第6話:特待生の針のむしろ
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青空が広がる広大な学園の「第一訓練場」。
初めての「アニマ育成実習」が始まり、生徒たちが各々のアニマを呼び出して訓練に励んでいた。
私も胸ポケットから「白い幼虫」をそっと取り出し、手のひらに乗せた。
周囲の貴族たちは、美しい鳥や見事な狼のアニマを誇らしげに見せびらかしており、案の定、私の元には誰も近づかない。
「……シリウス様は擁護されていらっしゃるけど、やっぱり不気味よね」
「全くですわ。何故あのような不気味な虫を出す平民をシリウス様は庇うのかしら」
遠くから向けられる、冷ややかな視線と非難の声に私はため息を吐いた。
(……放課後まではシリウス様に怯えなくて良いから楽だけど、周りからの視線がちょっと怖いかも……)
高等部のシリウス様がこの場にはいないことに、私は安堵しつつも、完全な孤独と針のむしろのような空気感に身を縮めた。
◇◇◇
実習が中盤に差し掛かった頃、クラリッサの取り巻き令嬢たちが、陰険な笑みを浮かべて私に近づいてきた。
そして彼女たちはなんと、育成実習用として用意された、体長2メートルを超える硬い甲殻を持つ「大型の魔導アーマー」を私の方に向けてきたのだ。
「あら、ごめんなさい? まだ制御が上手く出来なくて、そっちの『ゴミ虫』の方へ走っていってしまいそうだわ!」
わざとらしく叫んだ令嬢。
ハッとした私は慌てて幼虫を回収しようとするが、令嬢の魔術によって足元の砂を爆破されてしまった。
(……きゃあ!? 何これ、爆発したの!?)
その衝撃で、幼虫が私から離れた地面へと投げ出されてしまう。
地面に落ちた幼虫に向かって、令嬢たちの指示を受けた大型魔導アーマーが、重苦しい足音を立てて容赦なく直進していく。
その巨大な足が、幼虫の真上で持ち上がったその時――。
私の脳裏に、昨日の放課後、シリウス様の魔力を嬉しそうに吸っていた幼虫の姿がよぎった。
「ダメ……ッ!!」
私は叫び、自分が踏まれるのも構わずに幼虫を庇おうと地面に飛び込む。
けれど、間に合わない。
私が恐怖と絶望で、ぎゅっと目を瞑って身をすくめたその瞬間、地を震わせるような快活で太い声が響き渡った。
「おいおい、授業中に何やってんだお前ら!」
砂埃を巻き上げながら飛び込んできた、ひとりの人影。
がっしりとした筋肉質の体格に、短くツンツンしたライトブラウンの髪。
その人は担いでいた一本の木剣を大上段から振り下ろし、迫っていた大型魔導アーマーの足を正面から力任せに叩き落とした!
ドゴォン! と凄まじい衝撃音が響き、魔導アーマーは一撃で体勢を崩して後方へと吹き飛んでいく。
「……な、何なのよあなた!?」
一撃で大型アニマを無力化した高等部の男の強さに、クラリッサの取り巻き令嬢たちは顔を青ざめさせた。
「上位クラスの訓練場が使えなくてこっちに回ってきたんだが……まさか、寄ってたかって平民のアニマをいじめてる現場に出くわすとはな」
レオンの背後に、うっすらと巨大な【白熊のアニマのオーラ】が立ち昇り、訓練場全体を力強く頼もしい魔圧が支配する。
クラリッサの取り巻きの令嬢たちは、レオンが纏う憤りの圧力に、恐怖で腰を抜かしてしまった。
レオンはそれを無視して、木剣を再びガシッと肩に担ぎ直す。
そして、地面にへたりこんでいた私を見下ろすと、琥珀色の瞳を悪戯っぽく輝かせながらニカッと笑った。
「大丈夫か、お嬢ちゃん。……俺の名前はレオン・ヴァルハイト。困ったことがあったら、いつでもこの俺を頼りな!」
私は言葉を失いながらも、胸を撫で下ろし、ただレオン先輩を見上げていた。
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「一般人になりたい隠し事令嬢と、暴きたい旦那様 〜チャラ男な最強当主の執着から逃げられない〜」→毎週月曜日の20時10分に投稿
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