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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第八章 サバイバルです
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 どうやら獲物(猪豚)を狩られましたが解体の仕方が分からず、途方に暮れているところでこの障壁を見つけ、教えを請うつもりだったようです。

「男性陣は晩御飯用の野草やキノコを探しに行かれておりますが、もう少しで戻られると思います」

 一度障壁を解き、新たに今いる皆様も出入り出来る障壁を張り直します。

「では、障壁の中(こちら)でお待ちください」

 障壁の中は安全ですので、気が緩まれたのかどなたかのお腹から可愛らしい「きゅるるるる……」という音が。

「お昼ご飯食べてないの?」

 リンちゃんの問いに皆様頷かれます。

 猪豚の件を伺った時何となくそうでないかとは思っておりましたが。

「じゃあ今から作るから、これでも食べて待っててよ。あ、解体したら返してね」

 と皆様に木の実を渡し、先程ウィリアム様が解体済みの猪豚を使い、塩胡椒を振ってステーキを焼きます。

 皆様カップをお持ちのようでしたので、お湯を沸かしお茶を淹れました。

「何から何まで(かたじけな)い」

「困った時はお互いさまでしょ?」

 こういうリンちゃん、大好きです。

 美味しそうにステーキが焼き上がりました。

 キッチン鋏でリンちゃんが一口大にカットしていきます。

「はい、出来たよ」

皆様余程お腹が空いていたのか夢中で食べられ、全てのステーキがあっという間に無くなり、満足そうな顔をされております。

 そこへ丁度ウィリアム様とキース様が戻られました。

「何か人数増えてねぇか?」

「悪いな。僕等じゃ解体方法が分からなくてね。解体出来ないと食事も出来ないところを彼女達に助けてもらったよ」

「ウィル、戻った所に早速で悪いんだけど、彼らに解体方法教えてあげてくれない?」

 リンちゃんは、本当面倒見がいいお姉さんです。

 ウィリアム様は「分かった」と言い、彼らを障壁内の少し離れた所に呼び、解体しながら説明していきます。

 その間私とリンちゃんは、バラ肉の部分を使い下茹でし、その後甘辛く煮て角煮を作ります。

 エドワード様とエヴァンス様は何気にサバイバル能力が高いのか、大量のキノコや野草を持ち帰って来られました。

 きっと新たに増えた五名も合流することになりそうですので、バラ肉を煮る間に大量のスープを作ります。

 大変ですが、皆んな一緒に何かをするということはとても楽しいです。

 水が足りなくなってきましたので、料理はリンちゃんに任せ、キース様に同行をお願いして小川まで向かいます。

 入学当時、キース様の背は私より十センチ程大きいくらいでしたが、今は十五センチ以上の差があるようで、目を合わせるには少し見上げるような感じになってしまいます。

 ……皆さんばかり成長されて、ズルいです。

 小川に着くと、キース様は再度竹を切り、水筒のようなものを持てる分だけ作って水を入れていき、全てに水を入れ終わると来た道を引き返します。

 私が水筒代わりの竹を五個持つのに対して、キース様は十個。

 倍持たれているにも関わらず、平気な顔をされております。

 これは男女の体格差などの問題なのでしょうか?

 私も頑張ってトレーニングしてはいるのですが、なかなか筋肉がついてはくれなくて。

 皆に置いてかれてるような気がして、寂しく思うのは変でしょうか?

 あっという間に到着し、キース様にお礼を言い、リンちゃんの元に向かいます。

 キース様は後から来られた方達に水筒を配っておられました。

「リンちゃん、お待たせしました」

「お帰り~」

「ただいまです」

 角煮の鍋からとても良い匂いが漂って来ますので、思わず覗いて見ます。

「わぁ、美味しそう」

「美味しそうじゃなくて、美味しいのよ」

 と言ってリンちゃんが笑います。

 結局角煮の匂いに釣られて、後から来た方達も合流することになりました。

 リンちゃんは「やっぱりね」と笑っておりました。

 結局角煮とスープだけでは足りず、昼間のようにステーキを焼いて、ようやく晩御飯を食べ終えました。

 明日の朝食はキノコの味噌汁と、生姜焼き((もど)き)で足りますでしょうか?

 リンちゃんに聞きますと「そんなん、足りなきゃ男達に魚釣ってこさせりゃいいのよ」だそうです。


 朝です。

 障壁があるため火の番などの必要がなく、私も含めて皆様ゆっくりお休みになれたようです。

 とりあえず全員で小川に水汲みと顔を洗いに向かいます。

 私とリンちゃんは先に洞窟へ戻り朝食の準備、他の男性陣は魚釣りをして戻ることに。

 これが今サバイバル訓練、最後のご飯です。

 中等部一年生は初めてのサバイバルということで、二日目のお昼前で終了となります。

 何故かと申しますと、一日目は朝食を食べた後の出発となりますので、昼食と晩御飯と、二日目の朝食の三食分を自分達で何とかしなければなりません。

 それが出来ないグループが必ず毎年幾つか出るそうです。

 酷いグループになると、水場を探しあてることすら出来ずに終わった、なんてことも。

 体調面も考えて、初めてのサバイバルは入門編で短めにということのようですね。

「何だかんだ言って、結構ちゃんとしたご飯食べられたね」

「そうですね。お肉も魚も食べられましたしね。まさかサバイバルであんなに美味しい角煮が食べられるとは思いませんでした」

「だよね~」

 この後男性陣が大量の魚を釣って来られ、全て塩焼きにして美味しく頂きました。

 合流された皆様は「サバイバルでこんな贅沢が出来ると思わなかった」と、とても喜ばれておりました。

 朝食を終えて、調理器具を水魔法で洗ったり火の後始末をして、学園への転移が始まるまで皆で和気藹々とお話をして過ごしました。

 一年生最後のイベントも、とても楽しいものでした。

 お留守番組のアルとマリアに、帰ったらたくさんサバイバルの話を聞いて頂きましょう。

 角煮を作った辺りで、アルが『我も食べたかった』と言ってきそうだな、などと想像して、思わず笑みがこぼれるのでした。

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