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64.

 三山は吉田のものと思われる机に乗ってくつろいでいた。

「さて、どうするんだ? 何か名案があるんだろ」

「いや、別にない」須田はカーテンの隙間から外を見ながら答えた。「出たとこ勝負だな。何も確信が持てない以上、じっくり圧力をかけるしかない」

「そういうのはやめろよ、心臓に悪い」

「冗談を言ってる暇はないな」

 須田の一言に、三山は嫌々ながらも真顔になって、机の上から降りた。

「わかったよ。まあここまできたら、俺にも関係がないわけじゃないからな、真面目にやってやるよ。で、俺の役はなんだ?」

「まあ怖いおじさんてところだ。ここぞというところで出てきてもらう。お前が居ると吉田が何もしゃべらないかもしれないからな」

「なるほどね、それはそうだ。それじゃ、あのハゲが来るまで隠れることにするか」三山はドアノブに手をかけると、振り向いた。「ヘマすんなよ」

 三山はそれだけ言って、部屋から出て行った。残された須田は、とにかく書類を漁ることにした。用心深い人間であれば、不特定多数が出入りする事務所のような場所に、人目に触れてはまずいものを置いておくことはないはずだが、普通の書類に紛れさせている、という可能性も排除はできなかった。

 それに、吉田に関して何も知らないといえる須田にしてみれば、やっておくべきことだった。そして、それはどうやらいい結果につながった。

 5年前のファイルに、須田がかつて関わった事件、前田武志の兄弟が殺された事件に関する資料が納められていた。知らない人間が見ればただの資料だが、須田にはそれこそが、吉田が今回の件に深く関わって動いている証拠だった。

 一部の人間、つまり当時の依頼人と須田、そして前田と当時のドラッグの売人。それ以外にあの件の真相に近いことを知っている、知ろうとする理由がある人間は居そうになかった。前田がすでに自分のところに来ていて、それ以外には三山にしか接触していないと思われる以上、吉田が情報を仕入れたのは、消去法でドラッグのルートしか考えられなかった。

 飛躍した発想ではあったが、須田は今回の件のイメージをかなり作り上げることができた。

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