34.
「5年前の事件ねえ」喫茶店で須田の話を聞いた石村は、多少あきれたような顔をしてコーヒーを飲んだ。
「本当に関わりがあるのか? 偶然が重なってそう見えるだけってことはないのか?」
「それを調べたいんだ」
「お前だけで調べられないのか」
「やろうとしたんだけどな、当時の依頼人と連絡がとれなかったんだ」
「それで、俺から警察に連絡をとれと、そういうことか」
「まあ、それだけでもないんだがな」須田はちょっと身を乗り出すようにした。「仮に依頼人と連絡がとれたとしても、そっちはあてにならないはずだ」
「それは、どういうことだ」
「これは完全なチョンボでな。まあ、後からわかったことなんだが、この依頼人というのが、ただの窓口だったんだ。結局、元は最後までわからなかった」
「勘弁してくれよ、まったく」石村はうんざりした顔をしながら、PDAを取り出した。「それで、当時の担当は誰だかわかるか?」
「確か山崎っていったな。まあ、未解決の麻薬絡みの話だから、忘れられてるっていうこともないだろ」
「それはまあ、関連があると言ったら、あちらさんも喜ぶかもな」
「うまくいってくれれば、それなりのお手柄だ」石村はPDAを閉じてコーヒーを飲み干した。「今の問題のほうは、どうするんだ」
「なんとかなるだろ」
須田の答えに、石村はかすかな微笑を浮かべて立ち上がった。
「結果を楽しみにしとくよ。それと、ここの勘定もよろしくな」
石村は須田の返事を聞かずに、店を出て行った。




