01
---ロルside
アル 「準備はできた?」
メル 「ロルがまだ。薬を飲んでるから。」
ロル 「飲み終わったよ。お待たせ。」
長男のアル、次男の僕、ロル。そして僕らの妹で長女のメル。
三つ子の僕たちは箒を片手に家の前に並んだ。
アル 「じゃあ、行くよ。」
アルを先頭に二つの箒が空に上がった。
でも、僕の箒だけは一向に動かない。
アル 「ロル。僕らも今日から二年生なんだよ?箒も飛ばせなくちゃ新入生に笑われちゃうよ。」
ロル 「わ、分かってるよ…もう、早く飛んで!飛んでって!」
メル 「ロル、そんなに乱暴に箒を扱ったら…」
急に僕の箒は、怒り出し、乗せていた僕を吹っ飛ばして行ってしまった。
メル 「ロル!」
メルが僕を抱き留めて自分の後ろに乗せ、アルが箒を追い掛けて宥めた。
アル 「落ち着いて。ロルを乗せてあげて。あっ、箒が傷付いちゃってる…これじゃあ、箒を飛ばせないよ。ロル、今日はメルの箒に乗って。荷物は僕が運ぶから。」
アルは、そう言って呪文を唱え、全ての荷物を小さくまとめて、箒に吊るした。
アル 「さぁ、行くよ。」
メル 「ロル、掴まって。」
ロル 「う、うん…」
僕は、渋々メルに抱きついた。
しばらく飛行し、野原に降り立って箒を休ませていると黒い雲がこちらに近づいてきていた。
アル 「っ、雲行きが怪しい。もうじき雨が降る。メル、もう少し急いで飛べる?」
メル 「うん。ロルが平気なら。」
アル 「ロル、行ける?」
ロル 「う、うん…」
アル 「じゃあ、急ごう。」
箒を飛ばすとすぐに雨が降り始め、やがて嵐になった。
アル 「うっ、ここまでの嵐とは…メル、大丈夫?」
ロル 「メル!メル!」
メルは、雨風に当たり体が冷えて体調を崩していることに加え、僕らに比べて体が小さく飛ばされそうになっていた。
アル 「ロル!箒を操縦して!」
箒から振り落とされたメルをアルが何とか抱き留め、僕は必死に箒にしがみついた。
アル 「ロル。もうすぐ学校だよ。僕に付いてきて。」
ロル 「う、うん…!」
しばらく飛行し学校に到着すると、到着の遅れたアルたちを心配してアルとメルの友だちが待っていた。
アル 「ごめん、通して。メルが体調を崩しているんだ。」
アルは、箒から飛び降りてメルを抱き抱え医務室に向かって走った。
アルたちが居なくなると生徒は誰もいなくなった。
校長 「ロル。」
ロル 「校長先生。」
そちらを見ると校長先生が来ていた。
校長 「メルが熱を出したと聞きました。」
ロル 「嵐にぶつかってしまって。体力も相当使っていましたから…」
校長 「そうでしたか。ロルもびしょ濡れですね。」
校長先生は、そう言って一瞬で僕を乾かした。
ロル 「ありがとうございます。」
校長 「ロル。明日から授業が始まります。メルをゆっくり休ませてあげてください。」
ロル 「はい。今日は新入生歓迎会ですよね。」
校長 「三人が揃っていなければ新入生も喜びませんよ。ほとんどの新入生が三人をあこがれの対象にしていますから。」
ロル 「…お世辞は結構です。新入生が待っているのはアルとメルだけでしょう?今だって、校長先生しか僕を待っててくれなかったし…」
校長 「みんな、メルが心配なんですよ。歓迎会は明日です。今夜はロルもゆっくり休んでくださいね。」
ロル 「...はい。」
校長先生が行くとアルが走って戻ってきた。
アル 「ロル、部屋に行ってて。メルが眠っているから。僕は荷物を乾かしてから戻るよ。」
ロル 「ぼ、僕もやるよ。」
アル 「ロルは良いよ。部屋で休んでいて。」
ロル 「あっ…うん…」
学校のあちこちに設置されている鏡を通ると自動的に自分が行きたい場所に着く。
僕が今行きたい場所は…
着いた場所は学校の中庭だった。
まだ雨が降り注ぐ中、僕は中庭に横になって空を見ていた。
ロル 「足を引っ張ってばかり…本当、嫌になっちゃうな…」
そして次の日。
メルの体調も回復し、新入生歓迎会が開かれた。
僕らは、大講堂の席にメルを挟んで一列に座った。
新入生は、アルとメルのところにばかり集まる。
僕は、そっぽを向いて頬を膨らませながら食事をしていた。
アル 「メル?」
隣を見ると、急にメルが倒れ、アルが支えた。
アル 「メル!」
僕が立ち上がって新入生を制し、道を開けるとアルはメルを抱き抱えて医務室に向かった。
ロル 「…」
新入生 「あんたが、出来損ないのロル?」
ロル 「…出来損ない?」
新入生 「兄と妹は学年成績トップなのにあんただけ、まともに箒にすら乗れないんだよね?」
ロル 「そ、それは…」
新入生 「邪魔なんじゃない?アルさんとメルさんにとってさ。」
ロル 「…」
校長 「皆さん、寮に戻りなさい。ロル、一緒に来てください。」
ロル 「...はい…」




