第52話救出
「雫、待ってろ。すぐに見つけるからな」
村を出た俺は、急いで雫を探し回る事にした。モカやルチリア達のように木の上を移動するような真似はできないので、地上を走る形になってしまうが、見つかれば問題ない。
(俺ももっと気にかけるべきだったんだ)
ルチリアの提案のことで頭がいっぱいになってしまっていた俺は、雫の異変に今日まで気づけなかった。まさかモカからその話を聞いているなんて思ってもいなかったとはいえど、最近彼女を気にかけていなかった自分がいる。
(ただでさえ、こんな異世界に来させられたというのに、何をやっているんだよ俺は)
とにかく今は、彼女を早めに見つけて安全を確保するのが優先事項だ。何か起きてしまった後では、取り返しがつかない。
「ん?」
探し回る中で俺は何かに気づく。先ほどからどこかで話し声が聞こえてきているのだが、気のせいだろうか。
(もしかして雫か?)
急いで俺は聞こえた方へ向かう。そこには丁度雫に襲いかかろうとしている、先日出会ったカルマの兵達の姿があった。俺は急いでその間に入り、雫を守る事に成功した。
「ったく、一人で思い詰めるくらいなら相談くらいしろよな」
「馬鹿……。できるならとっくにしてたわよ」
「だったら俺達をもっと頼ってくれ。モカやルチリア達だってお前の事を心配しているんだ」
「ごめん……」
とりあえず雫の無事を確認できたので、一安心しながらも目の前の敵から目を離さない。その敵の背後にはカルマと対峙しているカグヤさんの姿があった。
「もしかしてカグヤさんが最初助けてくれたのか?」
「うん。私だけを逃してくれようとしたの」
「何でこんなところにいたんだ?」
「分からない」
向こうは俺が来た事に気づきはしたものの、一瞬視線を送っただけで声をかけなかった。つまり、雫の事は俺に任せたということだろうか。
「まさかまた会う事になるなんてな。雫動けるか?」
「うん。私は大丈夫」
「じゃあここを何としても乗り切るぞ」
「うん」
俺は改めて武器を構えて、雫に後ろを警戒してもらいながらカルマの兵へと突撃する。ここは一気に突破するのが安全策だろう。
「行くぞ!」
だがまさにカルマの兵と激突するその瞬間、それは起きた。
「な、何だ」
突然大きな地響きが耳に聞こえたと思ったその次の瞬間、突然地面が揺れ始めた。
「これは地震?」
咄嗟に体を低くして、揺れに備える。だがカルマの兵はそれには動じず、俺に襲いかかってきた。
「くっ」
「楓!」
俺は何とかその攻撃を受け流すものの、地震で立ち上がれない状態なのは変わりない。
「カエテ!」
だがそのピンチの状態で助けに来てくれたのはルチリアだった。どうやら俺達を見つけてくれたらしい。ルチリアは兵を倒すと、俺達の元へやってきた。
「って、ルチリアも平気なのか? この揺れ」
「揺れ? 私は何も感じてないけど」
「え?」
雫も同じように揺れを感じているのに、何でルチリア達は平気なんだ? よく考えたらカグヤさん達も何事もなく戦っているし、一体どうなっているんだ。
だがしばらくすると謎の揺れは自然と収まり、俺と雫は普通に歩けるようになった。
「気のせいではないよな今の」
「うん。間違いなく揺れていたんだけど」
「うーん、とりあえずそれは置いておいて私達は一回村に戻ろう」
「でもカグヤさんは?」
「心配ないよ。あれでも私達とは比べ物にならないくらい強いから」
「それなら……まあいいけど」
色々気になる事はあるが、とりあえず雫の安全の確保のためにも一度俺達は村へ戻る事にしたのであった。
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ポカルミ村へ戻ると、既に知らせが届いていたのか皆が揃っていた。
「シズク!」
かなり心配していたのか、モカが雫を見つけるなり抱きつく。
「良かったです。無事で。どれだけ心配したか」
「ごめんなさい、モカ。私……一人で勝手な事して」
「そんな事はどうでもいいんです。私が……シズクの事に気付けなかったから……」
涙を流しながらモカは語る。どうやら二人には、俺の知らない間に小さな友情が芽生えていたようだ。そうでなければ、ここまで誰かを心配するような事はできない。
「どうやら無事で済んだみたいだな、カエデ」
「ああ。カルマの兵とまた戦う事になったけど、ルチリアのおかげで何とかなったよ」
「でもお前が駆けつけなきゃ守ることすら出来なかったんだから、間に合って良かったな」
「そうだな」
とりあえず雫も無事にポカルミへ帰って来れたし、まだまだ謎な事はあるけど一件落着って事でいいかな。
(カグヤさん、無事かな)
少し心配だけど、ルチリアが大丈夫って言っていたし余計な心配なのかもしれない。
(まあ、あとは……)
「あれ、カエデさぁん、何で服が破けていますけど大丈夫ですかぁ?」
ほっと一息していると、ミルフィーナが俺の服を見てそんな事を言う。
「あ、これはさっきちょっと敵と戦った時に破けたんだよ」
さっきのカルマとの戦闘で、服のお腹の部分が破れてしまっていた。これじゃあヘソが丸出しだ。
「私が直しますよぉ。こう見えて得意ですからぁ」
「じゃあ頼もうかな」
俺は服を脱ぎ、ミルフィーナに渡そうと歩く。だがその途中で、それを見ていたルチリアがある事にも気づいてしまった。
「待ってカエデ、あなたその腹の……」
だがルチリアの言葉を全て聞く前に、俺の意識はブラックアウトした。どうやらいくら我慢しても、身体は正直だったらしい。
「きゃぁぁ」
「か、楓?」
実は俺達だけが感じた揺れの間に、カルマの兵に襲われた際その刃が僅かながら俺の腹部を貫いていた。深くはなかったので、周りに気付かれないようにここまで痛みを我慢していたが、どうやらそれはもう限界だったみたいだ。
(まあ、雫を助けれたしいいか……)
俺は一安心しながら意識を失っていった。




