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第38話彼女がそうであるように

 翌日。


「それでルチリア、村の守備を固めるって具体的にどうすればいいんだ?」


「簡単に言えば村の周囲に大きな壁を作って、そこに迎撃用の飛び道具を付けたりするの。そうすれば敵の侵入は防げると思うの」


「確かにそれだけのものがあれば守れるとは思うけど、多分それ無理だと思うぞ」


「どうして?」


 昨晩ルチリアが宣言した通り、村の守備を固める作業に移ることに。俺自身この案には賛成なのだが、問題がいくつもあった。


 一つ目。


「守備を固めるのはいいけど、その壁とか作るスペースはどこにあるんだ?」


「それはこの村の周囲の木を伐採して」


「何日かけるつもりだよ。あとそんな事したらカグヤさんに怒られると思うぞ」


 先程ルチリアが言った案を建てる場所がない事。この島は何度も言う通り、ほぼ森でできている。その為このポカルミ村周囲も伸びに伸びた木で覆われている。その木を一々伐採していたら、作る以前の問題で終わってしまう。


 二つ目。


「それに仮に作るとしても、人数とそれなりの知識を持った人が必要になってくるだろ。俺達だけの技術で何とかなると思うか?」


「そこはカエデ君の力で」


「初めから他人頼りかよ」


 圧倒的に人手が足りない事。現在この村に居るのは俺と雫を含めて七人。しかも俺以外女性だ。いくら力があるといえど、完璧な力仕事はできない。

 それに俺にも言えるが、そう言った建築の知識を持っている奴がこの村にはいない。そんな状況下で、防御壁みたいなものを果たして作れるのだろうか。


「じゃあどうすればいいの? この村の状態のままでモカ様をお守りなんてできないでしょ」


「確かにそうだな。だけど、モカを守る方法はそれだけとは限らないだろ」


「でも他に何が」


「俺に考えがある」


 ■□■□■□

 少ない人数で、尚且つ日付をかけずにこの村の守備を固める方法として考えた案、それは。


「皆を集めて何をするのかと思ったら、またロクでもない事考えるわね楓」


「昨日モカを追ってきた相手と戦って思ったんだよ。たとえ戦えたとしても、数が多ければ太刀打ちできないって」


「でもこれって、古典的すぎると思うな私」


「いいんだよ。落とし穴なんて思いつきやしない考えなんだから」


 それはこの村周囲に落とし穴といった俺たちの世界では子供とかがかかりそうなものを設置する。普通の人からすれば呆れてしまうようなものだが、どうやらルチリア達は落とし穴などの概念が意外にも存在していないらしいので、もしかしたら効き目はあるのかもしれない。


「カエデ君、本当に穴を掘るだけでいいの?」


「それでいいんだよ、あとはカモフラージュさえしてしまえばバレないから」


「私こんなの引っかからないと思うんだけど」


「じゃあ他に案があるのか?」


「それは……」


 ほぼ不可能に近い案よりはいくらかマシだと俺は思った。一つ問題があるとしたら、その仕掛けに敵以外が引っかかってしまわないか、だ。


「カエデ君、、ルチリアちゃん、こんな所で何をしてぇ……きゃあ」


 ほらね。


「案外引っかかるものだろ?」


「私カエデ君を侮っていた」


「いや、二人とも助けてあげなよ」



 と、そんな感じで村の守備を固めよう作戦は地道な作業とは言えど進行していった。ただ穴を掘るだけの作業ではなく、それを隠すための作業、その他のトラップを仕掛ける作業といった事をして、気がつけば夕刻。

 ポチやミルフィーナにも手伝ったおかげもあり、大方は完成。今日の作業はここまでとし、夕食は外で食べる事となった。


「まさかミルフィーナが本当に引っかかるなんて思わなかったよ私。落とし穴って馬鹿にできないね」


「そう言うルチリアさんもこっそり引っかかりそうになってたのを、私は見ましたよ」


「も、モカ様、それ見ていたとしても口にしないでくださいよ。は、恥ずかしいじゃないですか」


「何だルチリア、お前人の事笑えないじゃないか」


「そう言うカエデ君こそ、何度も落ちていたくせに」


「お、俺は違う。試験的に落ちてみただけで」


「落ちたんですね」


 半日近く一緒に作業をしていたからか、モカはすっかり村に溶け込んでいた。話の内容はどうあれ、王女様と一般人という隔たりが多少はあったので、これでお堅い話にはならなさそうだ。


(王女様、か)


 本来ならそういう地位の人って、こうやって小さな村に逃亡してくるような事ってありえない事なんだと思う。そもそも逃亡なんてありえない話なのだから。それを一番分かっているのはモカ自身で、一番辛いのも彼女だろう。


(もし、それが仮にも俺やルチリアにもある話なら……)


 彼女のようにこうしていられるだろうか。


「どうしたんだカエデ、浮かない顔して」


「ポチか……。ちょっとモカの事を考えてて」


「何だよ、王女様に恋でもしたのか? 何だったら私が相談に乗るぞ」


「いや、そういう話じゃなくて」


「そうじゃないなら、何でそんな顔しているんだ?」


「色々考えさせられる事があるんだよ、俺にも」


 俺には多分それはできない。ただてさえ俺は、その事から目を逸らし続けている。そんな俺が彼女のようには……。


「カエデ、ちょっと私に付き合ってくれないか?」


「え? こんな時間から?」


「こんな時間だからこそ、だよ」

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