13
「一緒に見に行こうか」
しばしの間のあと崢が言う。
「生きてんのか死んでんのか」
ああ、と篤史は思った。
あんたを後悔させてやる。兄にそう宣言したという崢だ、そこにあるものは煮えたぎる復讐心だったか。しかしながら今、崢のもとにあるものはあまりにも静かな目で、対象が生きているのか死んでいるのか不明となっているというのに勝利の笑みなどどこにもないのである。
「やってしまった」
言葉が篤史の口をついて出てきた。絶え間なく寄せては引く波の音にその声は巻かれた。
「やってしまったよ。おまえの、先生を」
篤史の言葉を遮って崢は、
「なんでやった」
そう問う。何の感情も浮かばぬ目をよこして。
知らぬ間に膝の上で拳を握っていた。瞬きをするのすら忘れて崢の目を真っすぐに見上げていた。
「腹が立ったから」
「防衛か。破けてる」
言われて思い出す。服を破かれた。しかしながら防衛の為にやったのではない。
「崢に謝りもしないから。終わったことだって」
確かな事実を伝える。崢の耳にしっかりと届くように、声を張って。しかしながらそれは掠れながら震えて頼りないものとなった。涙混じりだ、眼球は何かに押し上げられてあまりにも痛かった。
「ずっと崢の泣いてるところが浮かんでた」
言ったのちに唇を噛みしめる。そうしないと嗚咽が漏れそうだった。
「本当だ。ずっと崢のことを考えてた」
「そうか」
届いたのか。崢はそう言った。