22.
三島が話したのは奥という男だった。病院の待合室で落ち合った石村によると、以前から目をつけている黒幕のような男だということだった。
「でもな、こいつがただのチンピラじゃないのは周知の事実だ。薬やらなんやらを扱ってるのは間違いなさそうなんだが、賢いやつでな、つまらない罪状でちょっとばかりぶちこんだことはあるんだが、本筋のガードは固いから決定打にはならない」
「で、今回の件は使えそうか?」
「そうだな、その三島って女は、薬のほうで昔から関わってるようだから、ひょっとしたら使えるかもな。雑魚なら消そうとはしないだろう」石村は溜息をついた。「しかし、このチンピラ野郎が突然出てきたのは驚きだな。いつも影に隠れてコソコソしてるのに」
「確かに。今まで影も形もなかった。ただ、俺はそいつのことは全然知らないから、はっきりしたことは言えないな」
「なるほど。野郎が我が警察に居候したときの写真が必要だな。ちょっと待ってろ」
石村は電話とタバコのために、病院の外に出て行った。5分ほどしてからわずかに顔をしかめて戻ってきた。
「すぐに渡したいところなんだが、急用ができた。今晩署に来れるか?」
「多分大丈夫だ。それから彼女のことなんだが」須田は三島の病室がある上階に目をやった。「警官をつけてやれるか?」
「いや、すぐには無理だ。このあたりを重点的にパトロールさせるくらいはできるだろうが」
「それで十分だろう、家族もついてるし。病院には俺から言っておこう」
「お前、病院にもコネがあるのか」
「まあ、婦長と知り合いだ」
石村は微笑を浮かべた。
「それなら安心だ。それじゃ、こっちの件は任せたぞ」
須田は深くうなずいた。




