笑顔の弾丸
目が覚めると点滴がされていた。少し記憶が混乱しているが意識を失ってしまっていたらしい。
「あんま実感わかないけど。勝ったんだよな、俺」
天井を見上げていると記憶が整理されてきた。敵を倒した。それも間違いなくエースだろう敵を。
段々と気持ちが高ぶってきた。そして、俺はベッドから立ち上がると叫んだ。
「よっしゃー!!!!!!!」
その声は部屋の外まで響いていたのだろう。
その後、俺は扉を蹴破るようにして入ってきた白衣の天使とは名ばかりのゴツイおばちゃんにベッドに叩きつけられ、次叫んだら殺すと言われてちびりそうになりながら何度も頷いたのだった。
◆◆◆◆◆
どうやら、俺が目覚めたことはカエデ少尉の方へ報告が入っていたらしい。
彼女が見舞いに訪れた。
「ここでも何かやらかしたようだな。看護兵が鼻息荒く電話してきたぞ」
何かよくわからんが、前の時よりも雰囲気が柔らかく感じる。ケガ人には流石にやさしくしてくれるのだろうか。
「ちょっと気持ちが高ぶっちゃって。でも、ここの看護兵の人達めちゃくちゃ怖いんでもうしません」
俺がそう言うと彼女は微かに笑った。初めて見る笑顔は、いつもの険しい顔と違いとても穏やかで、つい見惚れてしまう。
「確かに、ここの看護兵は恐ろしいで評判だからな。どうしたこっちを凝視して?何か私の顔に付いているのか?」
「初笑顔の可愛さについ見惚れてました」
何も考えずにそう言ってしまった。だが、すぐに失言に気づいたので殴られる前に頭をガードする。
少し経ったが攻撃が来ない、少尉の顔を見ると少し顔が赤らんでいた。
なんだ、この可愛い生き物は。俺の知っている人と全く違うんだが。
「……まあ、お前の功績に免じて今の発言は許してやる。本当によくやった」
「今の顔を見られただけでも頑張ってよかったですよ」
「さすがにこれ以上は怒るぞ?」
「調子に乗ってました、すいません。ところで、戦闘は終わったってことでいいんですかね?」
状況が全くわからないが、これだけのんびりしているところを見ると戦闘は終わっていると思っていいだろう。案の定、彼女は頷くと説明を始めた。
「お前がかなり暴れ回ってくれたおかげであの後すぐに敵は撤退を開始した。特に、最後に戦った部隊が壊滅したことはかなりの衝撃を与えたようでな、士気の下がった敵に追撃戦をすることができたほどだ」
確かに、あれはまさしく精鋭部隊だった。こちらが負けていてもおかしくなかったと今更ながら思う。
「それならよかった」
「ああ、全てお前のおかげだ。恐らく、後日勲章の授与もあるだろう」
「勲章ですか?あんまりガラじゃないですね」
レースやらゲームやらでトロフィーは貰ったことがあるが、勲章みたいなものはまだもらったことが無い。あまり堅苦しい式典等は苦手なのだが。
「そう言うな。貰っておいて損は無いはずだ。他にも伝えたいことはあるが、今は休め。私もそろそろ行く」
確かに体は少しだるい。お言葉に甘えさせてもらうとしよう。
だが、一つ大事なことがある。それだけは今せねばならない。
「少しだけ待ってください」
彼女は少し不思議そうな顔をしている。ふっふっふ。今こそ取っておいた名前呼びの一手を使う時だ。
先ほどの恥ずかしげな顔をもう一度引き出してやろうと俺は内心ニヤニヤしながら口を開いた。
「カエデ少尉、これからもよろしくお願いしますね」
彼女は今言うと思っていなかったのか、意表を突かれたような顔で目を丸くする。
可愛い顔ではあるのだが、なんか思った反応と違う。今俺が求めているのはそんな顔じゃないのに。
俺が悔しく思っていると、彼女は何が嬉しいのか笑顔でこう返してきた。
「ああ。こちらこそよろしくな、ムラクモ」
前のように直接殴られたわけでは無い。だが、カエデ少尉は俺の童貞ハートにそれ以上の大きな衝撃を与えてきた。
どうやら、彼女は飛び道具も使えるらしい。勝ち目がない戦に、俺は諦めて天を仰いだ。
この作品は勢いで書き始めたので最初に殴り書いたプロットがここらへんまでしかないんですよね(笑)
正直に言うと後は、負けられないと言った理由、金獅子の機体イメージ、父親の人物像の設定くらいがあるのみです。
レバガチャ、扱いにくい機体、イレギュラーという台詞、クール系ヒロインのデレ。
とりあえず書きたかったものは書きました。
これで終わるかもしれませんし、続きを書くかもしれません。
ここまで読んでくださった方は本当にありがとうございました。