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38.

 前田は電話の指示通りに、ラタンという喫茶店に来ていた。時計は7時30分を指していた。外は熱帯夜だったが、店内は冷房がよく効いていて寒いくらいだった。客はまばらで、前田はアイスティーに口をつけながら、客の様子を観察していた。特に怪しい様子はなかった。

 時計の針が50分を指した頃に、筋肉質の男が静かに店に入ってきた。筋肉男は店内を見回して前田を見つけると、ゆっくりと近づいて、前田の向かい側の椅子に腰掛けた。

「よお、元気にしてたかい」

「メッセンジャーなら早く用件を言ってもらいたいな」

「そうつれなくするなよ。この間は雇い主が悪くてな、俺も感じ悪かったろうけどよ、今回の雇い主は紳士だし払いもいいから俺もそれなりの対応をするぜ」

 前田は胡散臭そうな顔で黙ってうなずいてから口を開いた。

「それは安心だ。それで、話の内容は」

 筋肉男は手で前田を制するような仕種をした。

「まずその前にこっちから聞いておくことがある。あんたが雇った探偵なんだがな、まだ依頼はキャンセルしてないのか?」

「ああ、そういえばまだキャンセルはしてない」

「そうかい、あのヒモはもう死んだんだぜ。あんたがこれ以上金をぶちこんでもしょうがないと思うけどな」

「まだ報告書をもらってないんでね」

「好奇心は危ないぜ」

 筋肉男はにやりと笑った。前田は表情を変えずにアイスティーを一口飲んだ。

「前金は払ってるから、そのぶんを働かせてやりたいと思ってるだけだ」

「ああ、それはそうだ。今のはほんの冗談だからな、気にすんなよ」

 2人の会話は白々しいものだった。しかし、その底にはかなりの緊張があった。

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