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シェイプシフター転生記 ~変幻自在のオレがお姫様を助ける話~  作者: 柊遊馬
第三部、アルゲナム解放編

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第四八二話、されどメシがない


 アルゲナムの民は飢えている。

 ゲリラの食料備蓄は、春までもつか微妙なところであり、当然節約したとして、それでも死者が出る可能性は高く、生き残った者たちもおそらくガリガリに痩せ細り、とても戦える状態ではない――そんな未来が予想される。


「食料を調達しなければならない」


 慧太は、そう口にする。アルゲナム・ゲリラの秘密のアジトの近く。獣人のヴルト、そして元騎士のアウロラがそばにいる。


「まあ、そうなるよな」


 アウロラが頭をかいた。

 ゲリラが戦わずして自滅するのが目に見えている以上、手を拱いているわけにもいかない。

 春の大攻勢の前に梃子入れが必要だ。ゲリラを延命させなくてはならない。


 特にアルゲナム人の組織は、アルゲナム解放後の統治を考えれば必要だ。国をまとめるのが、どこぞの傭兵軍や近隣国となったら、たとえ解放者といえど民は不安がるだろう。新たな侵略と誤解されても困る。慧太自身、セラのためにやっているところがあるので、その民から顰蹙(ひんしゅく)を買いたくはない。


「しかし――」


 狼獣人は口を開いた。


「春までまだしばし先。我らだけならばともかく、ゲリラや避難民を食わせる量となると、調達が大変では?」


 自分の取り分は自分で確保すべき、とヴルトは思っている。狼獣人は群れて行動するとはいえ、食い扶持は自分たちで稼ぐ。それが当たり前である。

 だからアルゲナム・ゲリラも自分たちで食料を何とかしろと思うのであるが、彼らとて戦士であり、何とかしようと足掻いてこれというのが現実であった。


「季節が悪いよ」


 アウロラは天を仰いだ。


「長い冬は食料調達には向かない」


 むしろ秋までに備蓄をしておけ、である。それができないなら冬の間に死んでいくだけである。


「で、将軍? ゲリラの連中にはああは言ったけど、リッケンシルトの本隊から食料調達できるのか?」


 冬の備蓄は、リッケンシルト国も余裕があるとは思えない。というかそれでなくても冬を越せない人々が寒さと餓死で死んでいくのが普通であり、どこも余裕などないのである。


「足りないだろうな、やっぱ」


 慧太は正直だった。そもそもセラ姫が、ゲリラだけではなく、他の飢えている民にも食料を何とかしたいと苦慮している。それらまで手を広げれば、足りないのも当然の帰結であった。


「ただ、リッケンシルトを魔人たちから解放するために使った手はある」

「つまり――」

「敵からの略奪ですか」


 敵から物資を奪うのは、古今、戦の常識である。


「今回は、春の大攻勢に向けての工作と偵察がメインだから、本当は派手に略奪はしたくないんだ」


 それで敵の守りが固くなって、春の大攻勢に支障がでても困る。春まで魔人たち――駐屯するレリエンディール第六軍には、備蓄、春の戦いに向けての準備に勤しんでもらいたい。


「ということで、オレたちは連中の倉庫に忍び込んで、物資を盗み出す」


 できれば気づかれないのが理想ではあるが、魔人軍も備蓄した物資、食料で冬を越しているため、倉庫の中の食料が消えれば遅かれ早かれ気づかれる。


「そう上手くいくかね?」

「もちろん、警戒はしているだろう」


 アルゲナム・ゲリラの活動に備えて、第六軍も食料などの物資の警備は増強されているだろう。

 サターナから聞いた第六軍の司令官、マニィ・ルナルなら、面倒なアルゲナム・ゲリラも物資が不足し、特に食料面で難儀していることは推測しているだろう。


「だから、盗まれたと知ってもアルゲナム・ゲリラの仕業ってことで、それ以上の対応はしない……と思いたい」


 せめてウェントゥス傭兵軍が入り込んで工作をしていると思われたくはない。ゲリラが犯人なのと、春に攻めてくる軍勢が犯人なのとでは、第六軍の対応も変わってくるから。

 後者と特定された場合、大攻勢にとって悪いことにしかならないから、どちらがマシかなど、語るまでもないだろう。



   ・  ・  ・



 敵から食料調達をする前に、アルゲナムゲリラに話を通しておく。事と次第によっては、ゲリラがその罪を被ることになるので、黙ってやるのと承知した上での行動であれば、その心証も雲泥の差である。

 ただ話を持って行く前に、慧太はセラに説明した。彼女が知らないところで、話を進めるのも何か違うと思ったからだ。それにセラが好意的に話に乗れば、ゲリラに説明する時も彼女も助け船を出してくれるはずだった。


「民の食料事情だから……。反対する理由はないけれど」


 セラは概ね同意した。改善しなければ悪い状況にしかならないので、行動しなければならないということに反対はない。


「どこから持ち出すか、具体的に決まっているの?」

「いくつか候補はあるが――」


 そこはウェントゥス軍の偵察員が、アルゲナム各地に入り、偵察をしている。潜入部隊は慧太たちだけではないのだ。


「ゲリラ側とも話し合って決めようと思っている。こちらの知らないことも知っているかもしれないし」


 より効率よく、できれば楽をして敵から食料を手に入れたい。あまり派手にやって、第六軍を本気で怒らせたくはない。春の大攻勢までは、彼らにも静かに冬を越してもらいたい。


「じゃあ、メイアに話してみましょう」


 ということでセラと共に慧太は、ゲリラ側と協議する。しかし当のメイアからはこう言われた。


「略奪案は、あまり乗り気でなかったようでしたが、気が変わられたのか? 春の大攻勢とやらまで控えると聞いていましたが」

「こちらが思っている以上にそちらの食料不足が深刻だったものでね」


 実際に計算したら、想定より悪かった。だから本来は控えたかったが、略奪案に打って出るしかないと。


「我々としても、反対はしません。貴殿らが来なければ、元よりそうするしかないと思っていましたから」


 メイアが言い、アルゲナムゲリラの同意を得られた。敵情を確認すると共に標的となる場所を決める。

 まずは、アゴーン砦。この食料備蓄を狙う。

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