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わたしの永遠の故郷をさがして第二部 第四十八章 

「いやあ、失敗だったなあ。先生さんよう。」

 マ・オ・ドクが両手を首の後ろに組んでいった。

「嫁取り合戦だったのにな。」

 デラベラリ先生は、まったく表情も変えずに答えた。

「しかたがない。運命だ。」

「運命ねえ。そんなもの、おれは信じないがね。しかし、何もかも消えちまったぜ。訳が分からねえなあ。あの真っ黒野郎もいなくなったぜ。」

「野郎では無いかもしれませんな。」

「は?なんだそれ?」

「つまり、男とは限らないということ。」

「はあ?」

 マ・オ・ドクは体を乗り出して、けげんな表情を、なお一層けげんにした。

「あいつは、生き物ですよ。」

「わからねえな。ますます。」

 デラベラリ先生は、こう説明した。

「さきほど、最接近した時に、バーチャルハンドで、あの物体の体を触ってみたりしました。」

「ふんふん? え?!」

「あれは、明らかに生き物ですな。性別があるのかどうかは、わからないが。」

「全長6000メートル以上あるお魚かい? 宇宙空間で、裸で生きてるなんてなしだぜ。何を食べるんだ? トイレはどうするの? 家はどこ?呼吸は? 体が爆発するだろうが。」

「まあ、まずどこから来たのかですな。我々は太陽系の外はほとんど何も知らないと言ってよいくらいですよ。映画じゃ太陽系外宇宙人が、平気で普段着のまま宇宙を飛んでいる。そんなばかな、と言ってはいるが、ばかなことは火星でも金星でも山とある。見て触った以上は、どうやったらそんなことが可能か考えた方が、いいですな。」

「ああ、それは先生が考えてくれ。仕事のない、暇なときにだが。休憩時間に何やろうがかまわん。まあ、ここでお茶飲んでる暇はない。商売しに帰るからな。」

「どうぞ。」

「どうぞ? いいのか、それで。アマンジャをほっておくのか? 好きなんだろうが。」

「じゃあ、どうやって探すか、教えてくださいよ。」

 感情など見せたことがないデラベラリ先生が、初めて見せた「いらだち」だった。

「いや・・・悪かった。批判したんじゃないんだ。」

「ええ、わかります。気にしていただいたことは、感謝します。もし、許してもらえるなら、惑星を一周したいのですが・・・」

「いいとも。よく探してくれ。二周してもいいぞ。ついでに両極周回もしてやるぞ。」

 「ぶっちぎり号」は、第九惑星の周囲を、ゆっくりと巡回しはじめた。



「くそ。成功したのに、なにを、もたもたしてる。」

 ダレルは、自分を非難していた。

 もちろん、内心で、だけだけれども。

 けれども、リリカ(複写=アンナ)は、それを見抜いていた。

「気に入らんじゃろうが、お気の毒に思います。わいも、孫じゃからな。それも気に入らないか?」

 自室からいつの間にか出て来ていた彼女が、後ろから声をかけた。

「いや。」

 ダレルは、それだけしか答えない。

「帰る必要があります。もう一人のわいが、王宮に入った。わいは火星にはおれぬ。」

「いいさ。それは仕事だ。帰ろう。」

 ダレルは、声を一段階高めて、もう一回、言った。 

「アブラシオさん、帰ろう。地球経由だ。」

『わかりました。なお、自主的に調査しましたが、ヘレナ様、アマンジャさん、ブリューリさん、は発見できません。「ぶっちぎり号」は、第九惑星の周囲をゆっくり確認して回っています。火星情報局の宇宙船は、何もしないままで方向転換しました。金星の軍艦は、一隻は「ぶっちぎり号」を追いかけていますが、もう一隻は「アブラシオ」に張り付いたままです。問題は、本艦に無断乗艦した未来から来た「はこ」ですが。これは、火星に向かって猛スピードで飛んでゆくところが、途中から確認できましたが、内部は見えませんでした。』

「途中からって、何?」

 リリカ(複写=アンナ)が聞いた。

「まったく、不意に、宇宙空間に出現しました。どこかから空間転移してきたのではないか、と思われます。どこからかは、確認不能です。出現したのは、海王星付近。」

「いや、確認可能だよ。多分ね。アブラシオさん。そいつ、捕まえられないかな? それと「エビス号」はどこにいるの?」

 ダレルが尋ねた。

『あの、「はこ」はもう、とうてい捕獲不能です。「エビス号」は、第九惑星の向こう側のどこか、と思われます。しかし、活動を停止しているようです。』

「動いていない?」

『はい。』

「ふうん。そりゃあ、みんな、死ぬ気だろう。アブラシオさん捕獲だ、捕獲。殺しちゃいけない。ほら、ダッシュして、おかしなことする前に捕まえろ! それから、なんとかして「はこ」を確保しろよ!」

『「はこ」は無理ですよ。「エビス号」は捕獲します。緊急行動!』

「ううん。アーニーさん、返事しろよ。じゃないと、もう協力しないぞ! いいとこどりは、気に入らない。」

『あなたにとっても、よい事ですよ。』

「やっと、返事したか。未来から来た「はこ」を捕まえてほしいんだ。」

『拒否』

「なんだって?」

『拒否します。』

「何をするつもりなのか、確認したいんだ。」

『火星に帰ってから、確認してください。それで十分ですよ。じゃあ、また。』

「くそ、何を考えてんだか。」

『「エビス号」確認。捕捉します。行動規制。自爆装置が稼働していましたが、停止させました。自爆十秒前で停止確認。回収に向かいます。』

「やれやれ。」

 ダレルがつぶやく。

「ふうん・・・」

リリカ(複写=アンナ)が意味ありげに言った。

「なんだよ。」

「いいえ、どうぞお続けください。任せますから。」

「当たり前だ。」

「私が、首相です。」

「ここは任したんだろう。」

「はいはい、どうぞ、どうぞ。」

 リリカ(複写=アンナ)は、自室に引き上げて行った。

 しかし、彼女の内心では、こんな声が聞こえていたのだ。

『ふん。ダレル、見直した。さすが我が子ね。』






































 










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