42.騎士団再来
朝食後に買い物に出たふたりが帰ってきた。
「ナオヤさん聞いて。」
「ちょとミリー。」
ん、珍しくシーラが慌ててる。
「さっきお姉ちゃんカッコイイ男の人に声をかけられてさ。」
「えっ男？」
「やっぱり気になる？ ふふ。」
海賊や騎士団の件で俺達はこの街では結構知られた顔だ。
そして三人の関係も。男がナンパなんて変だ。
「よそ者かな、どんな奴？」
シーラの顔が赤いが気にしないでおこう。
「少し日に焼けてて背が高くてそれから星のネックレスをしてて。」
「その男は私の部下だな。」
「えっ？」
「店の場所を聞かなかったか？」
「そう言えば聞いてた。」
「相変わらずじゃなあいつは、ちなみに恋人が店で働いているぞ。ちょっと店に行ってくる。」
そう言って魔王は出かけていった。
気になるのは魔王は『仲間』ではなく『部下』と言った事だ。
「魔王の部下か。」
「安心した？」
「そうだな。」
◇
魔王が帰ってきたが沈んだ顔だ。
「勇者の作戦が失敗した。」
作戦が失敗！ なんてことだ・・・。
魔王が考えた穏便路線へ続く道が閉ざされた。
これからどうなるんだろう。
「部下をひとり犠牲にしたのに失敗した。」
魔王がいつになく落ち込んでいる。
「それは確かなんですか？」
「勇者が帰国したのにパレードが行われていない。
他の理由が考えられない。」
「すまん、今日はもう寝る。」
そう言って部屋へいった。
勇者帰国のパレードがないなんて確かに変だ。
勇者か、魔王が影武者だと気づく程優秀な奴だったか。
そのせいで大変なことになるとは本人も気づかないだろうが。
◇
翌日の朝
「勇者の件は引き続き調査して確認するが間違いないだろう。」
「これからどうするんです？」
「落ち着け、事態がすぐ動くわけじゃない。
人間側は軍を派遣することになるが一国では無理だ国を無防備にはできないからな。
他国との連合軍となるがまずは協議からだから時間がかかる。
われわれは今進めている作戦をそのまま継続しつつ対応することになる。
まあ安心しろ、いきなり正面から戦争するわけじゃない。」
「前に言ってた『面倒な作戦』を実行するんですか？」
「そうなるな、まったく面倒なことになった。」
「人間社会も面倒な事が多くなるわけか。」
「君らは気にせずいつも通りにすればいい。」
「そうする。」
それからしばらくして家の前に馬車が止まった。
降りてきたのは領主の娘ティラで控えめな感じで歩いてきた。
「王都から騎士団が来てまして話がしたいそうです。
館まで来ていただけませんか？」
申し出を受けて馬車で領主の館へ向かった。
◇
案内されると机を前に座った領主と騎士がひとりいた。
「さて今回は荒事にならんように私も立ち会った上での面会とした。
騎士殿の話を聞こうか。」
「じつは前回の件の後に騎士団から６人程がここへ向かった後行方がわからなくなりまして探しております。」
「先ほども話したがこの街へは来ていない、門番は騎士を見ていないのだ。
もしくは平民のフリをして門を通過したかだ。」
「騎士が平民のフリなどあり得ません。」
「ならここへは来ていない。」
「あなたはこころあたりはありませんか？」
「俺ですか、ありません。」
「そうですか。」
「こちらから聞きたいのだがその６人の騎士は何の目的でここへ向かったのかな？」
「それは・・・。」
「言えない事のようだな。私の領内で不当に騒ぎを起こすなら次は捕縛の対象とする。
他に用件はあるかね？」
「・・・・。」
「なら面会は終了だ。希望するなら滞在を許可するが守備隊の監視をつける。」
面会が終わり馬車で家に送ってもらった。
「無事終わってほっとしました。」
「心配かけてすまないね。」
「いえとんでもない。」
ティラを乗せた馬車は館へ去っていった。
騎士団が何かしてくることはなさそうだ。
読んで頂いてありがとうございます。
よければブックマークの登録と評価をお願いします。
