明かされた事実
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俺は項垂れたまま事の顛末を火群に教えた。きっと顔を上げた時には唖然とした表情が待っている。そんな当たり前の想像をしていたのだが、その表情を作ったのは俺の方だった。
あまり感情らしき感情を表に出さない火群の表情は、必死に笑うことを我慢し、震えを抑えていた。
「ぐ、何がおかしい?」
「く、くく、だってねぇ、ぷぷ」
「ええい、笑うなら笑え!」
我慢される方が屈辱だ、潔く恥を搔かせろ。
「いや、もう平気だよ」
ところがいざそうなると、これだ。
「しかし、本当に昔のままなんだね。君の親父さんが学園に通わせようとした理由がわかったよ」
「俺もさっき知ったよ。てっきりほとんどが俺と同じで、【限界解除】できるようになるためにここに来てるもんだと思った……思ってた」
「まぁ、そういう学校もあるけど、ここは屈指の名門校の一つだからね。それを知らないのも無理はないけど、しかし、そんな状態でよく入学できたものだよ」
俺は苦笑いをするしかない。まだ説明していなかった部分で、実はもう一つというより、一つの問題を限りなく大きくして作ってしまっていた。それを含めて協力というよりは助けてほしさに火群がいる敷地まで来ていたのだ。
「あー、あのな。実は――」
「おや、どうやらお客さんが来たようだね」
一番重要な説明をしようとしたタイミングで邪魔が入った。火群の言葉通り誰かが来た方へ視線を向けると、俺は咄嗟に上げた顔をもう一度伏せる。どういうわけか、【最高】がこちらに向かって歩いてきているのだ。
ただ冷静に考えて、俺に用事があるとは到底思えない。さして、関わり合いはもちろん因縁らしき事柄も【三最】の中では一番なかった。だとしたら、用があるのは火群の方? それはそれで結びつきがなさ過ぎて、堂々巡りの結果やっぱり俺になにかあるのかとも思う。
「ん、それで隠れているつもりかい?」
「とっさに伏せちゃったんだよ」
考えに考え、退学の件でなにか伝えるためにこの場に来たのだと思っていたが、よくよく考えればそれを【最高】が担うのはおかしい。
「ん? 逃げずに?」
「え?」
もっともらしい理由を再度考えている途中、火群が可笑しな事を言ってきた。『逃げずに?』とはどういう意味だ。【最高】が俺に何かを話に来たのだとしても俺が逃げる理由にはつながらない。それとも、あの(・・)一言で【三最】たる彼女を怒らせたのか。確かに、あの意味を知ってしまった今となっては、あの事実を知って怒りを覚えるのも理解できる。そのツケを【三最】たる彼女が払いに来たということだろうか。
「まずいぞ火群、彼女は【三最】の一人で【最高】って位置づけされている人なんだ」
暴力に出られたら間違いなく痛い思いをする。だから、そうなる前にこの場から自然にいなくなりたい。
「さっきから、何を言ってるんだい?」
「いや、だから――」
「ここにいたの」
時すでに遅し、伏せていた視線に彼女のすらっとした脚が目前に並んでいた。
「久しぶりだね」
「そうね」
ところが、意外な事に【最高】と火群は知り合いだったようで俺は関係なか――
「数年会ってなかったのに一言で終わりなんて寂しいじゃないか、火蓮」
か ん け い な か っ た ?
「――は、い?」
みるみる内に火群が事態を把握していく。
「ああ、なるほど、気が付いてなかったってことだね」
「私はさっきの騒動で気付いたわよ」
「へぇ、あの火蓮が九煉に気が付かなかったなんてね。だって九煉は火蓮の初コ――」
「うっるさい!」
二人の会話が全然頭に入ってこない。
だって火蓮って……、
「あの火蓮?」




