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第63話その身体は友の為に

「モカさん、私はどうすれば」


「私が正面突破で道を開きます。そこをカグヤさん達を守りながら走り抜けてください」


「モカさんは?!」


「必ず後で合流します!」


 敵の数はカルマも含めて百余。一度に相手をするのには部が悪いかもしれないけど、ここまで様々な局面を切り抜けてきただけの力はある。


(それにカエデ君がきっと後から来てくれるはず)


 だからせめてそれまでは、ここを戦い抜いてみせたい。


「行きますよ、皆さん!」


 私は皆に声をかけ、先陣を切る。動きの早さなら誰にも負けない上、敵が気付く前に倒す事だってできる。それで私が取り逃がした敵は、シズクちゃんに倒してもらえば……。


「甘い!」


 だがその私のトップスピードを阻む者がいた。カルマだ。何十もの気配の中に紛れ込んだ一つの殺気に気づかなかった私は、彼の攻撃をなんとか流したものの、体を勢いよく近くの木に叩きつけられてしまう。


「あぐっ」


「モカさん!」


 私は叩きつけられた衝撃で意識を失いかけそうになりながらも、何とか立ち上がる。しかし私の動きが止まってしまった事によって、突破作戦は失敗に終わってしまう。


「いつまでも逃げ切れると思わない事だなモカ様」


「貴方に名前なんかで呼ばれたく……ないです!」


「ふん」


 私はカルマと改めて対峙する。彼とはこの島に来る前から何度も戦ってきた。その度に何度も言葉を交わして、少しでも和解をしようと試みた。


 けどそれは叶わない。


 同じ種族なのにどうしても分かり合えない。


「カルマ、どうして貴方はそこまでして私を狙うんですか」


「何度も言っただろう。これは恨みなんだと」


「恨みだなんてそんな」


「平和に生きてきたお前には分からないだろうな! 俺が……俺達が受けてきた傷を!」


 怒りに任せて私に短剣で斬りかかってくるカルマ。痛みからか反応が少し遅れたしまった私は、それを避ける事ができず……。


「私の友達に手出しはさせない!」


 一撃を覚悟した私とカルマの間に入るように、剣が一閃入り、彼の持っていた短剣が飛ばされる。


「なっ、お前はろくに戦うことができなかったはずなのに」


「あの時も少しは戦えたけど、今は違う!」


 私を間一髪の所で助けてくれたのはシズクちゃんだった。


「シズクちゃん、カグヤさん達は?」


「安全な場所に避難させておきました」


「でも追っ手が」


「それは私が倒しましたから」


 そう笑顔で言うシズクちゃん。確かに敵の気配はかなり消えている。けどここまでそんなに時間が経っていないのに、一瞬の内にどうやって……。


「モカさんは一旦下がってください。私がこの場はなんとかしますので」


 私を庇うように前に立つシズクちゃん。彼女はいつの間にこんなに強い子に育ったのだろうか。一ヶ月前とは比べものにならない。


 ーーそれなら私だって同じだ。


「心配してくてありがとうございます、シズクちゃん。でも、シズクちゃん一人にするわけにはいかないので、私も戦います」


 私は改めて構える。今の自分の拳にどれ程の力が入るかは分からないけど、せめて彼女と一緒に戦えるくらいの力はまだ残っているはずだ。


「何を強気になっているかは知らないが、二人で俺に勝てると思っているのか」


「貴方とはどこかで決着つけるつもりでした。今の私にはシズクちゃんが居ますから、絶対に負けません」


「モカさん……」


「その考えが甘いとどうして分からない。なんでも上手くいくと思ったら大違いなんだよ!」


「シズクちゃん!」


「え?」


 それは本当に一瞬の出来事だった。

 私の目の前に立っていたシズクちゃんのすぐ下、まるでそこに誰かが立つことを予知していたかのように敷かれていた魔法陣。それが彼女の足元で発動して……。


 爆ぜた。


「よかった、間に合って……」


「モカ……さん?」


 ただしその魔法を受けたのは、シズクちゃんではなく彼女を守った私だった。


「馬鹿な! どうしてわざわざお前自身が受ける必要がある!?」


「親友を傷つけるくらいなら……この身を呈してでも守り……ます」


「モカさん!」


 全身を焼かれた私は、もはや意識を保つことができずそのまま意識を失った。


 恐らくだけど、もう目を覚ますことはない。


 王女の散り際としては見っともないかもしれないけど、彼女を守れたならそれで……。


「モカさぁぁん!」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 鼻には焦げた匂いが残る。


 目の前に倒れているのは私を庇って倒れた友達。意識は……ない。


(で、でも息はしている。今から治療すれば……)


 私はこの場を何とかして逃げ出そうと思った。安全な所に逃げて、治療すればまだ間に合ってくれると信じて。


 けど、


「王女として無様だな」


 彼の一言が私の中の何かを切れさせた。決して切れてはいけないもの。人間だろうが獣人だろうが切れてはいけないもの。それは、


『理性』



「ふざないで。何が無様よ」


「その通りじゃないか。いくら王女でも所詮は獣人。そんな彼女には最もふさわしい散り際じゃないか」


「っ」


 次の瞬間には私の体は我を忘れて動いていた。それよりも大事なことがあるのに、私はそれすらも忘れて、憎き相手にこの剣を振り下ろしていた。

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