21.治療
翌日の朝気分転換で散歩に出かけたらフィーリアに会った。以前治療した冒険者だ。
「調子はどうだ。」
「だいぶ良くなりました、散歩できるようになったんです、傷も残ってなくてよかった、ありがとう。」
「元気になってよかったね。でもまだ無理しないで。」
「はい、しばらくは散歩くらいにしておきます。」
元気に手を振って歩いていった。順調に回復しているみたいだ。
手を振った時胸が揺れていた。
「どこ見ているのかな?」
「えっ元気になってよかったなと。」
「どのへんが?」
「変なとこは見てないです。」ふたりとも鋭いです。
◇
午後、家の前に馬車が止まりティラが降りてきた。
「こんにちわ。」
「こんにちわ。」
「あの、弟の意識が戻りました。朝起きて『お腹すいたー』って、
あなたのおかげです、ありがとう。それでこれを。」
箱をさしだした。中には金貨が詰まっている。
「ありがとう。」
馬車は去っていった。領主の件はこれで終わればいいのだが。
シスターも心配しているだろうから説明にいかないとな。
「あら、お茶でも飲んで行けばいいのに。」
「いや、あれでいい冷たいようだがしかたない。
家には魔王がいるんだ、ばれたら大変だ。
それより臨時収入が入ったぞ、明日は旨いものでも食べに行こう。」
「旨いものか楽しみじゃ。」
「高級なのを頼むわよ。」
「たらふく食べていいぞ。」
ダンジョン地下10階へ行った時の魔石もまだ有るが余裕あるから後で考えよう。
◇
翌日は教会へ寄ってシスターに挨拶してからレストランへやってきた。
「さー好きな物頼んで。」
美味しいものを目の前にして皆嬉しそうだが、
ご馳走を前にして魔王は何かを気にしているみたいだった。
レストランを出ると魔王が消えた。
近くに隠れていた男がいた。
男は『鑑定』を使いナオヤを調べていた。
それが男の仕事だったが結果をみて驚いていた。
『なんだこいつは、すごいレベルだ、スキルもすごいこんな奴は初めてだ。
俺に依頼が来るのも納得だ。『転生者』? なんだ初めて見る。
だが、俺は結果を依頼主へ報告するだけだ。次は周りのやつらだな。』
「『鑑定』持ちか、鬱陶しいやつじゃの。」
「誰だ? 子供? だがこいつも『鑑定』を?」
「まあいい、邪魔だ、『石になれ』。」
男は一瞬で石になった。魔王が軽く押すと倒れて砕け散った。
そして皆の元へ戻っていった。
「監視されておったぞ。」
「えっ、監視?」
「心配せずともよい。任せておけ。」
◇
夜、領主の館
「セバス、奴の調査はどうなっておる。」
「調査員を雇って調べさせております。」
「やはりお主らか監視させたのは。」
「誰だ、どうやってここへ入った?」
「理由を聞いておこうか?」
「子供? 奴の仲間か。」
「うるさいぞ、『石になれ』。」
執事が一瞬で石になった。
「面白いじゃろ? 『言霊』というやつだ。」
軽く押すと倒れて砕け散った。
領主は心底驚いていた、目の前にいるのはただの子供ではない。
人間が勝てる相手じゃない。
「まあ理由はどうでもいいか、手を引け、いいな?」
そう言うと去っていった。
領主は虎の尾を踏んでいた事に気が付いた。
手を引こう、それしかない。
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