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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第三章 フォード学園に入学しました 〜カレン13歳〜
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リン目線です

 私はリン。

 平民なので苗字はない。

 うちは貧乏人の子沢山とはよく言ったもので、長女の私を筆頭に下に弟五人に妹三人がいる。

 一番下の弟はまだ生まれたばかりだ。

 お金はないけれど、大切に育ててくれた両親や弟妹達に少しでも良い生活をさせたいと、血の滲むような努力をしてこの学園に入った。

 もちろん普通に入学するお金なんかないので、特待生一本狙いだ。

 まあ、お貴族様と同じクラスなんかじゃ孤立は当然だろうけど、私はここに学びに来ているのだから、そんなことは知ったこっちゃない。

 優秀な成績で卒業出来れば、たとえ平民でも給金の良い職場を斡旋してもらえるのだから。


 気合を入れ過ぎたか少し早く着き過ぎたようで、講堂には人が(まば)らだ。

 まぁ、クラス内の席なら何処でも自由らしいから、一番後ろの席にでも座っていよう。

 A~Fクラスの席は少しづつ埋まってきているが、流石はお貴族様クラス。

 私以外にはまだ誰も座っていない。

 腕を組んで座っていたが、五分か十分ほどウトウトしてしまっていたらしい。

 前の席に煩い奴が座ったため、目が覚めた。

 煩いなぁと顔を上げた瞬間、前の奴が騒いで振り上げた腕が、左隣にいた女の子にヒットした。

「ひゃ」と小さな声がして、読んでいた本がバサリと落ちる。

 結構ガッツリ当たったにも拘らず、前の奴はまだ右隣の奴とふざけていた。

 ぶつかられた女の子は小さな溜息をついて、落ちた本を大事そうに抱え、席を移動しようとしているようだった。

 当然イラッとして、気が付けば口だけでなく足も出ていた……。


「おい、女の子にぶつかっておいて謝りもせずに無視とか、お前最低だな。……大丈夫? 怪我は無い?」


 私の言葉にゆっくりと振り向いた女の子は、見たこともないようなレベルの美少女だった。

 まるで陶器のようにきめ細かい白い肌。

 高い位置で結ばれた髪は、滑らかな金糸のように波打って。

 零れ落ちそうな少しグリーンがかった宝石のような大きな瞳には長い睫毛が規則正しく並んでいる。


「痛えな、何すんだよっ」


 私が蹴飛ばした奴が立ち上がって睨みつけてくる。

 さっきチラッと見えた腕につけている魔法石のブレスレットは、平民には逆立ちしたって買えない代物だ。

 どうせお貴族様なコイツも、自分の非を認めたりなんかしないんだろ?

 思い切り冷めた目で見ながら腰に手を当ててふんぞり返ってやった。


「人の話を聞いていなかったのか? 普通に考えて女の子にぶつかっておいて謝りもせず、無視するお前が悪い」


 すると奴は予想外にも「えっ? マジか?」と、慌てて美少女の方に体を向けたと同時に頭を下げた。

 へぇ、このお貴族様はちゃんと謝罪が出来るのか。

 少しだけ見直した。

 ……けど、なんでコイツは顔を上げてから固まったように動かないんだ?



◇◇◇



 父さん母さんに弟妹達、世の中何が起こるかわからないものだよね。

 ……懐かれた!?


 あの後担任らしき先生が来て、固まってる奴を無理やり席に座らせ、その後校長の話が始まり、色々な人が入れ替わり立ち替わり何か話して、気が付けば(途中から寝ていた)つつがなく入学式が終わり、各クラス毎担任の後に続いて教室に向かって歩いているところだ。

 ……見られている。

 もの凄~~~っく、見られている。

 仕方なくそっちの方に視線を向けると、あの美少女がもの凄く嬉しそうな顔をしている。

 尻尾があったら物凄い勢いで振ってそうだな、なんて心の中で苦笑いした。


「え~と、リンだ。あんたの名前は?」


 まずは自分から名乗ると、目の前の美少女は嬉しそうに笑って。


「わ、わたくし。カレン、カレン・リードでしゅ」


 ……思いっきり噛んだ。

 あらま、真っ赤になって下向いちゃった。

 って言うかリードって言ったら、平民の私だって知ってる貴族の中の貴族じゃないか!

 何だってこんな平民に嬉しそうに寄って来るんだ?

 あんまお貴族様に近寄りたくないんだけどな~。

 けど、なんかこの子、小動物みたいで放っておけないんだよね~。


「あまり平民と一緒にいない方がいいんじゃないのかい?」


 私なりに気を使ったつもりだったんだけどね。

 大抵のお貴族様は、平民と口を聞くのも穢らわしい……なんて奴が殆どだしな。


「なぜですの?」


 って、下に向けていた顔を上げて、不思議そうに首を傾げてくる。

 いや、逆になんであんたは平気なんだよ?


「リン様はわたくしとお友達は、嫌ですか?」


 だから、その悲しそうなハの字眉にするのはやめてくれっ!

 ああ、垂れ下がった耳と尻尾の幻影が見える……。


「ああ~、もう、分かった。分かったからそんな顔すんな」


 頭をワシャワシャと撫でてやった。

 少し? 崩れたけど、まあいっか。


「友達なら、様付けはいらないだろ? リンでいい」


 と言うと、物っっ凄い瞳をキラッキラさせて、拳をグーに握って。


「初めての人間のお友達ですっ! リンちゃんて呼んでもいいですかっ?」

「げ、リンちゃんて柄じゃないからリンで……いや、もうリンちゃんでいいや」


 だから、そのハの字眉やめれ。

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