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37.遅れてきたお土産4


お待たせ致しました。

・・・あ、待ってない?


こりゃまた失礼致しました。




「・・・・・あ〜、で。私のせいというのはどういったことですか? 流石にお嬢様へのお土産に何かするほど落ちぶれてはいないつもりなのですが」



 青ざめたお顔になられたお祖父様に、哀れみとでも申しましょうか、何やら可哀想なものを見る目をしたアルが問いかけます。

 何故そのような目を向けているのかは分かりませんが・・・アルは確かにお祖父様との仲が絶望的に悪いですが、わたくしに宛てられた品にいたずらをするような質ではありません。



 アルからの贈り物の多くはいたずらなどされずとも表に出せない類である点はさておき・・・。



「お、お主がリュミエールに渡した靴じゃ!」


「靴・・・とは、もしかしてバースト・ダンサー「バーストグリーブのことですか?」ズ・・・でございますか?」


 まだその名を諦めていなかったのですかこの使用人は。



「名前までは分からんかったが・・・リュミエールが今履いている靴じゃ! なんぞとんでもない品じゃと所々で話を聞いたわいっ。主に荒事に関わる場所での・・・」


「お嬢様・・・今後は少し危ないことに首を突っ込まれるのはお控えくださいませ」


 お断りします。


「お嬢様!?」



 貴重な実践訓練の機会を逃すなど、勿体無いではありませんか。



「・・・アルフレド、王都に行ってからリュミエールのことお願いね?」


「当然でございます。ございますが・・・抑えきれる自信がございませんよこれ・・・」



 まぁ、頑張ってください。

 応援はしています。


「いえいえお嬢様どうして他人事なのですか、お嬢様のことでございますよ」


「それでお祖父様はバーストグリーブについてお聞きになられて、どうされたのですか?」


「露骨に話題を反らされました!?」


 いいえ、元の話題に戻しただけです。



「それは・・・」



「「「それは?」」」




「それは・・・・・・それは、こ奴がリュミエールに贈ったものより儂のお土産が劣っていると思われるのが嫌だったからじゃ・・・!」



「はぁ・・・?」



「なんじゃその気の抜けたような返事は!? 儂は、儂はなぁ! リュミエールのことを生まれたときから知っておる・・・赤子の頃からそれはもう、可愛くて可愛くてなぁ。もっと小さい頃はじぃじ、じぃじと舌っ足らずな声で呼んでくれてのぉ・・・それがじゃ、いつの間にやらこぉんな無礼な奴を雇い、あまつさえ専属に据えておるではないか? こんなどこの馬の骨とも知れぬポッと出の奴に負けるわけにはいかんのじゃよ!!!」



 はぁ・・・?


「お父さん、それはちょっと大人気なさ過ぎだと思うわよ?」


「まぁ、私は元々孤児ですし親の顔も知りませんから、実際どこの馬の骨かは分かりませんが」


「あぁ、話しの流れからまぁそんなこったろうとは思ったよ。ていうかアルフレドはそれ使い方おかしくないかい?」


「そうでございますか?」



 思わずアルと同じ反応を返してしまっていると、他の方々が話を進めてしまっていました。


 ・・・いえ、進んではいませんでしたね。




「結局のところそのお土産はなんだったのですか?」


「それはの、折角じゃから見てのお楽し「とても良い状態のワイバーン皮を使用した手袋でございました」貴様ーー!!」


「防寒具ではなく、防具としての手袋です。ご依頼頂いた通りこちらで手を入れておりますが、なるべく元の形を保つようには努力致しました」


 またこの二人は・・・。

 ですが、ワイバーンですか。



 ワイバーン。


 亜竜、翼竜などとも呼ばれる魔物の一種ですね。

 前肢が翼になった爬虫類といった見た目のためか、よくドラゴンと比較され下に見られがちな魔物ではあります。


 ですが、大きく強靭な肉体に硬い鱗や先端に鋭い突起が生えた尾を持ち、自在に空を駆ける魔物が弱いわけがありません。

 更には空を飛ぶ相手を攻撃する手段が限られることもあり討伐までには傷だらけになってしまうことが多い中、綺麗な状態で素材が手に入ることは稀なのです。

 かつてアルがわたくしの靴を作るための素材に使おうとしていた素材でもあります。


 そのようなワイバーンの素材を使った手袋・・・ これは見るのが楽しみになる情報ですね。



「そして改修した品がこちらになります」



 そう言いつつ、アルはもうずっと手に持ったままだった箱を開けました。


「おぉ〜」


「格好良いですねっ、姉さま」


「そう、ですね・・・?」



 フィリオとクリスもアルの手元を覗き込み、それぞれの反応をしています。

 しかしわたくしは、フィリオからの問いかけに素直に応えて上げることができないくらいには頭の中を疑問が駆け抜けていました。


 アルが手袋と(のたま)った品は 前腕を覆うまではいかずとも、その半分くらいまでは隠すほどの装甲が手の甲に当たる部分から伸びていました。

 また、その手の甲自体も指先まで鎧われていています。



 これは手袋というより所謂、


「ガントレットでは」



「原型はどこいったんだいアルフレド・・・」


「これもう完全に別物に見えるわねぇ・・・」



 首を傾げていると、お母様とお祖母様の呆れたような声が耳に入ります。

 あぁ、やはり元からこういう形ではなかったのですね。



「いえいえ、手の甲側に魔界の素材を多く使いそれなりに手を加えましたが、手の平はそうでもないのですよ・・・まぁ、手の甲側に使われていた革を手の平に回して厚みを持たせましたが」


 それはもう別物なのでは。



「あとはお嬢様のご成長に合わせてサイズを調整できるように細工を施してあります」



 やはり別物ですよね?



 ですが最近では徒手格闘を主体に修練しておりますから、実戦向けの防具、もしくは武器として、とても良いタイミングでお土産を頂いたと思います。



「お祖父様、アル。わたくしのために本当にありがとうございます。とても嬉しいお土産です」


 それに例えこれが違う品だったとしても、お祖父様が態々わたくしのために色々とお考えになって用意してくださったのですから、そのことをとても嬉しく思います。





























「き、気にするでない。儂がしたくてしたことじゃ」


「私も内容はともかく依頼を(こな)しただけでございますから。あとニヤケ顔がキモいですよ、お祖父様」


「っ! 貴様にお祖父様などと呼ばれる筋合いはないわい、この悪ガキめが! というか、キモいとはなんじゃキモいとは!?」


「こんなところでがなり立てないでください、うるさいです」


「なんじゃと!!」



 いつも本当に前振りもなく喧嘩を始めますよね、この方たちは・・・。


「この二人はこれさえなきゃ、ねぇ・・・」


「折角リュミエールからの印象が良くなったのに態々自分たちからそれを下げに行くんだもの」



 実は被虐的な嗜好の持ち主説。



どっかの前侯爵様とどっかの使用人、ドMだってさ。


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