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第64話その剣は誰のために

「モカ様!」


 カグヤさん達と無事合流する為に山の中を進む途中、俺達が遭遇したのは炎か何かで焼かれたのか、所々が火傷した状態で倒れているモカさんだった。思わぬ人物の発見に俺とポチは驚く。


「どうしてモカさんがこんな目に」


 俺は彼女の唇付近に顔を寄せる。彼女の口からは空気の出入りは感じられた。ただそれは弱々しくて、今にも消えてしまいそうだった。


「ポチ、急いでモカさんを連れてポカルミに戻って治療をしてくれ。俺はカグヤさん達を探す」


「……分かった。気をつけろよカエデ」


「ポチもな」


 モカさんを抱えてポチはその場を去る。俺は雫達の捜索を再開をしようとしたが、そこである事に気がつく。


(剣と剣がぶつかる音……近くで誰かが戦っているのか?)


 俺はそこから周囲を見渡す。すると少し先に、戦いを繰り広げている雫とカルマの姿が。


「雫!」


 俺は急いで援護に向かおうとするが、そこで異変を感じ取った。


 雫がおかしい。


 戦況は圧倒的に雫が有利な状況だった。いくら一ヶ月鍛錬したからといっても、彼女は女性であり、戦いだって慣れていない。それなのにどうして……。


「くっ、まさかこれ程の力を持っているとは」


「私の友達を馬鹿にする奴は、絶対に許さない!」


 雫から発せられている声は、普段の彼女が出すとは思えないほど怒りに満ちていて、それでいて理性を失ってしまっているような、そんな感じがした。


「雫、やめろ!」


 その様子を流石に見かねた俺は、彼女とカルマの間に入って、戦いを止める。


「かえ……で?」


「貴様、いつから」


 雫の剣を辛うじて受け止めた形になり、カルマを助けたみたいになってしまったのが、どうしても気にくわないが、今はそんな事を言っている場合じゃない。


「どいて楓。そいつがモカさんを」


「だからって我を忘れてどうするんだ!」


「別に私は冷静……だ……よ……」


 俺が止めに入った事により、我を取り戻したのか雫は力が抜けたかのように俺の方に倒れこんでくる。どうやら意識を失ってしまったらしい。


「あの力、この女はどれだけの力を持っているんだ」


「雫は普通の女の子だ。その鎖を外したのは紛れもなくお前だぞカルマ」


「俺はただ事実を言ったまでだ」


「お前が何を言ったか知らない。だが」


 俺はは雫を一度寝かし、カルマに槍を突き立てる。


「俺の大切な人を傷つけるのだけは許さない」


「やるのか?」


「本当はお前にはカグヤさんの事を含めて聞き出したいことがある。けど、今日は引いてくれないか」


 雫やモカさんの事がある以上、今日はこれ以上俺には戦う力は残っていなかった。大人しく彼がそれを聞いてくれるかは分からないが、今はそう頼む事しかできない。


「ふん、目標の達成はしたし、今日のところは引いてやろう。ただし」


 俺の言葉に対してそう答えたカルマは、近くに落ちていた何かを拾いあげ、それを見せつけた。


「こいつは貰っていく」


「それは……」


 カルマが拾ったのは、モカが普段から身につけていたペンダントだった。ただそれを持っていく事の意味を俺は分からずに、ただ見ている事しかできない。


「こいつが何なのかは本人に聞いてみるんだな。まあ目を覚ますかも分からないが」


 そう言い残すとカルマは地面を蹴って跳躍し、どこかへと消えていった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「次はカグヤさん達を探さないと……」


 少しだけその場で休んだ後、俺は雫を背負いながらか歩き出す。ほぼ丸一日動いていた身体で、彼女を背負って歩くのはすごく疲れるが、今は弱音も言っていられない。


「あれ……楓、どうして……」


「目を覚ましたか」


 歩いている途中で雫が目を覚ます。けど弱っているのか、背中から降りようとはしなかった。


「カルマは? モカさんは?」


「カルマはさっきどこかに去って行ったよ。モカさんはポチがポカルミ村で治療しているよ」


「そっか……」


 しばらく無言になる俺と雫。辺りを見回してカグヤさん達を探すが、その姿は見当たらない。


「もしかしてカグヤさんを探している? それなら、ミルフィーナさんがポカルミ村まで避難させてくれていると思うから、大丈夫だと思う」


「あ、そうなのか?」


「でもカグヤさんも重傷だったから、時間はかかっているかも」


「カグヤさんも?」


 どうやら俺の読みは悪い方に当たってしまったらしい。偽物を用意していた以上、本物には何かしらの事が起きてしまっているかもしれないと思っていた。


「じゃあこのまま真っ直ぐにポカルミに帰ってもいいんだな」


「うん。でもわたし、少しだけ楓と二人で話がしたい」


「何だよ改まって」


「ねえ楓、私カルマと戦っていた時どうなっていた?」


 俺は雫の言葉にどう答えるべきか悩む。そのまま伝えるべきか、濁すべきなのか。あの時の雫は、俺がよく知る彼女ではなかった。

 それだけは紛れもない事実だった。


「私カルマにモカさんの事を馬鹿にされた時、我を忘れてしまっていたの。友達を馬鹿にされて、それが許せなくてそれで……それで……」


 雫の声が涙声となると共に、俺の背中が湿っているのを感じる。


「どうしよう楓、私……こんなの初めてだよ」


「雫……」


「私すごく怖い。私が私じゃないような気がして、ものすごく怖いよぉ」

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