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ハイビスカス

 一面の星景色はコクピットからでもよく見えた。命の危機と隣り合わせとは言え、毎日のようにこれを見られるのは贅沢の極みだろう。


 インフラに使われるエネルギーが枯渇した地上で、空気のフィルターにかかってぐっと暗くなった星空を見るよりも、こうしている方が得である気がしている。


 私は重機を操縦して慎重に宇宙空間を航行していた。目当ては、宇宙に漂う新エネルギーだ。スター・コウルとも呼ばれるそれは、星のように光るが、由来は核融合ではない。未知の機序で燃えている。地球にはそれらしい説明をしているが、本当のところは目下調査中だ。それくらい、地球のエネルギー環境は悪いのだ。


 このスター・コウルは二酸化炭素を出さずに燃えるので、地上の火力発電所にくべてタービンを回す。あとは自然の発電機構だが、新設する余力もないので、壊れ続けるそれらを必死で維持している。


 私が乗っているこの重機も、電力の供給元は太陽光発電だ。お古の発電パネルを使っているので、いつ壊れるかもわからない。帰還中に電力が尽きたら最後。星たちの衆人環視で死ぬしかない。


 星に看取られる最期。


 そう思うと悪くない。


 実際にそうなれば、怯えて泣くかもしれない。気が狂うかもしれない。


 けれど、この現実離れした景色の中で終える人生は何かしら意味があると信じて跳ぶしかなかった。


 レーダーに燃料反応があった。私はゆっくりと重機の進路を変える。


「こちらハイビスカス。燃料反応を探知した。確認して回収する。どうぞ」

『こちらインフェルノ。了解した。異変等あれば報告を』


 インフェルノ。地獄であり、激しく燃える日を表す言葉。重機は皆赤いものの名前をつけている。私が乗っているのはハイビスカスだ。


 赤く燃え、終わりを待つ赤色巨星。死と隣り合わせの自分たちへの自虐と、死を忘れないためのメメント・モリ。


 この道中で死ぬかもしれない。


『ハイビスカス、幸運を』


 幸運こそが、星より尊い私たちの味方だ。

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