37.
須田はできるだけ急いで動き回っていた。この街に居ない間に事態が動いて、それに取り残されるようなことがないようにしておくためだった。
「ああ、お前か。一つ頼みがあるんだけどな」
「最近頼みが多くない? うちは慈善事業じゃないんだから、頼みばっか持ち込まれても困るんだけど」
「現物支給か労働で返すから心配するなよ。それはそうとな、ちょっと明日の午後まで手を放せない用件が入ったんだ」
「その間の穴埋めが頼みごとね」
「それほど大したことじゃないさ。入院してる女性の様子を見といて欲しいってだけだ」
「愛人でしょうかね。いや、何も言わなくていいから、事情なんて別に知りたくないし」
「それでいいさ、頼む。彼女には連絡済だから、お前が行ってくれ」
「はいはい。おみやげを楽しみにしてますよ」
木村は他に何か言われる前に、さっさと電話を切った。須田は続けて三山に電話をかけた。
「なんだ、例の件なら特に目新しいことはないぞ」
「いや、1日ほど遠出するんでな、その連絡だ」
「ああわかった。それじゃ、何かあったら連絡する。それとな、今回の件の決着がついたら全部話してもらうぞ」
「いつになるかはわからないけどな」
「遠出とやらはそれをわかるようにするためだろ。まあ、楽しみにしておこう」
「ご期待に添えるように努力するよ」
須田は電話を切って、必要なものを詰め込んだカバンを手に取った。三山には努力すると言ったが、どう努力したものかわからないのも事実だった。しかし、5年間の件と今回の件につながりがあるなら、大きな動きが期待できるかもしれないという淡い期待は抱いていた。




