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8、密会はもう少し目立たない所で……

「燃える黒い水……ですか?」


「はい、こちらの世界ではガソリンと呼ばれる燃料源であり、我々の持つ車両を動かすには必要不可欠な物です」


「シャリョーとは、あの鉄馬車のことでございますね」


「はい」


テーブルを挟んで、イサラギ王国のイアナ女王をはじめとする王国陣。不知火と土岐野の自衛隊陣が相対する。現在、自衛隊の今後の取り扱いと保証される条件を話し合っている。


「そういえばお祖父様の残された文献に、北のティーズ王国近隣に、黒い色の水が噴き出す毒沼があると書かれてました……えっ?」


「「それは本当ですか!?」」


不知火と土岐野がテーブルに身を乗り出してイアナに詰め寄る。突然詰め寄られたイアナはオドオドとする。


「えっ、えぇ、確かに書いてありましたけど……」


「では、さっそくそのティーズ王国っていう国の王に連絡して、毒沼を調査したいと頼んでもらえますか?」


土岐野がイアナにそう告げるが、イアナ本人は浮かない顔をした。


「申し訳ありません。ティーズ王国は現在、ガルガンド大陸諸国機構を抜け、魔王の元についてしまいました」


「…………」


絶句、唯一の希望であったガソリンたる燃料の生産地である国家が、よりによって魔王の配下についてしまったのだ。


「イアナ陛下」


「なんでしょうか」


「私達自衛隊に、ティーズ王国攻撃の許可をお願いしたい」


「それは誠ですか?」


イアナは信じられないという顔をする。しかし、不知火の顔は幾度なく真剣な表情だった。


「その国は裏切り国家、今更攻撃したところで何の悔やみもないでしょう。ガソリンがなければ、我々の存在価値そのものが危ぶまれます。身勝手な事を言って申し訳ありませんが、我々と協力して、その地域の占領を提案したい」


「…………私一人の判断では決めることができません。代表者達と会談し、判断を仰ぐとします。結論は明日でよろしいですか?」


「はい、是非ともお願いします」


「では、今日の会談はここまでにしましょう。お食事は大広間にてご用意してますので、部下の皆様方も一緒にどうぞ」


不知火はイアナのおもてなしを快く承諾し、警備の数名を残して、晩餐を楽しんだ。その後、不知火は自衛隊に興味を持ったイアナの頼みで、彼女の自室に来ていた。


「すみません、こんな格好で」


「いいんですよ、ゆっくりして行って下さいね」


イアナと不知火はカフェテリアでよくある丸テーブルに座る。


「ハーブティーはいかがでしょうか?」


「頂きましょう」


戸棚から出して来たハーブティーの元をカップに入れ、魔力の力で沸かしたお湯を注ぐ。その一連の動作には狂いがなく、彼女がしっかりしていると物語っていた。


「この度は、我が国の村カハールを救って頂き、誠に感謝しています」


「いえいえ、当然の事をしたまでですよ。それに、私個人が助けたのではなく、勇者達や村人の協力もあったからですよ」


「そうですか、ですが、あなた方の援護がなければ被害はもっと増えていました」


イアナは少しハーブティーを啜る。


「シラヌイさん、あなた方はどこから来たのですか?」


「異世界……ようするに別の世界から来たと言えば良いでしょうか。そして我々は、その世界にある日本という国の軍事組織です」


「軍隊だったんですね、どおりで統率がとれていると思いました」


「いやはや、我々は軍隊ではありませんよ?軍隊もどきと言うやつですか……攻撃ができず、防御に専念するという特殊な軍隊です」


「では、あなた方のような軍人が、なぜこの世界に来たんですか?」


不知火はハーブティーを飲み干すと、口元を緩ませた。


「さぁ、どうしてでしょうかね。我々も気づいた時には「あれ?なんで草の上?」って感じでした。おまけに、呼ばれて来た仲間は他人ばかりでした」


「シラヌイさん、あなた方は向こうの世界に帰りたくないんですか?」


イアナの問いに、シラヌイは少し考え込むとため息をつく。


「確かに我々一同、前にいた世界に帰りたいと願っています。向こうには、妻や子を残した部下も多くいます。しかし、本音を言わせてもらえば、あんな大国の傀儡国家なんかに帰るなんて御免だと言うのが本音ですね」


「そうですか……私達は、シラヌイさん達ジエイタイのみなさんが、元の世界に戻れる方法を探します。いらぬご迷惑だと思いますが……」


「いや、こちらとしては嬉しい次第ですよ……っと、もうこんな時間ですね、私はそろそろ部下の元へと帰ることにします」


「分かりました、おやすみなさいシラヌイさん」


「お茶、ご馳走になりました。いい夢を見て下さいね?」


不知火は立ち上がり一礼し、扉へと向かう。去り際に扉を守る衛兵に、前世界の敬礼をし

、王宮内を歩く。


「さてと……これからどうするか」


そんな他愛のない事を考えていると、見たこともない場所へとでてしまう。辺りは薄暗く、通路横にある蝋燭ろうそくの光のみが頼りだった。


「どこだここは……?」


しばらく歩いていると、奥の部屋から声が聞こえてきた。不知火は恐る恐る部屋のドアを少し開け、中の話を盗み聞いた。


「Xデイは明日の夕方だ。ジエイタイの連中は会議の結果を上手く進めて、北の黒魔術師が仕掛けたゾンビの掃討に行ってここを留守にする。その間に王宮の要所を抑え、陛下を王座から引き摺り下ろす」


「そうなれば、我々も魔王軍の一員となりますな」


「それも幹部という絶好の地位でな」


それは、クーデターを決行するという話だった。

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