第3話夜の散歩 前編
その日の晩、村人皆で俺の歓迎会を開いてくれることになった。場所はこの村のほぼ真ん中にある集会所みたいな場所。料理は三人で作ってくれるという何ともウハウハなシチュエーション、のはずなんだけど……。
「えっと、これは食べれる物なのか?」
「何言っているの。食べれるに決まってるじゃない」
「何か動いているように見えるけど?」
「気のせいだろ気のせい」
(いや、気のせいじゃないだろこれ)
彼女達が作ってきたのは、見たことのない動物の姿煮とか丸焼きとか、そういった類の物ばかり。しかもその中には一つ、見覚えのある物があった。
「あのさルチリア、これって……」
「もしかして分かっちゃった? 折角の食材だから勿体無いと思って、少しだけ剥ぎ取っておいたの。味は保証しないけど、きっとおいしいと思う」
「味くらい保証してくれないかな!」
出された一品の内、一つが何とさっき俺を襲った魔物の一部を焼いた物だった。
(流石に食べづらい……)
魔物との遭遇からそんなに時間がたってないから、あの魔物のこと思い出して食欲がわかない。
「それでは皆さん、カエデ君が仲間に加わったのを記念に、乾杯!」
『かんぱーい』
しかし食べないわけないわけにもいかないので、グッとこらえて皆で乾杯して食事をとる。
「あれ? 意外と美味しいなこれ」
「だから言ったじゃないですかぁ。見た目で判断しないでくださいって〜」
一口を食べてみたところ焼肉みたいな味がして、意外と食べれたことに少し驚く。
「言われた覚えはないけど、確かに見た目で判断したのは駄目だったな」
「でしょでしょ? これ私が作ったんだ」
「馬鹿、それは私が作ったんだよ。ルチリアは料理が下手だから、何も手伝っていないじゃん」
「失礼ね。私だって料理できるもん」
「可愛く言ったって、下手な物は下手なんだよーだ」
「むきー、覚えておきなさいよ。今度作ったらギャフンて言わせてあげるんだから」
四人でワイワイしながら、食事をする。今までそんな経験をした事がほとんどない俺にとって、それはとても新鮮な事で、今その中に自分が居ることに幸せを感じた。
(少しだけこの世界にきてよかったって思えたな)
「カエデ君? どうかした?」
「え? あ、いや。俺今までこんな風に食事を取ったことなかったから、ちょっと嬉しくてさ」
「お? もしかしてカエデはぼっちだったのか? 寂しい男だな」
「うるせえ」
(まあ、確かにぼっちに近かったのは事実だけどさ)
それを堂々と言われると、何か腹が立つ。
「でも〜、カエデ君はぁ、もう一人ではありませんよぉ。今日から私達のぉ仲間ですから〜」
「そうね。カエデ君は今日からこの村の一員であり、私達の仲間よ」
「そうだな。そうなんだよな」
こんな所にいきなり送られて来た時はどうなるかと思ったけど、今日一日過ごして、そんな不安も消えていた。俺がずっと探していた居場所が今ここにある。仲間と呼んでもらえた事が、俺はすごく嬉しかった。
「そう言えばまだ、この村の名前を聞いてなかったな。折角だから教えてくれよ」
歓迎会が更に続く中で、今日一日村の名前を聞いてなかった事を思いだsう。けど、
「えっとね。今はこの村に正式な名前はないの。ほら、カエデ君が来るまで三人だったから、村として登録されてないの」
少し寂しそうに答えるルチリア。
名前がない村。確かにこの少人数の村は、認められないのも無理がない。
(昔は人がいたらしいから、本当は村のなまえがあったんだろうな。なら折角だし)
「なあ折角だし名前つけるか」
「え?」
「そうだな、ポカミル村とか」
「何だその名前、格好悪い」
「でもいいんじゃないかな〜。私可愛いと思〜う」
「で、でも勝手に名前なんかつけていいのかな」
「勝手もなにも、ここは俺達の村なんだろ? だったらいいんじゃないかな。名前があっても」
「う、うん……」
恥ずかしそうにルチリアは頷く。
「よし、じゃあ決定な。今日からこの村はポカミル村だ!」
こうして村の名前も決定し、無事歓迎会も終わったのだった。
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その日の夜遅く。
(寝れないな……)
未知の場所にきて、魔物とかに遭遇して色々緊張していたからか、なかなか眠れずにいた。
「眠れない?」
少しでも眠くなればと外で夜空を眺めていると、ルチリアから声を掛けられる。
「色々あって疲れているはずなんだけど、なかなか眠れなくてさ」
「今日一日で色々あったものね」
「そういうルチリアは?」
「私? 私は今からお出かけ」
「こんな時間に?」
「うん、よかったらカエデ君も一緒に行く?」
「俺も?」
「夜の島散策は昼間と違って楽しいよ」
「そこまで言うなら」
今こうしていても眠れる気がしないので、俺はルチリアの夜の散歩についていくことにした。
「じゃあ私に掴まって!」
のだが、
「え? おい、まさか」
「夜の空中散歩へご案内」
「うわぁぁぁ!」
お昼にも見たような光景がそこに広がることになり。
「今度は絶対に離すなよ!」
「勿論今度は私に……あ、手が滑っちゃった」
「いい加減にしてくれ!」
夜空に俺の絶叫が響き渡ることになったのだった・




