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第39話かつての友との約束は思い出となりて

 ルチリアに席を外すと一言残した後、俺はポチに連れられてある場所へと向かっていた。


「珍しいな、お前と二人きりなんて」


「カエデがいつもルチリアとばかりいるからだよ。私だって少しくらいはカエデと……」


「ん? 何か言ったか?」


「い、言ってない。それより、ほら着いたよ」


 ポチが足を止めたのは、森が開けた場所。辺りは花畑になっていて、空には丁度満月があって花畑を照らしている。それは凄い幻想的な光景で、ポチが言っていた通りこの時間に来て正解の場所だった。


「森だらけの島だと思っていたけど、泉といいこういう穴場スポットってあるんだな」


「ここは私のお気に入りなんだ。昔から親友と一緒に来ていたんだけど、今はそれもなくて。こうしてくるのも久しぶりなんだ」


「親友って、ルチリアとかか?」


「違う。私の親友は二人だけだと思ってたのか?」


「正直そう思ってた。村人三人だったわけだし」


「言っただろ? ポカルミ村は元々違う名前だったし、私達以外の獣人も住んでたって」


「最初にそんな話も聞いたな」


「だから友達くらいいたんだよ。私だけじゃない、ルチリアにも、ミルフィーナにも」


「そうか。何か悪いな」


「別にいいよ。気にしてないから」


 ポチはそうは言いながらも、どこか寂しそうな顔をしていた。思い出せば、時々ポチやミルフィーナが村にいない事があった。それはもしかしたら、かつての友の為に何かを村ではないどこかでしていたのかもしれない。


(親友か)


 俺にもそう呼べる友もいた。雫もそうだけど、俺にはもう一人……。


「まだ浮かない顔してるのかカエデ。少しでも元気になってもらおうと思って連れてきたのに」


「あ、悪い。ちょっと俺にも思い出す事があってな」


「カエデにもいたのか? 私達のような親友が」


「まあな。でも、その話は今するもんじゃないし、この景色を楽しませてもらうよ」


「お、おう」


 さっきから考え事してばかりだったから、月を見て少しは気を楽にしようと思った。

 モカの事、ルチリアの事、そして自分の事。考えさせられる事が最近増えすぎていて、こうしてゆっくり何もしない時間を過ごすのは何だか久しぶりな気がした。


「なあカエデ、折角二人きりだし少し聞きたい事があるんだ」


「聞きたい事?」


「カエデはルチリアをどう思っているんだ?」


「どう思っているって?」


「カエデはそういう感情がルチリアに対してあるのかなって思って」


 ポチが何を聞いているのは分かった。そういう感情というのは、恐らくそっち系の事なんだと思う。でも、そんなことを聞かれたところで、俺はどう答えればいいのやら。


「そういう感情があるかって言われても、それはどうとも答えられないかな」


「ほぼ毎日一緒にいるのに? もしかして男子のほうが好きだとか」


「そうじゃないからな!」


 何でそんな単純な考えに至るのだろうか。


「気にならないと言ったら嘘だけど、それが果たしてそれに繋がるとは言えないし」


「同じ獣人でもあるのに?」


「いや、そういう訳でも……って、今なんて言った?」


「カエデもルチリアと……私達と同じく獣人だろ?」


「どうしてその話を……いや、俺はそうじゃなくてだな」


「隠さなくたって分かっているから。私も、ミルフィーナも」


 ポチの口から出てきた思わぬ言葉。

 まだ俺は否定をし続けているのに、何で彼女も、いや彼女達までもが俺には獣人の血があるって言い切れるんだよ。


「なあポチ、どうしてお前達まで俺の事を」


「それは私もカエデも本来なら昔からの友人だからな。思い出すのに時間はかかったけど」


 ■□■□■□

「カエデ君とポチ、どこに行ったのかな」


 ポチがカエデ君を連れ出してどこかへ行ってしまってから、かれこれ二時間近くは経つ。二人は未だに帰ってくる様子はなかった。


「もしかして妬いているんですかぁ」


 私がそんな事をボヤいていると、ミルフィーナが変な事を言い出してきた。


「や、妬くだなんて、どうして私が」


「そんなの隠さなくても見え見えですよねぇ、二人共ぉ」


「そうですね。先程からルチリアさんはソワソワしていますから」


「も、モカ様まで」


「へえ、ルチリアが楓に対して……そんな事ってあるんだ」


 私以外の三人がそれぞれニヤニヤしながら各々そんな事を言いだす。


「わ、私はただ、帰りが遅いと何か悪い事が起きそうだから心配で。先日のモカ様との事だって、私し心配していたんですから!」


「それを嫉妬って言うんですよぉ」


「だ、だから違うってば」


 嫉妬とかそんな言葉を使った事もら言われた事もなかった。今まで私の中にそんな感情なんてなかったし、今の私だってカエデ君の事をどう思っているのか分からない。


「でもルチリアちゃん、その気持ちは私大切だと思うんだけどぉ」


「ど、どうして?」


「約束しているんでしょ? いつかは誰を好きになって、恋人を作るって」


「い、いつの話をしているのよ! それにその約束は今は」


「なになに、ルチリアそんな約束を誰かとしたの? もしかして友達とか?」


 すかさず食いついてきたのは意外にもシズクちゃんだった。もしかしてカエデ君がらみの話だから、こんなに聞きたがっているのかな。

 でも私はあまりこの話をしたくなかった。


「約束したの。随分と昔に。何でミルフィーナがそれをわざわざ覚えているのかは分からないけど、嘘ではない。だけどその約束はもう果たせない」


「え? どうして?」


「約束した友達がいた、って言えば分かると思う」


「それって……」


 思い出したくない事を思い出してしまうから。

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