99.
須田は次に三山の店に電話をいれてからからタクシーを拾った。三山はちょっと前に店に戻って来ているとのことだった。
タクシーから見る街は、どうということはなかった。田舎にも都会になれない、中途半端なところだった。何の価値もないような、どこにでもあるような街。
だが、須田にとっては、今この街でこの件を扱えるというのが重要なことだった。一応ホームと言えて、色々な協力も得られる。以前に比べれば、格段に状況は明るかった。
そうしてとりとめのない考え事をしているうちに、タクシーは目的の場所に到着していた。店内に入ると、それなりに繁盛しているようで、店内はにぎやかだった。須田はバーテンダーに軽く手を上げてから、事務所に続くドアを開けた。
三山は机に向かいながら眠そうにしていた。須田が入ってきたのを見ると、多少目が覚めたような顔をした。
「お前か。何か進展はあったのか?」
「進展があるのはこれからだ。今はその準備だな」
「なるほどな。先に言っとくが、吉田は自宅に帰したぜ。今更逃げようって気力もないだろうからな」
「そうか。それなら安心だな」
「ああ、そうだ。一応人も付けといたからな、狙われてたとしても何とかなるだろ」
三山はそう言って、机の上に脚を投げ出した。須田は黙って山中の絵のコピーを差し出した。
「完成したのか」
三山はそう言って絵を受け取る、しばらくの間、絵をじっと見た。
「こりゃいい絵だ。これで解決しないんなら驚きだな」
「吉田にも見せといてくれ。背中を押すのには役に立つはずだ」
「このおっさんが吉田が書いてた大平って奴か」
「そうだ」
「そしてこのおっさんは鍵を握る人物、というわけだ。この絵の倉庫の場所もわかってる、このおっさんも誰だかわかってる。なかなかいい兆候じゃないか、ええ?」
「つめを誤らなければな」
「まあそうだな、だからこそお前がこうして駆けずりまわってるわけだ。ヘマはするなよ、葬儀屋と坊さんを喜ばしてやる必要はないからな」
「肝に銘じておくさ」




