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1-4

 重い。でもこのままがいい。

 ベルティーナは屋敷の裏庭の芝の上にうつ伏せになったまま、右半身に載った白い重石を受け入れた。

 白くもふもふな大型犬、グレート・ピレニーズのゾフィーは体重が彼女と同じ位ありそうだ。番犬だが、世話係に紹介してもらったお陰か、寄り添って庭で寝転ぶ位に仲良くして貰っている。無造作に半身乗っかられているが。

 いや、監視しているとか、保護対象として面倒見ているとかかもしれない。

 思惑が何であれ、存分にもふもふを堪能させてくれるので言うことはない。


「ベルティーナ。潰れてないか」

 見上げると、青い制服に金色の髪と青い目の人影が上から覗き込んでいる。

「モフモフに潰されるなら本望です」

「そこは俺も賛同するが、仕事で潰れてないかと労ったつもりだった」

 エルンストは犬を挟んで隣に座り、ゾフィーをモフる。コロンと腹天になって更なるモフをねだったので、ベルティーナの上からどいてしまった。名残惜しいが上体を起こして芝に座る。

 並んで座り、間に挟んだゾフィーをモフる手を二人共休めずに話す。

 二人は学生時代、学生寮の番犬をモフりに来るモフ友達だった。あの頃と同じだなぁとベルティーナは懐かしく思い出す。

「んー……エルンストにも手伝って貰ったお陰で、殆どの現象の原因は分かったと思う。でも体調不良の件が分からない」

「お嬢様と庭師とメイドの件か」

「あと、馬と犬が死にかけたっていう件。同じ原因か別か分からないけど」

「わふん」

 ゾフィーが、こっちをもっと撫でれと前足でベルティーナの手を腹に誘導した。肉球で手を叩かれる至福にちょっと脳が溶ろける。


「ゾフィーも助かってよかった」

 エルンストが労りの目でゾフィーの首の辺りを掻いてサービスする。

「メイドの体調不良は半年以上前だけど、ゾフィーは今でもよく体を壊すって。気に掛けてすぐ気付いてあげるようになったから、最近は大事になってないけど」

 ベルティーナも痛ましげにゾフィーを見る。

 ゾフィーは我関せずで腹天で喉を反らしたまま尾をぶんぶん振っている。風圧でベルティーナの髪がふわふわする。


 ふと、ゾフィーの耳がぴくんと動いた。

 一瞬でキリリとした番犬の顔になり、即座に立ち上がると庭の端に向かって走り出した。

 ベルティーナとエルンストは顔を見合わせ、ゾフィーを追う。


 ゾフィーは庭の端に植えられた木々の裏に入り込み、そこで吠えている。

 ベルティーナ達が行ってみると、木々の陰、屋敷の敷地を囲う塀の下の方に穴ができており、そこに向かって吠えたり、土を掘って穴から外へ出ようとしている。

 塀の向こうでガササッという音が遠退いていった。


「あの音の大きさと速さならアナグマか狐だろう。人間じゃなさそうだ」

「侵入者を追い払ったんだね。偉いねゾフィー」

 体が大きくて穴から出られなかったゾフィーは悔しそうだったが、二人にモフモフと労われて少し機嫌を直した。

「こんな穴があったのか。人間の侵入者が入って一連の事件に関わった可能性もあるか。調査が引っくり返るぞ」

「うーん……ゾフィーでも通れない大きさだよ?いや、私よりずっと小柄な人ならいけるか……」

「わふん」

 ゾフィーの鼻先についた土や背中の葉っぱを取ってやる。

「……あ、そうか。分かった」

 ベルティーナは葉っぱを握りしめ呟いた。

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