14.
バーでのむさい会合から開放されたはずの須田は、なぜかちょっと気取ったレストランにいた。須田の向側では木村がサラダを突ついていた。
「それで、お友達との懇親会はどうだったの?」
「なかなかの収穫だった。例のヒモ野郎の件でわかったことがけっこうあってな、どうも奴は新しい弁護士を探してるらしいんだ」
「そもそも、前の弁護士がいたかどうかが怪しいもんね。まあ、おおかた弁護士が必要になりそうな事態に巻き込まれて慌ててるんでしょ」
「近所の弁護士に聞けば、似たような話がいくつも聞けるかもな」
「まさか、それも頼むとかおっしゃる?」
「それはこっちでやる。他に頼みたいことがあるからな」
木村はあからさまな溜息をついた。ウエイター手招きして、空のワイングラスを渡した。ウエイターはすぐに新しいワインを注いで持ってきた。
「それで、今度はなに」
「三島理恵っていう女がいるんだが、なんでもいいからこの女に関する情報が欲しい」
「それは今回の件に関係あるわけ」
「大いにあるだろうな」
「そういうことなら、もっと早く言ってもらいたいもんね」
「三山にもそう言われた、お前を頼るべきだってな。まあ、ちょっとしたことがあったもんでね、今回の件の核心かもしれないんだよ」
「はいはい、わかりましたよ名探偵様」木村はワインをグッと飲み干した。「何か他にご要望はございまんせか、ご主人様?」
「とりあえずは無いな。女の詳しい情報は後で送る」
「そう、それじゃここはよろしくね」
木村は勢いよく立ち上がって、サッサと出て行ってしまった。
「うまくいってないみたいですね」
顔なじみのウエイターが心配そうな顔で須田に声をかけた。須田は軽く笑った。
「これでも昔に比べたら随分うまくいってるんだよ」




