∞+∞=∞ デウス・エクス・マキナ
最近は仕事がなくて暇だ。
自分の仕事は部下たちの仕事量に反比例する。
彼女たちが外回りを充実している間は自分の仕事はない。しかし、彼女たち自身の仕事がうまくいっているということは良いことでなので。非常に結構なことである。
ただ、暇だ。
暇をもてあましていると、もっと暇をしている相手からいきなり連絡が来てびっくりした。
なんでも添付してある資料を確認してほしいらしい。
ちら、と流し読みしただけで、時間を無駄にしたことを悟った。
―― じゃーん。久しぶりの超・大・作。これ、どうよ?
―― プロットが酷い。キャラに味がない。ご都合主義のオレsugeee。総じてつまらない。
―― え~。オトメゴコロをばっちり掴む最高傑作だってばさ。
―― って、いわれても。何度言われてもつまらないものはつまらないし。
―― だいたい、記録するものによく読ませようと思ったな。感心するわ。
―― だぁって~。ニンフも精霊たちも、み~んな面白いって言ってくれたんだもん。
―― もん。って言ってもかわいくねーよ。そりゃ、皆は遠慮したんだろうよ。万物の父にむかって、面白くありません、なんて誰が言えるよ。
―― え~、今散々言ったくせに。
―― まあ・・・世界の果てにいちゃあ。暇をもてあますのも仕方ないといえば仕方ねーけど。でもつまらないものを記録させるのはヤメロ。
―― ・・・わかった。
―― ん?
―― つまり、この最高傑作が物質世界でありえると、証明すればいいわけだよね。
―― あぁ? ・・・その駄作を?
―― ち・ち・ち。最高傑作です。ニンフたちは"今世紀最大のロマンス"って言ってくれたもん。
―― うわぁ。権力ってコワイ。引くわぁ。
―― ちゃちゃっと世界創るから、堕りてきてよ。で、確かめてきてよ。
―― ちょ、無理むりムリ無理~。絶対に無理~。テメェがやろうとしてることは、100万回ふったサイコロの出目がぜーんぶ1とかそういうレベルだって。確率的にムリ。
―― 1/6を100万回なんて、そんなのすぐじゃないか。なにいってんの。
―― なに言ってるのはこちらのセリフ! 確率操作なんてつまらんじゃん、やめろって~。
―― 100万回1が出続ける未来を確定させるなんて、ヨユーヨユー。
―― どんだけー。・・・まあ、時間はあるしなぁ・・・暇つぶしだと思えば・・・
―― なるよなるなる暇つぶし。あ、ちなみに悪役のご令嬢にするからね。へたにモブにして、途中退場とかヤでしょ。
―― えー。女かよ。
―― いいじゃん。なに? 性別:女っておいしいの?
―― まーなぁ。ヒトって時点でかなり劣化してんだし。どっちも一緒か。
―― にしても、ヨユーだねぇ。実は嫌がられると思ったんだけど。
―― どうせ暇してるしな。おい、ちゃんとコピーとっとけよ。100万回繰り返すんだろうが。
―― ん。大丈夫。ヒロインもいろいろ考えてるから、安心して体験してきてよ。
―― へーほー。じゃ、ちょっくら行ってみるわ。
―― おかえりー。
―― ちょっと、何ですのあれ。ヒロインの数がおかしくありませんでしたた? どうしてああなるのでしょう??
―― いやぁ、1回にヒロイン100人用意して、1万回繰り返すほうが楽かな~って。
―― やめてくださいませ。ヒロインにイイヒトが混ざっていて、プロット崩壊しちゃったではありませんの。
―― あれは超・予想外。
―― 可愛くいっても可愛くありませんわよ。
―― って、言葉言葉。オンナノコな台詞もかわいいったらかわいいけどさ。違和感半端ないよ。
―― うざってぇな、オイ。女用意したのはテメェのくせして。
―― 実はさ~、途中セーブするの忘れちゃって、最初からニューゲーム 状態なんだけど……
―― めんどくせぇな。オレがいたんだぞ、ちょっとデータ引っ張ってくるから待ってろ。
―― どこからやり直す?
―― あった、これだな。どこって…あーそーだなぁ。レンフィアと会っちまったからいけなかったんじゃね? 主人公と会う前に実家に帰しておけば?
―― ふむ。そしたら、主人公のおせっかいがなくなって、レンフィアは予定道理死んじゃうと。
―― もしくは、さっきの世界の続きで、別の病気に罹らせるとかか? 失敗したと思ったら即廃棄とか、短気すぎるぜ。
―― ああ、なるほど。って、やっぱりさっきの世界では無理だよ。レオンとあんなに仲良くなちゃってどうするの…レオン落ち込まないじゃん。
―― 知るか。で、次やんのか?
―― やるよ。この最高傑作を全力で認めさせるまでは、あきらめない。
―― あきらめろ。