第七十五話 エロイワナ
色欲のダンジョン…通称エロトラップダンジョンは石壁で出来た通路や部屋で構成されていた。通路を進んでは大きめの部屋があり、魔物との戦闘や特殊な条件が設定されているようで、魔物を殲滅したり、条件を満たすと次に進めるようだ。
「セシリア、ギルドから借りた報告書には何て書いてあるんだ?」
「これまで犠牲になった冒険者の状態や遭遇した部屋の特徴が纏められているわ。それによると最初はスライムとの戦闘ね」
「スライムですか?!」
スライムと聞いてライオ君は酷く反応していた。今やギルドでも人気商品であるスライムゼリー。お尻に仕込んでおけば冒険中に催す事も無いし、魔力回復だってしてくれる。
冒険者に限らず、ダイエット目的や美容目的に購入する女性が多いのだと、カレンさんも嬉しそうに話していた。
その実験体1号であるライオ君は、ケツを押さえながら冷や汗を流していた。
「心配するな、ここのスライムは衣服や装備を溶かしてしまうだけで、体内に侵入するタイプじゃ無いみたいだぞ?」
「ほ、本当ですか?!でも、ここのって事は…」
「ああ、別の部屋にはそう言う事をして来るスライムなんかも居るらしいぞ」
「ひぃ…ッ」
書類をパラパラと捲りざっと目を通したが、成程、これは“厄介”なダンジョンだ。
「と言う訳だ。守りは任せたぞライオ君!」
「え?!俺ですか?」
「勿論よ。タンクでしょ、頑張りなさい!」
「トホホ…」
『魔物の盾』を構えたライオ君を先頭に、僕達は最初の部屋に入って行くのだった。スライムの攻撃を防ぎながら、先陣を切ったのはセシリアだ。『スピードアップ』を駆使し、素早い剣捌きで大剣を振るうとその場に居たスライムは魔石を残し霧散した。
「ふぅ…量は多かったけど、やっぱりスライムね。大した事無かったわね」
「ん、セシリアさんに全部持っていかれた」
「じゃあ、次はスーにお願いしようかな。スーと相性が良さそうだしね」
「ん、任せて。どんな相手だって叩きのめす」
フンスっ!と気合の入るスー。この時の彼女はまだ知らなかった。次の部屋に待ち受けるトラップの怖さを…
ダンジョンにしては比較的明るい通路を歩いていると、時折、魔物と接敵した。強さは程々で、スーの肩慣らしにと、彼女が全て倒しくれた。
「はい、これで大丈夫だよ」
「ん、ありがとう。ライオさんが居れば怪我の心配も無いね」
「そうだけど、あんまり無理しないでよね?」
スーちゃんの手当てが終わり、魔石を拾い集めると次の部屋が見える。
「次は…」
「ん、私の出番!任せて!」
「あ、スー?!まだ説明が…もうあの子ったら…」
「まあ、スーなら何とかなるだろ。ほら僕らも行こう」
ん、魔物の気配がない?フィズさんは私と相性が良いって言って居たから、近接系の魔物でもいると思ったけど…ん?何?
「きゃあッ!?」
一人部屋に突入したスーは何も居ない部屋の中で立ち止まった。警戒していたスーの足元がスッと無くなると、大きな落とし穴に落ちてしまった。
「ん、痛い…ふぇ、落とし穴?!出口があんなに高い。これはちょっと登れそうにない…っん?!」
暗い落とし穴の底から明るい穴の出口を見上げるスー。その足元にそっと忍び寄る影に気が付くと、咄嗟にその場から飛び退いた。
ウニョ~、グチャ~…
「んん!?触手っ!?相性が良いってソッチ?!キャアッ!?」
暗がりから伸びた黒い触手が背後からスーの体を絡め取った。首を絞められ、手足の自由を奪われると、大の字に拘束されてしまう。
「ん、苦しぃ…アグっ!?」
締め付けられた体に鋭い針で刺された痛みが走ると、体の力が入らなくなり首から下が動かないなった。そればかりか、
「ん?!体が動かない…麻痺?くっ…それにどうして…くっ」
動けない手足や自分の触手の代わりに、体内の深い所では子宮や膣がキュンキュンと収縮を繰り返すのが分かる。それだけで快楽を呼び起こし、体中を駆け巡っている。
「ふーーっ…ふーーッ…くうっ…」
普段であれば、体を擦り寄せたり、力を入れたりと、快楽をコントロールする事は可能なのだが、麻痺した体では不可能だ。垂れ流される快楽を歯を食いしばり耐えているが、
「くっ…これだけで疼いちゃう…耐えなきゃ…ん?!」
それまで大人しかった黒い触手が、服の隙間から、ヌルっとした粘液を垂らしながら侵入する。生温かい物が両胸に巻き付き絞り上げる。
触手による激しい責めに、心身ともに疲弊し、頭が真っ白になる。それでも続けられる触手による蹂躙だったが、意識がだんだんとハッキリとしてきた。
絶頂し過ぎた体から排出された体液が、投与された麻痺成分をも吐き出してくれたようだ。さらに、彼女のスキルである『タフ』の性能が発動し、やられた分、自身の身体機能を高める効果が発揮されたのだ。
拳を握り、チカラを込めると、
「ん…よくも…よくも私の体にエッチな事したね!ふんッ!」
ブチブチッ!!と手足を拘束していた触手を引き千切ると、自由になった自前の触手で周囲の触手を切り捌く。
「んんッ…クソ、こんなので気持ち良くなるなんて…許せないッ!うおりゃっ!!」
頭部の触手を編み上げて大きな拳を作り上げると、『硬化』を使用して強化した一撃で落とし穴の壁をドゴンッ!!!と殴りつける。
ピキピキピキッとヒビ割れ、亀裂が大きくなるとブシャーっと黒い液体を噴き出して落とし穴が崩落した。
「ん、不味いかも…」
「スー!」
自分の名前を呼びながらシュッたッと降り立った影は、白い肌をしたエルフだった。駆け寄ったセシリアはスーを掴むと、地面を蹴って穴から飛び出た。
間一髪、崩れ落ちた落とし穴から脱出したスーとセシリアは、
「危なかったわね…大丈夫?」
「ん、助かった。セシリアさんありがとう」
「ええ。全く、1人で先走るからよ?部屋の扉が開かなくて困ったのよ…やっと開いたと思ったら、今度は貴女の気配があの崩れかかった穴の底にあるんだもの…思わず飛び込んじゃったわ」
安心した様子でそう話すセシリアの背後から、フィズ達が駆けつけたのが見える。
「セシリア!スーは無事か?」
「ええ。この通り…」
「ああ、良かった!スー!心配したんだぞ!」
「ん、反省してる」
「でも良く本体を倒せたわね?」
「ん?私はただ壁から出てきた触手を殴っただけ」
「じゃあ今回は落とし穴の中に本体も居たんだな…運が良いのか悪いのか…」
「ん?」
この部屋はスーが落ちた落とし穴を作り出すトラップがあり、仲間が落ちている間に、本体を壊す必要がある。生け贄を捧げて、その仲間がやられる前に本体を潰すのだ。
「え?!じゃあもし本体が落とし穴の外に合ったら…」
「アナタ、あのまま落とし穴から出られなかったわよ。それに1人だったから、多分死ぬまで部屋の扉も開かなかったわ」
「いや。多分1人だったから、中に本体が合ったんだろうな…まぁスーの話を聞く限りだと…」
「ん、あれは最悪のトラップだった」
「だろうね…皆もちゃんと説明を聞いてね?分かった?」
僕の言葉に、反対する意見は無かった。しかし、色欲ダンジョンの脅威はまだ始まったばかりであった。




