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中間試験前だけの無駄な努力は意味ありません

3Sも学生です。学生なら当然テストがあるのです

「ここって範囲じゃないよね?」

 教科書を見せて問いかける通に、輝石獣用のぬいぐるみを作っていたモゴが言う。

「そうだけど、今更何言ってるの?」

 通は視線を逸らす。

 雅が察した様子で言う。

「通、試験勉強してないんでしょう?」

 冷や汗を垂らす通に静が言う。

「そんな訳ありませんよ、試験は明日からなのですから」

 通の汗が更に増量する。

 モゴがぬいぐるみを作りながら言う。

「まー真面目に授業受けてたら赤点なんて取らないしね」

 余裕たっぷりなモゴの言葉に通が言う。

「ここって赤点とっても進級できるよね?」

 モゴのぬいぐるみを作る手が止まった。

「もしかして自信ないのですか?」

 静の問いに頷く通。

 モゴが通の方を向いて言った。

「冗談、八刃の人間は脳も人と違う作りしてるって言われてるんだよ? 記憶能力とか判断能力とかが常識人の数倍なんだからね」

「そんな事知らないよ」

 通が拗ねる。

「ちょっと調べて見ましょうか?」

 光が突然現れて言った。

「調べるってどうやるのですか?」

 静の問いに光が言う。

「大学の研究所に八刃について詳しい教授が居るから、その人に調べてもらうのよ」



「こちらが、八刃学園一の頭脳と呼ばれる、雪森ユキモリ九菜クナ教授よ」

 光が、大学部にある研究室に3Sの面々を案内して、そこに居た女性、九菜を紹介する。

「始めまして、皆さんの噂は聞いているわ」

 九菜さんはそう言って微笑む。

「この人は、あのDSSの兵器開発に関っていた人で、八刃に関しても深い知識があるのよ」

 光が補足すると驚く一同。

「話は聞いてるわ。ところで何で八刃の人間は頭が良いか原理を知っている?」

 九菜の問いに、通がモゴを見るとモゴはすぐさまそっぽを向く。

 九菜が苦笑をしながら解説を始める。

「八刃の人間は、遺伝子的にも人と異なる所があるのは確かだけど、ベースはあくまで人間なの。それなのに常人では絶対出来ない事をやれるのは、本来は殆ど使われていない脳をかなり効率よく利用する事が出来ているからだと仮定されているの」

 意外な事実に驚く3S+1(雅)。

「八刃の人間が比較的頭良いのも、効率の良い脳の働きのおかげよ」

 それを聞いて通が言う。

「多分あたしは、その才能が無いのよ」

「それは無いわよ。3Sに入る際に検査したでしょ? それで通ちゃんも歩ちゃんも直系の中でも上位に入る数値よ」

 九菜の即答に言葉を無くす通。

「つまりどういう事ですか?」

 静の言葉に、九菜があっさり答える。

「本人が本気で勉強嫌いなだけ」

 窓の外を眺める通を見ながら雅が言う。

「中間試験前日まで試験範囲を知らない人間が勉強好きな訳ないか」

 モゴが白目で通を見ていたとき、一人の女子大生が入ってくる。

「九菜さん、例の件は大丈夫見たいよ」

「本当! だったらあの装備が実現可能ね」

 嬉しそうに言う九菜、その中通が入ってきた女性を見て驚いた顔をする。

「もしかして竜騎機将ナナカレイのパイロットしていた七華ナナカさんですか?」

 その言葉に童顔だが、頼り気がある女子大生、霧流キリンガレ七華頷く。

「もう4年も前の事なのに良く覚えてたわね」

 通が頬をかく。

「妹が大ファンなんです。サインもらえますか?」

 それに対して、光が目を輝かせる。

「通ちゃん、有名人のサインがタダだと思ってる?」

 沈黙してお金の計算を始める通だったが、七華は問答無用で光を地面に沈めてから言う。

「タダでかまわない、同じ八刃の人間じゃない」

 九菜が出した色紙にサインを書いて通に差し出しながらモゴの方を向く七華。

「モゴ、早ければ来週には異界に出稼ぎに行ってるモゴの両親に会いにいくんだけど何か用事ある?」

 モゴは少し考えてから言う。

「パパに借金返すまでは、商売の事は忘れてと言ってください」

 重い一言に、七華は戸惑いながらも頷く。

 その時、一人の鋭い目付きをした男性が入ってきた。

「七華様はいらっしゃいますか?」

 その言葉に七華が手をあげる。

「ここに居るけど、何のよう?」

 その男は、頭を下げて言う。

「私は、零刃ゼロバに所属する、谷歩タニアユミススメです。七華様にはこれの確認をお願いしたく参りました」

 そう言って一枚の写真を取り出して七華に見せる。

 七華はそれを見て表情を強張らせる。

「この世界で撮ったの?」

 薦が頷くと七華が言う。

雲集クモツドイ四門シモンに間違いないよ」

 その一言に九菜の表情が硬くなる。

「あたしにも見せて?」

 九菜はそう言って七華が持っている写真を見て頷く。

「間違いないみたいね。でもどうやって戻ってきたの?」

「偶然戻ってきたなんて奇跡を信じる気にはならない。多分オーフェンが裏で糸を引いていると思って間違いないね」

 七華の言葉に静が言う。

「その雲集さんは、オーフェンなのですか?」

 七華が首を横に振る。

「雲集四門自身は普通の人間。だけど八刃の中ではオーフェンの六頭首と同じ位警戒されているの。なんせ4年前のヘルバハムート事件の主犯だからね。オーフェンの助けがあったとはいえ、時間を戻そうとし、後一歩のところまで行った危険人物だよ」

 薦が頷き言う。

「この写真を撮った時も、確保を行おうとしましたが、オーフェンの邪魔が入りました。間違いなく再びオーフェンと組んでいるのでしょう。我々零刃としては、このまま全権をオーフェンハンターに持っていかれる前に、雲集四門の確保もしくは抹消を……」

「14の子供が居る場所で言う話題じゃないよ!」

 七華の一言で薦は口を閉じると頭を下げてから部屋を出て行く。

 3Sの面々が戸惑う中、雅が言う。

「抹消って殺すって事ですか?」

 言っている雅自身が否定を望みながらの発言だが、七華は答えない。

 しかし、それが明確な答えを表していた。



「八刃って人殺しもするの?」

 九菜の研究所から帰り道、雅が問いかける。

 静や通もモゴを見たが、モゴは答えに困って居た。

「言っておくが、あの大人しそうなヤヤも人を殺した事あるぞ」

 いきなりの良美の声に驚く一同。

「殺さなくても、一生ベッドから出れない奴だったら星の数ほど居るって言っていたな」

 意外な言葉に何も言えない3Sの面々に良美が言う。

「人を殺せるように成れなんていわない。だが覚えておけよ、自分が何の為に戦うか考えておけ」

 言い終わると、良美がさっさと体育の授業を行う為に校庭に向かった。



 その夜、何時もの如く3Sの仕事があった。

「私達は3Sを辞めるべきでしょうか?」

 魔獣を探している中、静が言葉にモゴが言う。

「あちきは無理だよ、借金あるから」

 通も頬をかきながら言う。

「あたしも、お父さんがまだ新しい仕事決まってないし、生活費を入れないとかなり家計苦しいから」

 二人が静を見る。

 三人の中で唯一、お金に困っていない静は無理に3Sとして働く必要は全く無いからだ。

 その時、吠が駆けて来た。

「姉御手伝いまーす!」

 静が困った顔をする中、通がいう。

「吠さん、貴方はどうして戦うの?」

 吠は普通に答える。

「八刃が戦うのは定め、人と違う力も持った責任だよ」

 迷いの無い言葉、モゴがそれに頷く。

「八刃の人間だったら生まれた時から言われてる事だね」

 その時、地面から無数のトカゲが滲み出て来る。

「出た!」

 吠は、そう言って、烈火の短剣を構えて唱える。

『烈火の短剣よ! その力を解き放て!』

 吠は、炎を纏わせた短剣でトカゲを蹴散らしていく。

 モゴ達が戸惑っている時、小較がやって来て言う。

「何やってるの!」

 小較は、向かってくるトカゲに腕を振る。

『フェニックスウイング』

 小較から手から出て炎がトカゲを燃やす。

 強力な小較の力にトカゲ達が警戒して、周囲を囲う。

 そんな中、モゴが言う。

「小較さん、ヤヤさんが人を殺した事あるって本当ですか?」

 それに対して小較が即答する。

「本当、あたしの目の前で人を殺した事もある。でもヤヤお姉ちゃんは、大切な人たちを護る為にやったの。でもヤヤお姉ちゃんは言い訳しない。ヤヤお姉ちゃんが言っていたよ、14位までは戦うために戦っていた。その時は戦うのが楽だったって。でも戦う意味を考えて戦う様になってからそれまでの自分がどれだけ馬鹿だったか知ったって。そんな自分に思いっきり後悔と反省をしているから今の自分が居る。いつも戦う目的を考えて、戦える自分が居るって」

 自分達が知らないヤヤに驚く3Sの面々。

「八刃の戦いは何かを得る為の戦いでは無いよ。大切な者を護る為の戦い。だから自分の命を懸けて、相手を傷つける覚悟を決められる。相手につけた傷と同じ傷を自分の中に刻める人間だけが本当の八刃なんだよ」

『ヘルコンドル!』

 小較の手から放たれたカマイタチはトカゲを蹴散らしていく。

「あちき達は、今まで甘えていたのかも?」

 モゴの言葉に静も通も頷く。

『九尾弓』

 通が九尾弓を構えて言う。

「一気に終わらせよう!」

 通は羽矢筒に指を入れる。

輪銀リンギン色鳥矢孵化・輪銀色鳥矢孵化』

 通は二本の銀の矢羽を持つ矢を抜き出している間に、モゴが昼間作っていた両手に渦を持った竜のぬいぐるみを取り出す。

「静は止めをお願いね!」

 通は、そう言うと輪銀色鳥矢を番、連続して射る。

 それはトカゲ達の両側に飛んでいきトカゲ達の後ろに達した所で通が唱える。

『羽撃』

 輪銀色鳥矢を中心に大きな鏡みたいな物が生まれる。

『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、乱風渦竜ランプウカリュウ

 ぬいぐるみは両手から風の渦を生み出す竜になった。

 凄まじいまでの風の流れは、トカゲの過半数を飲み込むが、取りこぼしが発生する。

 しかし、風の渦の幾つかが、通が作った鏡に跳ね返り、取りこぼしたトカゲすら巻き込む。

 乱風渦竜が生み出した風の渦に全てのトカゲが飲み込まれた時、静が前に出る。

『我が攻撃の意思に答え、炎よ尽きぬ流となれ、流炎翼リュウエンヨク

 静の手から火炎放射器の様に継続されて放射される炎が、乱風渦竜が生み出す風の渦に巻き込まれて一気に増幅されて、渦の中のトカゲ達をあっという間に焼却してしまう。



「戦う理由は解ったか?」

 後始末が終わった後やってきた良美の言葉にモゴ達は首を横に振る。

「そんな直ぐ解るものじゃ無いと思います。あのヤヤさんだって凄く悩んだのが、あちき達に直ぐ解るわけ無いですよ」

 通や静も頷くと良美が三人の頭を叩いて言う。

「そんなもんだよ。ヤヤなんてそんな事も解らないで、無闇矢鱈戦ってたかな」



 それから数日後。

「3Sの仕事をしてたから赤点とっても仕方ないんだよ」

 赤点だらけのテストの束を手に通が断言する。

「でも、モゴは25位で静は8位だよ?」

 そう突っ込む平均点な雅に、通がモゴ達を指さして絶叫する。

「脳みその働きが非常識人間はこの場合、例外だよ」

 モゴが新しいぬいぐるみを作りながら言う。

「あの後細かい資料見たけど、同じ勉強量だったら一番頭良くなるの通みたいだよ」

 言葉を無くす通。

「モゴや静は何時勉強してるの?」

 雅の問いに、二人が答える。

「あちきは授業中ちゃんと聞いてるから」

「家に帰って予習復習をします」

 三人の視線が通に集まる。

 雅が隠し取りした授業中に居眠りする通の写真をひらひらさせる。

「どう考えても自業自得だと思うけどな」

 クラス全員が頷いた。

「テストなんて大嫌いだ!」

 通が架空の太陽に叫ぶのであった。

今回のモゴの収支


 ○収入

  泥蜥蜴デイトカゲ退治      50,000

--------------------------------------------------

合計 = 50,000



 ○支出

乱風渦竜(触媒・ぬいぐるみ製造費)   25,000

--------------------------------------------------

合計 = 25,000



◎利益

収入    50,000

支出 - 25,000

--------------------------------------------------

純利  = 25,000



●借金残高

繰越金額   199,140,100

返済金額   - 25,000

--------------------------------------------------

借金残高   199,115,100



今回の通の収支


 ○収入

  泥蜥蜴デイトカゲ退治      50,000

--------------------------------------------------

合計 = 50,000



 ○支出

輪黄色鳥矢        5,000  * 2

Sボウガンレンタル料    + 20,000

--------------------------------------------------

合計 = 30,000



◎利益

収入    50,000

支出 - 30,000

--------------------------------------------------

純益  =  20,000



●通のサイフ中身

おこずかい残金       30,800

退治バイト利益   + 20,000

赤点とったことでの罰金(親預かり) - 50,000

--------------------------------------------------

サイフ残金            800

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