹甲弾を装填したピストルを撃った。


 ドサドサ!


 倒れる音がして、すぐ階段を駆け上がる。二人が倒れていて、足を押さえつつもこちらに銃を向けた。迷わず脳天を撃ち抜いて、ジョディのいる部屋へと走る。影に隠れていた二人が、飛びかかってきた。


 壁に押し付けられ銃を顔に向けられたが、その手を押しのけて、俺の弾が顎から脳天に向けて抜けた。もう一人が慌てて撃って来るが、俺はその死体を盾にして防ぎ、そいつの眉間を撃ちぬいた。


「はあはあ」


 足の傷が思いのほか、深くて力が抜ける。そして、ジョディの部屋に入ると、ジョディはいなかった。だがかまわずに奥に向かい、壁をそっと外すと、そこにジョディが隠れていた。


「パパ!」


「すまない。こんなことになって」


「あ、あの人達は?」


「まだいる。だが、パパが来たから、もう大丈夫だ。お前はそこに隠れていなさい」


「パパは?」


「大丈夫だ。すぐに片付けて来る」


 ジョディを壁に押し込んで、次々に敵を殺していったが、十数人を殺したところでふらついて来た。


 パン! 


 一発の銃弾が、俺の首を抜けた。だが、俺は迷わずにそいつの目を撃ち抜く。


 ビュッ! ビュ!


 首から勢いよく血が噴き出て来る。どうやら、動脈をやってしまったようだ。急いで止血する。


 だが……もう、これで全部だった。屋敷内に入り込んだ奴らは全員殺した。


 フラフラになりながら、隠していたボストンバッグを取り出し、ジョディの部屋まで戻る。


「ジョディ」


「パパ!」


 ドサリ! 俺は、そこに倒れ込んでしまった。


「パパァ!!!」


「ジョディ。よく聞くんだ」


「いや! 死んじゃう! はやくお医者さん」


「もう……持たん。だが、掃除は終わった。いいかい? 今日、今すぐこの屋敷を出るんだ」


「嫌だ! パパと行く!」


 だが俺は、ジョディをグッとつかんで言った。


「時間がない。恐らくあと十分もすれば、始末屋が来る!」


「な、なんなの! あいつら! いったい!」


 俺はボストンバッグを手繰り寄せて、ジョディに言う。


「はあはあ。あけてみろ」


 バッグを開ければ、いっぱいの百ドル札が入っており、そこにスマートフォンが乗っている。


「お前のために、ある中立国の銀行に、金を預けてあるんだ。はあはあ。そして、銀行の暗証コードは、パパとお前だけの秘密のあの番号だ」


「あの、二人の記念日の?」


「そうだ。そして……」


 俺は血まみれのポケットから、紙を取り出した。


「ここに記されている、老人夫婦を頼れ……もう……話はついてる。ごぼっ!」


「パパ!」


 血を吐く俺にしがみつくジョディに、血がついてしまった。


「泣くな、ジョディ。パパは国のために働いた。国が表立って出来ない事をやってきた。お前に隠れて、沢山の人を殺して来たんだ。うぐっ」


 ジョディは泣きながらしがみつこうとするが、俺は手でそっと離す。


「家の地下室から、隣のマンションの地下室に繋がっている抜け道がある。すぐにそこから抜け出して、逃げるんだ。この帽子を……深くかぶれ。そしてマスクをつけろ」


 ボストンバッグから取り出して、ジョディにやる。


「やだ! いかない! パパといる!」


「ダメだ! 言う事を聞け! お前は……はあはあ。お前の人生を……生きろ」


 その時、俺のスマホに、別に仕掛けた監視カメラの映像が届く。奴らが近くまでやってきていた。


「お願いだ。お前に死なれたら、俺の存在した意味が……なくなってしまう」


「パパ!」


「ダメだ! 行け! 奴らが来た!」


 俺の鬼気迫る声に、ジョディは気圧される。そして、ジョディの手にボストンバッグの持ち手を預け、精一杯のほほえみを作った。


「ジョディ。お前の父親になれて……本当によかった」


「パパ……」


 もうジョディは、見えないくらいに涙をあふれさせている。


「行け……俺の、ジョディ……」


「パパ……愛してる……パパ」


「俺もだジョディ、行くんだ」


 ジョディはようやく重い腰を上げ、指示通りに地下室へと向かって行った。するとそれと入れ違いに、ぞろぞろと始末屋たちが屋敷へと侵入して来る。


 だが……俺のスマートフォンに映し出されたのは、奴らに捉えられたジョディの姿だった。


「……見抜かれてた……。くそ!」


 俺は立ち上がり、何とか部屋を出ようとする。だが、ドアを開けた瞬間だった。



 バス!



 目の前の銃が火を噴いて、俺は眉間に穴をあけて倒れるのだった。



 武器なんて、あるからいけない……。



 だが……俺は赤ん坊として生まれ変わり、何の因果か、また地下組織の最下層に生れ落ちてしまう。


 ジョディ……。


 俺は全てを呪って、生まれ変わった。この世界には魔法なるものがあり、俺には不思議な力があった。そして前世で培った暗殺や偽装の能力を、知識として生まれながらに持っていた。生まれ落ちた組織は、アサシンギルドと呼ばれていた。


 この組織は殺しが仕事で、貴族や王族を始末する奴らが集まっている。ただテクノロジーに関しては、俺が生きた前の世界に比べれば低すぎた。俺はそこで、次々に仕事を完璧にこなす。すぐ頭角を現して、少年にしてナンバーツーにまで上り詰めていた。


 ジョディに、良い人生を送らせてあげられなかった苦しみは、この世界に来てもずっと悩ませてきた。


 そんなある日の事だった……。


 俺の下へ、少女が連れて来られた。俺は目を疑った。その子は、ジョディに雰囲気が似ていたからだ。


「ジョディ……」


 すると、頭領が言う。


「エグゼオス! こいつを、鍛えろ!」


 エグゼオスとは、俺の名前だ。


 少女の名を聞けば、分からないという。だから俺は、それにジョディとつけた。何故かは分からない。だが俺は、その少女を徹底的に鍛えあげていった。自分の力で、この非情な世界を、生き抜けるように。少女が、かなりの腕前になった時、彼女に初めての殺しの仕事が与えられる。


 それはモエニタの王都の、王族の暗殺だった。彼女には俺の同行は許されず、一人で旅立って行った。だが……その後で届いた報告は、モエニタ王都が何者かの襲撃により、壊滅的な打撃を受けたという事。それ以来、その少女ジョディは帰って来なかった。


 悔しかった。俺は自暴自棄になりつつ、アサシンギルドを勝手にぬける。それはジョディを探すため。だがアサシンギルドは甘くなかった。俺は荒野の真っただ中で奴らに囲まれ、頭領が俺のところに来た。


「てめえ……掟は分かってんな?」


「……」


「殺れ」


 そのときだった。急にアサシンたちが、ドミノ倒しのように倒れた。


「な!」


「は?」


 そこに現れたのは……高そうな法衣を着た、スケルトンだった。いや、リッチか?


 その骨は、俺を見るなり言う。


「見つけましたよ。私の神子」


「な、なん」


「お困りのようで」


 すると、そいつの周りに近づいたアサシンが、また倒れてしまう。


「殺されちゃ困る。また百年待たなくてはならなくなる」


 そんな事を言う。


 千載一遇のチャンスだった。気を取られていなければ、頭領を討ち取る事など絶対に出来なかったが、俺が猛毒のナイフを投げたら首に刺さったのだ。


「うげぇ」


「マジか……やったのか!」


「私が動きを封じたので」


 何故か、骨が俺を助けてくれた。そしてその骨と一緒に、アサシン達を壊滅させる。


「どうも。私は死神といいます」


 素っ頓狂な話だ。死神……なんでそんなもんが、俺の目の前にいるのか。


「俺を殺すのか?」


「いいえ。私が消えるのですよ」


 なんだか、わからない。だが、目の前のスケルトンは、俺に危害を加えるつもりはないらしい。


「なんだかわからねえが。俺はモエニタの王都に行く、ありがとよ」


「あ、あそこ、壊れちゃいましたけど。大勢が死にました」


 何故か、平然と魔物と話をしていた。こいつは、何かを知っているようだ。


「何か知ってんのか?」


「あそこは、魔神と魔導士の戦いで崩壊しましてね」


「魔神?」


「ええ。だから、行っても面白くないかも」


「いや、行く」


「どうでしょう? それはあなたの自由。では……」


 パアアアアア! 目の前が白く輝いた。次の瞬間、骨がカタカタとなる。


「間に合ったぁ……」


「な、なんだよ! いったい!」


「これで、あなたが、次の死神です」


 そんなことを告げると、骨はさらさらと灰になり、荒野の風に消えていく。訳の分からない出来事に、唖然としながらも、俺は荒野を歩きだすのだった。

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